びわ湖くんは、2019年7月に﹁滋賀県民の歌。﹂のMVを公開し、YouTube活動を開始。
滋賀県への自虐的な歌詞や都会へ包み隠さない憧憬が県民を中心に注目を集め、滋賀県からも﹁公式に非公認﹂とのお墨付きを得て活動している。
同郷であるVTuber・オシャレになりたい!ピーナッツくんとの2マンライブ﹁びわピースタジアムライブ﹂やYouTubeショートで人気を集める﹁安く食べれる理由﹂シリーズなど、捉えどころなく多岐にわたるびわ湖くんの活動。ゆるキャラとしての本分を忘れることなく、﹁ゆるキャラグランプリ﹂にも出場している。
そんな多面的な活動を見せるびわ湖くんだが、中でも﹁カネ︵お金︶﹂への言及が多いことだけは常に一貫している。
その一方で、YouTubeの登録者数が30万人を越え、いよいよ彼の財布事情もうなぎ上りだと思われるが、そんな様子は見せてない──びわ湖くんの﹁カネ﹂への欲求はどこから来るのか。びわ湖くんとって、﹁びわ湖くん﹂の活動とは何なのか。
自身の家庭環境を﹁お金関係はえげつなかった﹂と振り返り、盟友・ピーナッツくんを﹁あの豆はすごい﹂と語るびわ湖くん。
知られざるその正体を、1万字に及んだインタビューで解き明かす。
目次
(一)金儲けに成功する音楽関係者やバンドマンへの妬みが、びわ湖くんを生んだ
(二)多面的で捉えがたい、びわ湖くんの正体
(三)本質的にケチで、リアルである
(四)滋賀県で、ゆるキャラで、音楽活動するキャラクターとして──ピーナッツくんとの関係性
(五)﹁びわ湖くん﹂よりも、びわ湖くんの、譲れないもの
(六)変わらなかった音楽関係者の反応と、変わったバンドメンバー
(七)びわ湖くんの過去──お金に拘り続ける本当の理由
(八)びわ湖くんの野望──常に辞めたいと思っている
金儲けに成功する音楽関係者やバンドマンへの妬みが、びわ湖くんを生んだ
──﹁びわ湖くん﹂としての活動は2019年から始まっていますが、どのような発想や目的からびわ湖くんというキャラクターは誕生したのでしょうか。
びわ湖くんはコミケで撮影にも応じてくれた。画角に収まらない大きさ。
びわ湖くん そうすね……目的でいうと、明確に﹁カネ﹂ですね……いや、ネタや“ちょけ”で言ってるわけちゃうくて。マジで、切実に。お金になるかなと思ってやりはじめたんですよ。
俺は元々バンドマンとして活動していて、実は今も別名義でバンドを続けているんですけど──自分の周りにバンドやアーティスト的な活動ではなく、イベンターのような形で音楽に携わって、お金を稼いでる人がいたんです。
今も仲は良いんですけど、音楽で金儲けしていることに、とにかく腹が立って。あ、俺は基本的に、自分以外に金儲けてる人間を見ると腹が立つんですよね。
﹁俺もバンドじゃなくて、何か音楽に携わる領域で金儲けできないかなあ﹂と考えて、Twitter︵現‥X︶に“バンド活動のあるあるネタ”の4コマ漫画を投稿しはじめたのがきっかけですね。
──びわ湖くんも当初はバンド漫画のキャラクターでしたよね。
びわ湖くん そうです。本当に適当につくって。ラーメン屋さんのアンケート用紙の裏に落書きしたのが、びわ湖くんが誕生したきっかけになってます。
﹁滋賀県ってそういえば琵琶湖のキャラクターおらんよな。勝手につくったろか﹂と友だちとしゃべって、バンドのあるあるネタにびわ湖くんを登場させたのがはじまりです。
— びわ湖くん (@biwako__shiga) December 8, 2017
──4コマのキャラクターとして誕生し、そこからどのような経緯で現在のびわ湖くんとしての活動へと繋がっていくのでしょうか。
びわ湖くん その4コマ漫画で俺が参考にしていたのが﹁ライブキッズあるある﹂っていう人なんです。その方が以前、あるあるネタの缶バッジをイベントで配ったという話を聞きまして。
— ライブキッズあるある (@livekids_aruaru) September 24, 2023
びわ湖くん それがすごい好評だったらしく。アカウントの知名度も上がったということで、俺も配ろう! と思ってびわ湖くんの缶バッジを大量に発注したんですよ。
ただ、ライブキッズあるあるさんは、その人自身がある種のキャラクターになっているからそのまま生身で配ればいいんですけど、自分の場合は生身で配っても﹁誰!?﹂って思われるよなあと悩んでしまって。
そこで着ぐるみ、ゆるキャラ化です。そのまま勢いで深夜につくりはじめたのが、今の姿です。
──行動力がすごいです。﹁お金がほしい﹂というストレートすぎる動機でスタートされたということですが、実際にびわ湖くんとしての活動を開始されて、金銭的にもポジティブに進んでいったのでしょうか?
びわ湖くん いやいや、もうね……全然大赤字でしたよ!
俺も考えが甘いというか、﹁かっこいいミュージックビデオを出したら売れるやろ!﹂みたいな勢いで実際につくってみたら全く駄目で……。動画1本でマイナス40~50万円とか普通に出してしまって……。でもTwitterだけはずっと動かそうって思って、更新してましたね。
多面的で捉えがたい、びわ湖くんの正体
──今現在は、会社員とバンドマンとびわ湖くんの3足のわらじ、という認識なのですがあってますでしょうか?
びわ湖くん 作曲や音楽系の仕事をびわ湖くんとして受けることもあるんですけど、大きいカテゴリーではそういう感じですね。
──かなり多忙な状況ですよね。
びわ湖くん もう本業のサラリーマンはさぼりまくってますね。さぼりまくって時間を捻出して何とかやっています。
──その多忙の中、本当にお金儲けだけがモチベーションなのかという点も気になるところです。会社員を続けてらっしゃることも含めて、生半可な覚悟ではないなと思っています。
びわ湖くん どうなんやろう。今びわ湖くんとは別に活動しているバンドは自分の好きな音楽ジャンルではあるんですけど、好きな曲というより、メンバーやファンの好きな曲をつくるのが目的になってます。
だからびわ湖くんは、完全に一人で、好き勝手できるというモチベーションはたしかにある。表現の一つとしてびわ湖くんをやっている、という側面もあるかもしんないですね。大赤字だけどびわ湖くんのミュージックビデオをつくったのも、そういう感じです。
ミュージックビデオをアップして3年で、それなりにテレビとかにも出させてもらったんです。でも結局、売れたわけでもなく、知名度も上がるわけでもなく、もう全然駄目で。昔仲良かったバンドマンは売れていって……金儲けに成功して……もうめっちゃイライラしちゃって。
──そのフラストレーションがびわ湖くんを生んだと……。当初はたしかに音楽が主軸のキャラクターという印象でしたが、YouTubeショートの成功など、バラエティ方面での評価が高まっているのを感じています。