デジタル大辞泉
「郵便法」の意味・読み・例文・類語
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ゆうびん‐ほうイウビンハフ【郵便法】
(一)〘 名詞 〙 郵便事業に関する基本的な事柄を定めた法律。旧法は明治三三年︵一九〇〇︶制定、新法は昭和二二年︵一九四七︶制定。郵便に関する通則、郵便物の種類および料金、料金の納付および還付、郵便物の取り扱い、損害賠償などについて規定する。
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郵便法
ゆうびんほう
内国郵便制度の基本的な事項を規定した法律。昭和22年法律第165号。1947年︵昭和22︶12月12日に公布され、翌1948年1月1日から施行された。その後幾度か改正が行われているが、日本国憲法のもとにおける郵便取扱いの基本法である。
1871年︵明治4︶3月に﹁書状ヲ出ス人ノ心得﹂が出され、これが最初の郵便関係の法令となった。同年4月、郵便制度が開始され、郵便線路が東京から長崎にまで延びた同年12月には、最初の﹁郵便規則﹂が制定された。以後、郵便制度の発展に合わせて、毎年改正・増補されてきた。1873年4月、郵便料金が従来の距離制から全国均一料金制に改められ、同年5月には郵便事業が国の独占事業であることが定められた。これを受けて﹁郵便犯罪罰則﹂も制定された。1882年12月に郵便規則と罰則を統合し、﹁郵便条例﹂が制定された。1892年6月には﹁小包郵便法﹂が公布され、同年10月から小包郵便の取扱いが開始された。1900年︵明治33︶3月には、﹁郵便条例﹂、﹁小包郵便法﹂およびその他の規則を廃止し、各種の制度を整理統合して、法律には基本的事項、省令にその他の利用条件および手続を規定することとして、旧﹁郵便法﹂および﹁郵便規則﹂が制定された。これにより近代郵便制度が法的に体系化されるとともに、制度の整備・充実が図られた。すなわち、特殊取扱制度として価格表記郵便、現金取立郵便が開設されたこと、書留郵便の賠償責任が明記されたこと、私製葉書を認めることなどがそれである。
第二次世界大戦後に制定された郵便法は、第1章総則において﹁この法律は、郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進することを目的とする﹂とし、郵便の国営、事業の独占、利用の公平、検閲の禁止、信書の秘密の確保などについても規定している。続く第2章以下においては、郵便禁制品、郵便物の種類、郵便料金の納付、郵便物の取扱い、郵便物の特殊取扱い、損害賠償、罰則等、郵便業務の基本事項を定めている。郵便法制定の当初は、郵便料金についても法律で定められていたが、1971年︵昭和46︶の改正で、第1種︵一般の手紙︶と第2種︵葉書︶を除く郵便料金は郵政省令︵その後、総務省令︶に委任され、さらに1981年度には、第1種、第2種の料金も省令に委任された。2003年︵平成15︶4月1日、総務省郵政事業庁の郵政事業を引き継ぎ、日本郵政公社が発足した。これに伴い、郵便法も次のように改正された。第2条に定められていた﹁郵便の国営﹂は﹁郵便の実施﹂に改められ、条文も﹁郵便は、国の行う事業であって、総務大臣が、これを管理する﹂が、﹁郵便の業務は、この法律の定めるところにより、日本郵政公社︵以下﹁公社﹂という︶が行う﹂となった。郵便料金については、第3章雑則において、﹁公社は、郵便に関する料金のうち次に掲げるものを定め、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする﹂とある。次に掲げるものとは、通常郵便物の料金、通常郵便物の特殊取扱い︵書留、速達など︶の料金、国際郵便に関する料金、である。そして、そのほかの郵便の料金は、総務大臣に届け出なければならない、とされた。つまり、郵便料金は、﹁総務大臣の認可を受ける﹂か、または﹁総務大臣への届出﹂で改定することが可能となったのである。なお、公社発足と同時に﹁民間事業者による信書の送達に関する法律﹂︵平成14年法律第99号︶が施行された。あらたに﹁信書便制度﹂が創設されたことに伴い、郵便法も改正され、また上記の﹁民間事業者による信書の送達に関する法律﹂の総則において﹁信書﹂の定義規定が設けられた。2005年10月に成立した郵政民営化法︵平成17年法律第97号︶により、日本郵政公社は民営・分社化されることになり、2007年10月1日の民営化実施に伴い解散した。
郵政事業は、日本郵政グループ︵日本郵政株式会社および四つの子会社の郵便局株式会社、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険︶に移管され、これに伴い郵便法も次のように改正された。第2条の郵便の実施については﹁日本郵政公社﹂から﹁郵便事業株式会社﹂に改められた。郵便に関する料金は第67条第1項で﹁あらかじめ、総務大臣に届け出なければならない﹂とされ、第1種・第2種郵便物の料金が認可制から事前届出制へ変更された。ゆうパック︵一般小包︶、EXPACK(エクスパック)500︵定型小包、2014年3月で取扱い終了︶、ポスパケット︵簡易小包、2016年10月で取扱い終了︶、ゆうメール︵冊子小包︶などの小包は、郵便法の適用除外となり、郵便物ではなくなった︵小包は貨物自動車運送事業法等の規制の対象となり、料金は事前届出制から事後届出制へ変更︶。また、書留、引受時刻証明、配達証明、内容証明、特別送達の提供については義務づけられているが、速達、代金引換、年賀特別郵便の提供は郵便事業株式会社の任意となった︵第44条第1項︶。内容証明、特別送達の取扱いについては、信頼性を維持するという観点から、郵便認証司︵新設された国家資格。内容証明および特別送達の取扱いに係る認証を行う者であり、認証事務に関し必要な知識および能力を有する者のうちから、郵便事業株式会社の推薦に基づいて総務大臣が任命︶が行うことになった︵第48条第2項、第49条第2項、第59条︶。
さらに、2007年10月の郵政民営化実施から約4年半が経過した2012年4月、郵政民営化法等の一部を改正する等の法律が成立し、同年5月に公布された。同法の施行により、2012年10月から郵便事業株式会社と郵便局株式会社が統合され日本郵便株式会社となり、日本郵政グループは4社体制へと再編された。また、ユニバーサルサービスの範囲が拡充され、それまでの郵便のサービスのみならず、貯金および保険の基本的なサービスを郵便局で一体的に利用できる仕組みが確保されるようになった。
近年、個人やビジネスにおけるデジタル化の急速な進展により、手紙や葉書等の物数が総じて減少する一方で、小包等の荷物の取扱い個数が急増しており、郵便サービスの将来にわたる安定的な提供の維持や急増する荷物の配達ニーズへの対応等を図るために、通常郵便物の配達頻度や送達日数に係る見直し︵郵便業務管理規程の認可基準の緩和︶等を行う必要が顕在化してきた。こうした状況を受けて、﹁郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律﹂︵令和2年法律第70号︶が2020年︵令和2︶に成立、公布され、翌2021年5月に施行された。おもな改正内容は、郵便法について、(1)配達地により異なる額の料金を定めることができる郵便物の範囲が拡大されるほか、通常郵便物︵手紙、葉書等︶について、(2)週6日以上の配達が週5日以上の配達に緩和されるとともに、(3)原則3日以内の送達が原則4日以内の送達に緩和されることとなり、日本郵便株式会社と一般信書便事業者との間の対等な競争条件を確保するため、﹁民間事業者による信書の送達に関する法律﹂も上記(1)から(3)までと同内容の改正が行われた。
また、同法の施行に伴い、郵便法施行規則︵平成15年総務省令第5号︶の改正も行われた。その概要は、郵便業務管理規程の認可基準を定める条項において、(1)1日1回以上郵便物の配達を行う日を、﹁月曜から土曜までの6日間﹂から﹁月曜から金曜までの5日間﹂とすること、(2)郵便物の送達日数に、配達を行わないこととなる土曜日を算入しないこととすること、(3)地理的条件等により例外的に送達日数が4日を超えることが許容される場合の上限送達日数を改正すること︵1日1回以上郵便物の送達に利用できる交通手段がない離島‥14日→15日、それ以外の離島‥5日→6日︶である。上記の郵便法および郵便法施行規則の改正を受け、実際に郵便サービスの見直し︵土曜日配達の休止、送達日数の繰り下げ等︶が行われるのは、2021年10月以降の予定である。
﹇石井晴夫 2021年6月21日﹈
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郵便法 (ゆうびんほう)
︿郵便の役務をなるべく安い料金で,あまねく,公平に提供することによって,公共の福祉を増進することを目的とする﹀︵1条︶法律︵1947公布︶。郵政大臣の管理する国営の独占事業である郵便事業について,郵便の性質,郵便物の種類と料金,郵便料金の納付および還付,郵便物の取扱い,損害賠償,罰則などの基本的事項を定めている。同法によれば,何ぴとも郵便の利用について差別されることはないし︵6条︶,また,郵便物の検閲の禁止︵8条︶,信書の秘密の不可侵,郵便業務従事者の守秘義務︵9条︶も定められ,国民の人権にかかわる郵便の特殊性が考慮されている。なお,この法律にいう郵便物とは,通常郵便物および小包郵便物をさし,前者は,1種から4種までに分かれる︵16条︶。さらに,郵便の公共性にかんがみ,同法は,郵便物等の海損の分担免除︵11条︶や郵便物の検疫優先︵12条︶についても定めている。
郵便法の付属法令のおもなものとして,郵便規則︵1947公布︶,公職選挙郵便規則︵1950公布︶,外国郵便規則︵1959公布︶,郵便物運送委託法︵1949公布︶などがある。
日本の郵便法制の基本は,明治初年,とくにそれまでの法制を改めた1873年の郵便規則によって施かれ,その後82年の郵便条例および92年の小包郵便法によって補完されたが,明治憲法下の旧郵便法︵1900公布︶によってそれらが統合され,ほぼ近代的な郵便法制が確立したのであった。もっとも,旧郵便法下では,郵便事業の国家事業性が強調され,種々の公用負担特権が認められていたほか,国民の人権については,さしたる考慮が払われていなかった。たとえば,︿職務執行中ノ郵便逓送人郵便集配人及郵便専用舟車馬等事故ニ遭遇シタル場合ニ於テ郵便逓送人郵便集配人又ハ郵便吏員ヨリ助力ヲ求メラレタル者ハ正当ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス﹀とされた︵5条︶し,また,検閲の禁止規定も欠いていた。現行法と基本的に異なるところである。
→郵便
執筆者‥室井 力
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郵便法【ゆうびんほう】
郵便役務を安価・公平に提供することにより公共の福祉を増進することを目的とした法律(1947年公布,1948年施行)。郵便事業の運営,郵便の種類・料金およびその利用と取扱い,損害賠償などの基本的事項を規定。日本最初の郵便法令は,1871年郵便創業の際に太政官布告で公布された〈書状を出す人の心得〉。1873年制定された郵便規則により郵便事業官営と全国均一料金制を採用。後に郵便条例(1882年),小包郵便法(1892年)により整備され,これらは郵便法(1900年)に統合され,第2次大戦後,一新されて現行法となった。2002年の〈信書便法〉では民間業者による信書送達の許可制度が導入され,2005年10月には郵政民営化関連6法が成立,郵便制度の大改革が企図されている。
→関連項目信書開封罪|第1種郵便物|通信の秘密|定形郵便物|郵便
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郵便法
ゆうびんほう
昭和22年法律165号。郵便の役務をなるべく安い料金で,広くすべてにわたって公平に提供することによって,公共の福祉を増進することを目的とする法律。2007年10月の郵便事業民営化にあわせて改正された。郵便業務は日本郵便株式会社の事業とされ,その料金は実質弁償主義で,なんぴとも郵便の利用について差別されない。また郵便物の検閲は禁止されている。郵便物の種類を第一種~第四種に分け,大きさの制限,包装の仕方,料金などが定められ,爆発物など郵便禁制品の定め,そのほか損害賠償,罰則までにわたり,郵便業務の基本的事項が定められている。関連法規としては,公職選挙郵便規則,国際郵便規則,郵便物運送委託法など,国際関係では,万国郵便連合憲章︵→万国郵便連合︶,万国郵便条約,郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定そのほかがある。
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世界大百科事典(旧版)内の郵便法の言及
【郵便】より
…創業時からこのときまでは,日の丸に横一線の入ったマークが用いられていた。郵便小包制度が創設されたのは92年であり,従来の条令,規則を整理し,1900年には[郵便法]が公布された。年賀郵便を制度的に取り扱うようにしたのは06年である。…
※「郵便法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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