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進化論は真っ赤な嘘?!︵クリスチャントゥディ︶という記事が話題になっていたので読みました。
晩年にダーウィンは改心したとかいうネタはもう使い古されているので私は反応しようとも思わなかったのですが、以下の記述が気になりました。
日本ではダーウィンの思いついた「進化論」が絶対的な科学的真理としてまかり通っています。 実は、「進化論は真っ赤な嘘だ」と主張する科学者が世界中に激増しているのです。 最近では、日本のノーベル物理学賞受賞者・素粒子研究の世界的権威の益川敏英氏(京大名誉教授)やノーベル生理・医学賞受賞候補者・iPS細胞研究の世界的権威の山中伸弥氏(京大教授)がいます。 「『ヒトは猿から進化したのか、それとも神が造ったのか』と聞かれれば、日本人はなんとなく『猿から進化』という方を信じるが、それはなんの根拠もない」と、二人の対談で語っています。 進化論は真っ赤な嘘?!(クリスチャントゥディ) |
これはもう実際に読んでみるしかないと思い、﹁大発見﹂の思考法を読みました。
結論から書きます。
山中氏と益川氏が﹃﹁進化論は真っ赤な嘘だ﹂と主張﹄しているというのは真っ赤な嘘です。
記事を書かれた佐々木満男氏もコメント欄で﹁確かにそのような発言はしていない、誤解を与える記述であった﹂と認めて記述を訂正しています。
しかし、お二人の対談での進化論に関する発言が非常に危ういのも事実です。
以下、少し長くなりますが誤解の余地を与えないために進化論のだいぶ前から引用します。
少し長くなりますが、まずは益川氏の宗教観に関して理解するために少し前のところから引用してみましょう。
以下、強調はすべて引用者による。
益川敏英氏(以下:益川氏):ぼくが積極的無宗教なのは、「神」というのが、自然法則を説明する時によく出てくるからです。たとえば、「雪の結晶には一つとして同じものがない。実に不思議だ。なぜこんなものが存在するのだろう」と誰かが言った時、「神様がお作りになったのだ」と、神を引き合いに出して説明するのが、いちばん手っ取り早い。 山中伸弥氏(以下:山中氏):そうですね。 益川氏:人間というのは、あらゆる自然現象に対して、「これはどうしてなのだろう」「あれはなんだろう」と疑問を持ち、なんでも説明したがる生き物です。そして、答えがわからない時、「神がそういう性質を与えた」「神がそう決めた」ということにすれば、とりあえず問題は解決したように思えます。それが宗教です。 しかし、近代科学の考え方は、まったく違います。 答えがわからなければ、わからないままにしておけ。いつか、わかる時期が来るだろう。それまで気に留めたまま待とうじゃないか――というのが、近代科学の基本的な姿勢です。 せっかちに答えを求めなくても、「これは未来の問題として残しましょう」と言えば、それで済むはずなのに、今すぐ白か黒か割り切ろうとするから、神様のところに行くしかなくなってしまうんです。 僕が言う積極的無宗教とは、「雪の結晶は神様がお作りになったのだ」と言う人達に対して、「その答えを神様に求めなきゃいかんほど、あなたの理性は単純なのですか?それぐらいの答えだったら、いくらでも考えられますよ」と、異議を申し立てることなのです。 |
これは﹁積極的無宗教﹂のすすめの後半部分です。
前半では山中先生が﹁苦しい時の神頼みはよくします︵笑︶﹂なんて言ってます。このパラグラフは益川氏の無宗教者宣言のようなものですね。
そこから﹁進化論﹂の話につながります。
ないものを信じさせる宗教の「嘘」 益川氏:ぼくのような物理屋から見ると、宗教がいちばん重要視するのは、人々を入信させるという「結果」であるように思えます。つまり、「論証の過程」は必要とされていない。これは近代科学の考え方に真っ向から反します。 別の言い方をすれば、自分達の宗教を信じさせ、入信させるためには、いくらでも嘘を言っていい、ということです。僕はすべての宗教を検証したわけではないけれど、確かに宗教というのは、おおむね、嘘を言っています。 (中略:旧約聖書の創作性について。旧約聖書に従うと)人類の歴史は、せいぜい六千年かそこらしかならなかった。もちろん実際には、それよりもっと昔から人類がこの世に存在したことは、すでに色々な事象により明らかになっています。僕は、嘘をつくのは大嫌いなんです。 山中氏:益川先生がおっしゃるように、科学には神学的な説明がつけられることが多いですね。特に生物学は、歴史的に見て、キリスト教との葛藤という宿命がつきまとっています。たとえば、アメリカでは今も人口の約半分が、「進化論」を信じていないといわれています。 益川氏:そういう話を聞くと日本人は、「進化論」を信じないなんて怖いな、と思うかもしれませんが、実は、「進化論」を信じるのも、ある意味では怖いことなんですよね。 山中氏:はい。なぜなら、「進化論」はまだ誰にも証明されていないからです。なぜか日本人は、人間はみんな猿から進化したと信じていますが、証明はされていない。 益川氏:ちなみに最近は、「進化論」と言うと怒られちゃう。今やれっきとした学問なのだから、「進化論」ではなく「進化学」と呼ぶべきだ、と。それはさておき、「ヒトは猿から進化したのか、それとも神が作ったのか」と訊かれれば、日本人はなんとなく「猿から進化した」というほうを信じますが、それは何の根拠もないわけです。 山中氏:そのうち、ダーウィンの「進化論」は間違いだった、ということになるかもしれません。 益川氏:ダーウィンの「進化論」では、個体に生じるランダムな突然変異によって生物は進化した、とされていますが、京都学派の文化人類学者、今西錦司先生は、「種は進化に対して主体性を持っている」という説を展開しました。つまり、生物は「変わろう」と思った時に変わった、主体的に変わったのだというのです。まだダーウィンの「進化論」は実証されていませんから、まだどちらが勝つかわからない。 |
この二つの引用文から何がうかがえるかというと、
1.益川氏は﹁進化論は実証されていないから今西進化論と同程度の信憑性しかない﹂と考えているということです。
この同程度、とは﹁今西進化論はダーウィンの進化論程度に証拠がある﹂という意味ではもちろんありません。﹁ダーウィンの進化論は今西進化論と同程度にしか証拠がない﹂と考えているということです。しかしそれは事実ではありません。
2.お二人はどうも進化学全般にお詳しくないご様子。
ダーウィンの進化論はともかく、木村資生氏の分子進化の中立説についてどれだけ理解されているのでしょうか?
益川先生は物理学者なのでまあ仕方ないとしても、山中先生は生物分野のトップを走っているんですから﹁なぜか日本人は、人間はみんな猿から進化したと信じていますが﹂なんて言っていてはダメでしょう。
正確には、﹁ヒトはサルと共通の祖先を持っており、それぞれに進化をしてきた﹂のです。
また、サル︵と共通の祖先︶からヒトへ進化した証拠としては、中間化石がたくさん見つかっています。最近はゲノムの類似点や相違点などから進化の分岐の時期の類推も行われています。
たとえばこのページをご覧ください。進化の系統樹といわれるものです。
代表的なものだけを見ても枝が複雑に分岐しているのがわかるかと思います。進化は決して一本道ではないのです。
さらに、進化の証拠についてですが、実は数年前に44000世代の培養で新しい形質を獲得した大腸菌の話がありました。これはフラスコレベルですが再現性があるそうです。また、暗闇で56年間、1300世代飼育したショウジョウバエの求愛行動に変化がしたという報告もありました。
このように、ダーウィンの提唱した時点の進化論から、まさしく﹁進化学﹂と言えるレベルまで発展していますが、ここまで発展しても大多数の進化学者からは﹁ダーウィンの進化論は真っ赤な嘘だ﹂という話は出てきません。
さて、ここで本題に戻ります。
山中氏は﹁進化論﹂はまだ誰にも証明されていないとおっしゃっています、益川氏は﹁ヒトは猿から進化したのか、それとも神が作ったのか﹂と訊かれれば、日本人はなんとなく﹁猿から進化した﹂というほうを信じますが、それは何の根拠もないわけですとおっしゃっています。
確かにこれは現在の進化論を知っている人からみると﹁勉強足りなさすぎ﹂なんですが、両氏がそう考えていたとしても本来なら別に困らないわけです。﹁ああ、お二人とも進化論に詳しくないのね﹂と思うだけの話で。
でも、両氏の無知をあろうことか﹁世界的な権威が言ってる!進化論は絶対的な科学的真理でも何でもない!﹂とか言い出す人がいたわけですよ。それが問題でした。︵ていうか進化論を絶対的な科学的真理だと言っている人って誰?ただの科学的事実でしょ︶
私が記事にしようと考えたのは、積極的無宗教の益川氏にとって創造論者に肯定的に扱われることほど屈辱的なことはないだろうな、と考えたからです。
この方には同書内の益川氏の言葉を贈りたいと思います。
壮大で奥深い自然現象を前にした時、科学者なら当然、徹底的な批判精神をもって接するべきです。「超常現象」や「神」に説明を求める輩など、いうまでもなく、まったく信用できない。なぜこういう現象が起きたのか、あらゆる可能性を考えなければならない。 |
生物の進化という自然現象を前にして、安易に﹁神﹂に説明を求める佐々木氏に引用されたと益川氏が知ったら悔しがるでしょうね。自業自得ですが。
最後に、全体を読んでみた感想ですが、進化論の部分以外は良書だと思います。
残念な部分をピンポイントで持っていかれた感じです。しかし、これほど強烈に創造論批判がされている著書から引用しようと考えた佐々木氏のお考えが理解できない…。
[50回]
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「進化」は事実?
益川氏と山中氏は、まともな感覚をもっていると思う。﹁進化﹂を見てきたような事実と決めつける論評者こそ大きな先入観に囚われていることに気付いていないのではないか。誰も観察したわけでもないし、実験で確認したわけでもないのだから。過去の出来事を論じているのだから、進化論も﹁・・・に違いない﹂という大仮説
の域を出ることはないと思う。
無題
宗教屋が﹁神が人間を作った﹂と主張するならば、人間とチンパンジーのDNAが98.4%同じであることの説明を聞きたいものだ。
>ポンジロウ
進化論は前提として﹁現在は過去の延長である。進化は過去から続いて現在も進行中の現象である﹂と仮定してます。
進化論も含めた科学の手法とは﹁判る範囲の情報で判らないことを考える﹂です。現在を過去の延長と考えることもその一つです。
タイムマシンが無いから昔のことは判らない、と主張することは自由ですが、その主張で進化論は科学は少しも毀損されません。単に的外れなだけです。
念のために言っておきますが進化論をいくら批判しても創造論が正しくなることはありません。
こんばんは
はじめまして。
進化論について危うい理解をしているなと思った人では生物学者の福岡伸一さんも挙げられると思います。
益川先生は物理屋ですけど、福岡先生は分子生物学者。それほどまでに生物学も細分化されているものなのか、と思いました。
本筋から外れますが
引用文には同程度とはどこにも書いてないですよ。
引用文から、益川氏がダーウィン進化論と今西進化論をどの程度評価しているかは全く読み取れないんじゃ・・・?
﹁まだどちらが勝つかわからない﹂から同程度と導くのはどの様な理論ですか?
あと、﹁サルからヒトへ﹂は﹁日本人の解釈﹂としての表現ですので、これまたもう一人の方の進化論の知識の指標としては成り立たないのでは?
日本人の進化論への認識︵にたいする学者のイメージ︶は、進化論に詳しいか否かより、周囲にどんな日本人がいるかに左右されるかと。
無題
コメントありがとうございます。
取り急ぎ返答が必要な部分のみ。
>ポンジロウさん
進化を直接再現することは不可能ですが、再現可能な大腸菌の新規形質の獲得、ショウジョウバエの求愛行動の変化について本文に書いております。まずはそちらをご確認いただきたいです。
他にも、分子進化︵ヘモグロビン遺伝子の保存性など︶についてもご理解いただけているのか疑問が残ります。
今回は説明を省きましたがリンクは貼ってありますのでご参照ください。
一つご理解いただきたいのは、科学者は進化論を絶対的な事実と考えているわけではないということです。
ダーウィンの進化論から始まる現在の進化学は、創造論、ID論、今西進化論と比べて、整合性があり証拠︵化石や形態の比較、ゲノムの比較など︶がある最も確からしい仮説であるということです。
>ののさん
>﹁まだどちらが勝つかわからない﹂から同程度と導くのはどの様な理論ですか?
たとえば、サッカーの日本代表とブラジル代表が試合をした場合、多くの方は﹁ブラジルが勝つだろう﹂と予想すると思います。実力が拮抗した国同士であれば﹁どちらが勝つかわからない﹂と考える人が多いと思われます。
それと同じ推論ですが、突飛な推論でしたでしょうか?
>﹁サルからヒトへ﹂は﹁日本人の解釈﹂としての表現
山中氏は﹃︵﹁進化論﹂は︶証明はされていない﹄﹃そのうち、ダーウィンの﹁進化論﹂は間違いだった、ということになるかもしれません。﹄という発言をしています。
日本人の一般的な知識度に対する発言である可能性ももちろん考慮しましたが、それが真であるとしても山中氏が進化論︵進化学︶にお詳しくないのでは、という推論の妥当性には関係がありません。
また、ここでは触れていませんが、著書の中でご本人が生物はあまり勉強されていないと書かれていますし、ツイッターの方では医者︵山中氏は医学部出身で臨床医から研究者になりました︶は大学の教養では進化を学ばないこと教えてもらいました。
以上です。
他にご質問がありましたらどうぞ。
無題
いや、ブラジルと日本が戦った場合、
その結果が出るまでは「まだどちらが勝つかわからない」でしょう?
「拮抗した場合に」というのはあなた独自の解釈であって、辞書的に幅広く認識されている使い方ではありません。
同様に、「証明されていない」といつのは根拠がない、証拠がないといっている訳ではないでしょう?あくまで、可能性の話をしているんです。「通説は覆ることもあると」いうのは学者なら当然の事なのでは?
もし仮にダーウィン本人が生きていて「通説は覆る事もある」という例の為に、「進化論は証明されていない」と言った場合、彼は進化論に詳しくないと推論されるわけですか?
その結果が出るまでは「まだどちらが勝つかわからない」でしょう?
「拮抗した場合に」というのはあなた独自の解釈であって、辞書的に幅広く認識されている使い方ではありません。
同様に、「証明されていない」といつのは根拠がない、証拠がないといっている訳ではないでしょう?あくまで、可能性の話をしているんです。「通説は覆ることもあると」いうのは学者なら当然の事なのでは?
もし仮にダーウィン本人が生きていて「通説は覆る事もある」という例の為に、「進化論は証明されていない」と言った場合、彼は進化論に詳しくないと推論されるわけですか?
創世記の認識
初めましておじゃまします!
﹁創世記﹂の認識が違うからなのか、クリスチャンの私にも﹁こじつけ?なにこれ?﹂と感想を持ちました。記事を書くにはやっぱり周辺知識もいるんだなーと実感。…しかし、なんなんでしょうね^^‥
あ、私は研究者ではない一般信徒です。
ののさんへ
現状の進化学︵本書でいう﹁進化論﹂︶は戦い続けて勝っています。
何と戦っているかといえば創造論やID論です。では今西進化論はどうかといえば、同じ土俵にさえ上げてもらえない状態です。
その明らかに﹁どちらが勝っているかわかる﹂現在において﹁まだどちらが勝つかわからない﹂とおっしゃる益川先生は、明らかに進化学と今西進化論の比較ができていません。
進化学を理解している人であれば﹁まだどちらが勝つかわからない﹂などとは口が裂けても言えません。
そのことから、益川先生は︵ひいてはそれに同調的である山中先生は︶進化学についてお詳しくないではないだろうか、と推察しています。
山中先生は﹁iPS細胞は﹃まだ誰にも証明されていない﹄﹂とはおっしゃらないでしょう。ご自身がどのように証明したかを本書で語っているのですから。
私は、iPS細胞が確立されていることと進化学の確からしさは同程度に蓋然性が高い考えていますので、山中先生が進化学をご理解いただいていたら﹁﹁進化論﹂はまだ誰にも証明されていない﹂なんておっしゃらないのではないか、と考えます。
その推論の下に﹁お詳しくないのではないか﹂と判断しています。
ダーウィン本人はご自身の説の確からしさと欠点をよくご存知でした。
ご本人が話される場合、﹁進化論は証明されていない﹂などと多義的に受け取れる発言はしないのではないかと考えますが、一般的に科学者は﹁通説は覆る事もある﹂という当たり前の前提をもって﹁証明された﹂と言いますから、ダーウィン自身が﹁進化論は証明されていない﹂とのみ語った場合、﹁それではあなたは﹁種の起源﹂において何を証明されたのか。あなたはご自身の学説についてどうお考えなのか﹂と問うでしょう。
山中先生に問える立場なら私もお伺いしてみたいのですが、面識もありませんので本書の記述を参考に考えるしかありません。
本書の記述をもとに考えた結果、私は上述のエントリのような推察をしました。その判断材料として引用文を載せ、またその根拠も書いています。まだ足りないとお考えでしたらどうぞ本書を読まれますよう。
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