デジタル大辞泉 「石鹸」の意味・読み・例文・類語 せっ‐けん〔セキ‐〕【石×鹸】 洗剤の一種で、ふつう、ステアリン酸・パルミチン酸など高級脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩。動植物の油脂を苛(かせ)性(い)アルカリで鹸化するか、脂肪酸をアルカリで中和して作る。水溶液は水の表面張力を低下させ、起泡・乳化力をもち洗浄作用を示す。広くは金属石鹸なども含めていい、脂肪酸・樹脂酸・ナフテン酸などの金属塩の総称。洗濯・化粧・薬用・工業用などに使う。シャボン。 [類語]洗剤・シャンプー・シャボン・ソープ サボン(〈フランス〉savon) 「シャボン」に同じ。[補説]「石鹸」とも書く。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「石鹸」の意味・読み・例文・類語 せっ‐けんセキ‥【石鹸】 (一)〘 名詞 〙 高級脂肪酸の金属塩の総称。樹脂酸・ナフテン酸の塩類も含めていう。ナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属塩のアルカリ石鹸とアルカリ金属以外の金属塩の金属石鹸に分類され、狭義では前者を指す。アルカリ石鹸は水溶性で表面活性が著しく、起泡力をもち洗浄力がすぐれる。硬軟により硬石鹸と軟石鹸に、また用途により化粧石鹸・洗濯(せんたく)石鹸・工業用石鹸・薬用石鹸・特殊石鹸などに分類される。ふつう、石鹸と呼ばれるものは、このうちの硬石鹸で、牛脂・羊脂・豚脂・硬化油・ヤシ油・綿実油などを適当に配合した油脂を、水酸化ナトリウム溶液で鹸化(けんか)してつくる。 (一)[初出の実例]﹁石鹸 和名、シャボン、煉ものなり。和産なし﹂(出典‥物類品隲︵1763︶一) (二)﹁もろ肌を脱いで石鹸で磨き上げた皮膚がぴかついて﹂(出典‥吾輩は猫である︵1905‐06︶︿夏目漱石﹀二) (三)[その他の文献]︹本草綱目‐土部・石鹸・集解︺ 石鹸の語誌 (1)織豊時代︵一五七四‐九八︶に南蛮貿易により渡来したが、元来灰汁を麦粉で固めたものを意味した。 (2)江戸時代には、挙例の﹁物類品隲﹂が示すように、スペイン語あるいはポルトガル語由来の﹁シャボン﹂が常用語として使用されていた。 (3)明治初期頃になると、漢語重視の風潮によって﹁石鹸﹂という表記が多用されるようになったが、シャボンと振り仮名が付されるのが普通であった。明治時代後半以降になって、漢字表記に基づく﹁セッケン﹂にとってかわられた。 サボン【石鹸】 〘 名詞 〙 ( [ポルトガル語] sabão ) =シャボン[初出の実例]「石鹸(サボン)巾〈略〉水瓶便器の瑣末まで各房に皆備れり」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石鹸」の意味・わかりやすい解説 石鹸せっけんsoap 化学的には高級脂肪酸のアルカリ金属塩をいう。広義には脂肪酸,樹脂酸,ナフテン酸の金属塩を含める。アルカリ石鹸は界面活性物質で,水の表面張力を低下させて安定な泡をつくり,洗浄剤として利用される。水溶液中では解離して,長鎖アルキル基をもつ脂肪酸陰イオンを生じ,臨界ミセル濃度以上では脂肪酸陰イオンが会合してミセルとなり,コロイド溶液が形成される。溶液は普通は弱アルカリ性であるが,酸性にすると脂肪酸が遊離,沈殿する。また2価,3価の金属イオンを加えると,水に溶けにくい塩,すなわち金属石鹸が沈殿する。後者の現象は硬水中で石鹸が泡立たない原因になる。適当な動植物油脂やその硬化油に水酸化ナトリウムを加えて加熱,鹸化し,生じた石鹸とグリセリンの混合物を塩析すると石鹸素地が溶液から分離する。得られた石鹸素地に色素,香料を加えて練り,成形したものが固形石鹸である。この石鹸素地を水を含んだまま適当な無水塩,たとえば無水炭酸ナトリウムを加えて脱水,固化し,そのまま乾燥,粉末化したものが粉石鹸である。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報