改訂新版 世界大百科事典 「ユベール」の意味・わかりやすい解説
ユベール
René Hubert
生没年:1885-1954
フランスの哲学者,教育学者。エコール・ノルマル・シュペリウール卒業後シャルトルおよびマルセイユの高校で教鞭をとった後,リール大学講師︵1919︶,同教授︵1924︶を歴任し,1937年以来ポアティエ大学学長,さらに46年からはストラスブール大学学長をつとめた。その思想は社会学的視点に立ちながら,同時に理想主義的ヒューマニズムの色彩が濃厚である。主著︽一般教育学概論︾︵1946︶では,教育学を教育技術学に還元することを拒み,自然・社会・人間に関する哲学によって基礎づけられる必要を説く。彼の教育学の基本要素は,その著︽教育史︾︵1949︶と︽精神発達論︾︵1949︶に見られるが,子どもの精神発達については,知的発達のみならず,感情の働きをかなり重視している。なぜなら,感情こそ人間を個性化させ,人間同士の接近を可能にする原動力だからである。そこで,従来の主知主義的教育は排され,美的教育が教育の中心にすえられる。これがヒューマニズムの教育にほかならず,彼はこの方向で教育改革を提案し,フランス新教育に理論的基礎を与えた。
執筆者‥滝沢 武久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報