保育園開園断念のニュースを読み比べてみた
ネットを見ていたら私立保育園が周辺住民の反対を受けて開園を断念した、というニュースが目に入りました。しかも反対の理由が「子供の声がうるさいから」といったものらしく、世知辛いなぁと思ってたらTwitterでこんな意見を目にしました。
この狭くて車が
— ハムスターの銀次(写真集第2弾発売中) (@kawanabesatou) 2016年4月12日
ガンガン通る道に保育園は
危ないでしょっていう反対が
なぜか子供の声が騒音の為
反対ってなってて
非常に納得がいかないわけですが(;´・ω・) pic.twitter.com/y1hQP8JjVm
@kawanabesatou 実際 説明会のときに 子供の声がうるさいって保育園を作る理事の方に言った人がいますが その一人の声を住民の総意とされてるのが不思議なので(;´・ω・)
— ハムスターの銀次(写真集第2弾発売中) (@kawanabesatou) 2016年4月12日
@kumamonorca まぁ、騒音問題にしてた人もいましたが 大多数は立地を問題にしていました(;´・ω・)
— ハムスターの銀次(写真集第2弾発売中) (@kawanabesatou) 2016年4月12日
高齢者が「静かに暮らしたいから」という理由で反対してるイメージを想像していたのですが、単に子供の騒音だけが問題と片付けるのは早合点だったかも……と思いました。
すでにこういったネットニュースも出ていますが、各マスメディアはこの問題について、どこに焦点を当てて報道していたのかが気になったので調べてみました。
読売
朝日
毎日
また上記記事の反響を受けてか12日の夜に新たに記事が出されます。 ここでも見出しと冒頭の段落で子供の騒音が強調されています。 千葉県市川市で4月に開園予定だった私立保育園が﹁子どもの声でうるさくなる﹂などと近隣住民から反対されて建設を断念したことが波紋を広げている。 では安全面について何も触れられてないかというとそうでもなく、 建設予定地は幅約3メートルの道路に面していた。地元には保護者らの車や自転車の往来が激しくなり、危険が増すとの懸念がもともと強く、市の説明不足や対応の悪さを指摘する声も相次ぐ。 と市の対応についてもあわせて報じています。 その後は反対した住民と、消極的賛成と思われる住民と小西課長の3者のコメントが掲載。 また最後に﹁子供の声巡り各地でトラブル﹂と子供の騒音を巡るトラブルを幾つか紹介しています。
日経
共同通信
http://this.kiji.is/92785914023069173
一応その後の共同の記事も見てみると、他に断念や延期に追い込まれるケースを調査していましたが、見出しは「子どもの声うるさい」を持ってきていました。
もうちょっと他にもどういった理由があったかの中身が知りたいところです。
産経
その後の記事では市が折衷案を出したものの、住民から理解を得られなかったという経緯が掲載。 市は事業者とともに住民説明会などで﹁防音壁を設置し、窓を二重にする﹂﹁送り迎えの保護者が車で道路に侵入しないように、別の場所に駐車場を借りる﹂といった対策を示して折り合いを図ったが、﹁聞く耳持たない状況﹂となり、開園中止に至ったと説明している。 しかし﹁聞く耳持たない状況﹂はちょっと穏やかじゃない表現な気がします。
一方で送迎と子供の声の問題、また住民に事前の相談がなかったことから市の対応を指摘する声が拾われています。 住民側からは騒音や交通事故の危険性のほか、﹁そもそも住民に相談なく保育園設置が決まっており、市の対応に不満がある﹂といった声も噴出したという。
また︻保育園開園中止︼のラベルが貼られた2つの記事では、どちらも子供の声は騒音なのか? といった点に絞って記事が書かれています。 ただ反対の声を上げているのは様々な年代の人だと思うのですが、﹁高齢者らが反対﹂という見出しは対立を煽る方向に持って行ってないか気になります。
東京新聞
ついでなのでテレビ局のニュースも見てみます。
日テレ
![f:id:katoyuu:20160413200435j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200435.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200436j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200436.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200437j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200437.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200438j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200438.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200439j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200439.jpg)
テレ朝
![f:id:katoyuu:20160413200429j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200429.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200430j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200430.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200431j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200431.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200432j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200432.jpg)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000072405.html 報道ステーションではより踏み込み、導入で﹁子供たちの声がうるさいというのがその理由の一つのようなんですけども、取材を進めていきますと、どうもそれだけではないようなんです﹂とキャスターがコメント。
![f:id:katoyuu:20160413200433j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200433.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200434j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200434.jpg)
TBS
![f:id:katoyuu:20160413200427j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200427.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200428j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200428.jpg)
千葉の保育園問題、#TBS 夕方のニュースで見たが、テレビの伝え方なのか、8月では「子供の声の騒音」が論点だったのが、9月の住民説明会から道路が狭いことで反対に変化したような話の流れ pic.twitter.com/qVTAnAEHE2
フジ
NHK
![f:id:katoyuu:20160413200425j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200425.jpg)
![f:id:katoyuu:20160413200426j:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/katoyuu/20160413/20160413200426.jpg)
別にいいかもしれませんが最後にネットのニュースサイトも見てみます。 市川市の会見に出席したと思われる弁護士ドットコムは、 反対意見で大きかったのは、﹁保育園が面する道路は抜け道になっているのに、車がすれ違えないくらい狭く危険﹂という安全面についての声だったという。また、事前に社会福祉法人や市側からの説明がなかったことも問題視されたそうだ。 小西課長は﹁市川市はもともと道が狭い。その中では道路が見通しもよく、︵幼稚園も安全性に︶配慮された設計だったので、設置に特に問題があるとは思っていませんでした。言葉が不十分で誤解を招いた部分もあったかもしれません﹂と述べた。 と最も大きい反対意見として道路事情があったことを報じています。また騒音に関しても、 反対意見では﹁子どもの声でうるさくなる﹂という声も大きく、このことが報道されて、物議を醸している。これに対して、小西課長は﹁社会福祉法人は、防音壁を設置する予定でした。住民説明会で二重窓にするなどの提案もしていましたが、聞き入れてもらえませんでした﹂と説明。 と市側の見解︵+担当者の私見︶を合わせて伝えていました。
ハフィントンポストは毎日新聞が報じた内容から全国から抗議が殺到した経緯を掲載。 その後も産経、弁護士ドットコムの記事を引用し、最後に﹁子供の声めぐるトラブル、各地で﹂と過去の事例を幾つか紹介しています。 個人的にはもうちょっと独自取材して欲しいと思ってしまいますが、今回の騒動を地元住民の目線から見た記事があるのは参考になると思います。
http://irorio.jp/nagasawamaki/20160412/314392/ IRORIOもこの問題に触れ、毎日新聞の記事を取り上げつつ、他の地域でも起きる騒音のトラブルをピックアップしています。 またネット上、というかTwitterの子供の声に関する賛否両論をいくつか取り上げ、﹁子供の声は騒音になるか否か﹂という部分を強調して伝えているように見えます。
http://biz-journal.jp/gj/2016/04/_94373108.html 最後はサイゾー系のBusiness Journal。見出しからして煽りまくってます。 反対の理由は﹁子どもの声や泣き声で騒がしくなる﹂﹁保育所前の道が狭い上に車の往来が多く、危険だ﹂という意見が中心。 と一応反対住民の意見が伝えられており、 反対意見の大きな一つである﹁道が狭くて危険﹂という意見にはまずまず納得はできる。保護者や保育園の職員としても、ただでさえ子どもの動向に気を配らねばならない状況下で、道路に注意を払うという状況になるのは確かに危険だ。当該の場所では過去に事故も起きているという。 と道路事情が危険という点は理解を示しています。 ところがその後の段落で、 しかし、﹁子どもの声や泣き声で騒がしくなる﹂という意見ははっきりいって意味不明だ。保育園側は防音壁なども設置すると近隣への配慮を訴えたが、聞き入れられることはなかったのだとか。調べてみると、この地域は一軒家が多く、高齢者の世帯が多いという情報があった。﹁やっぱり老人か﹂と思った人も多いだろう。﹁静かに暮らしたいから子どもの声は邪魔﹂﹁静かに暮らす権利がある﹂などと主張しているという話も。 はっきりいって、これこそが﹁老害﹂。市や地域周辺を自分のものだとでも勘違いしているのだろうか。無意味にビルを建設することで日照権が侵害されるなどとはわけが違う。待機児童という社会問題を少しでも解決するという明確な﹁目的﹂がある。﹁子どもが騒がしい﹂と語った人間の発言はあまりにも想像力に欠け、社会性がない。これが何十年も生きてきた大人の発言だろうか。自分たちにうるさい子ども時代はなかったのか。 と老人叩きを展開。反対しているのは高齢者だけではないですし、こういう読者の感情を操作しようとするのはちょっと不誠実かと思います。
まとめ
市川市保育園の報道を見て市川市住民を叩き、Twitterでの地元住民発言を見て捏造報道だとマスメディアを叩き、保育所側への電話聞き取りの話を見てTwitter発言者を叩き、というサイクルが僅か二日で回ってるのを見て、このサイクルを回した経験から我々が学ぶべきものは何だろうのうと
︻参考記事︼ sanmarie.me