IT業界の下請け構造を知る情報系学生のためのIT業界入門(5)(1/2 ページ)

就職活動を行ううえで欠かせない「業界研究」。学生にとっては非常に分かりづらいIT業界について、新人社員の行貝くん、色主さんと一緒に学んでいこう。

» 2011年04月05日 00時00分 公開
[イノウ@IT]
冠里さん

今日の講義は、少々ショッキングなタイトルですが、IT企業の「下請け構造」についてです。色主さんは、下請けについてどんな印象をお持ちですか。

行貝知蔵

行貝知蔵(ぎょうかい しるぞう)

ABCソフトウェアサービスの新入社員。何にでも興味を持って前向きに知識を吸収するが、おっちょこちょいで早とちりな一面も。先輩にかわいがられる愛すべきキャラクター。22歳。


色主識代

色主識代(しょくしゅ しるよ)

ABCソフトウェアサービスの新入社員。真面目で業界研究をしっかりやるタイプ。もともとは別業界を志望していたが、ABCソフトウェアサービスの会社説明会に参加したことをきっかけに入社。22歳。


冠里邦彦

冠里邦彦(かんり くにひこ)

ABCソフトウェアサービスのプロジェクトマネージャ。国立大学理学部卒。駄洒落好きで気のいいオジさんだが、仕事には厳しい。いまだに自分でもコードを書く。お洒落を自認し、いつもベストを着用している。44歳。


色主さん

ええと、……ううん……あんまり良い印象はありません。


冠里さん

はっきりしませんね。行貝くんはどうです?


行貝くん

 
冠里さん

はい、そうですよ。皆さんが下請けという言葉に悪いイメージを持っていることは認識していますが、下請けがすべてダメなわけではありません。日本企業として世界で最も成功している企業の1つであるトヨタだって、デンソーやアイシン精機といった下請け企業の存在なくしては、あの高品質な自動車を生み出すことはできないわけですし、必ずしも「下請け=悪」ではないのです。必要に応じて外部の力を借りるのはある意味、当たり前のことです。Webサービスの事業者だって、新しいサービスを生み出す際、われわれシステム開発会社の力を借りることだってありますからね。

色主さん

じゃあなぜ、下請けにネガティブなイメージがつきまとうのですか。


冠里さん

 
色主さん

でもなぜ、わざわざ外部の会社を使うのですか。元請けが、取ってきた仕事を自社のリソースでやればいいような気がするのですけど……。

冠里さん

それには、2つの理由があります。1つは、システム開発の仕事のほとんどがプロジェクト型の業務であることです。

 プロジェクト型の業務では通常、プロジェクトの稼働状況や時期に応じて、必要とされるスタッフの数やスキルが変わります。そのため、元請け会社は状況に応じて、外部の会社から必要なスタッフを調達した方が固定費を下げられますし、下請け会社は、自社の社員が持つスキルを、それが求められるプロジェクトで有効に生かせます。建設・土木業界でも、同様の理由から元請け会社が必要なスキルに応じて、下請け会社をアサインしています。

行貝くん

要は、きちんと強みを持って、対等な関係で仕事ができれば、下請けの仕事が悪いというわけではないということですね。

冠里さん

 

 IT1

 
一括請負契約 時間契約
契約者 ユーザー企業/元請け企業 元請け企業/下請け企業
支払い形態 基本的に契約時の見積もりに基づいての支払い 基本的に業務従事日数(人月)に基づいての支払い
リスク 一般的に高い 低い
利益率 トラブルが起こらなければ高い 一般的にそれほど高くない
表1 一括請負契約と時間契約

行貝くん

 
冠里さん

うちみたいな中堅システム開発会社の場合、相手が中堅・中小企業なら元請けになることも多いけど、お客さんが大手だと2次請けの仕事がほとんどですからね。そもそも、大手企業の基幹システムには新規案件がほとんどないから、メーカー系の独壇場になっていますし。ただ最近は、グローバル化の波を受けて大手企業同士の合併が進んでいるから、メーカー系も合併後のシステム統合で、自社のシステムが切られないか、ひやひやしているみたいですよ。

色主さん

そういう場合、技術的に優れたシステムが採用されるのですか。


冠里さん

ううむ、残念ながらそうともいえないみたいで、政治的な要素で決まることも多いようです。通常のプロジェクトでは、われわれシステム開発会社がメインで付き合うのは、ユーザー企業の情報システム部門やシステム子会社の人たちですが、こういう大きな案件になると、経営トップ同士の話し合いで決まることがほとんどですから。

行貝くん

でも、この間アサインされたプロジェクトでは、経営企画部門の人が中心になって要件を取りまとめていましたけど。

冠里さん

 
図1 システムの種類によって異なる発注側と受注側の中心メンバー (クリックで拡大します) 図1 システムの種類によって異なる発注側と受注側の中心メンバー (クリックで拡大します)
冠里さん

使
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