![連載 今日も惑いて日が暮れる](https://cdn.mainichi.jp/vol1/2023/04/15/20230415hpr00m040006000q/16.jpg?1)
連載
今日も惑いて日が暮れる
上からではなく下から目線で、不安と惑いをつづった紙つぶてを投げてみたい――。吉井理記記者のコラムです。
記事一覧
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焼き鳥店での反省=吉井理記
2024/7/10 13:02 871文字会社には極秘だが、僕は時折、夕方から仕事を放り出し、ビールなどを飲みに出かけている。 取材先でいい話が聞けた、などという時の祝杯である。 先日も良い気分で目についた焼き鳥店ののれんをくぐると、「おまかせ焼き鳥5本」という品書きを見つけた。 僕はレバーが苦手だ。5本の中にレバーがあったら困る。アルバ
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自民党議員の憤激=吉井理記
2024/7/3 13:09 866文字先日、ある自民党の国会議員にお叱りをいただいた。 北朝鮮による拉致問題について、である。 おさらいしておくと、日本政府認定の拉致被害者は17人で、2002年の﹁小泉訪朝﹂で5人が帰国したのはご存じの通り。残る12人の安否は不明のままだ。 だが14年に状況が変わる。いや、変わる可能性があった。 12 -
「家族の一体感」幻想=吉井理記
2024/6/26 13:10 850文字岸田文雄首相が、また妙なことを口にした。 今度は選択的夫婦別姓についてである。先日、経団連が「早く実現せよ」と提言したことがニュースになったが、岸田首相は事実上拒んだ。 「家族の一体感や子どもの利益にも関わる問題であり、国民の理解が重要だ」(17日、国会での答弁)という。 ざっくりまとめれば、夫婦
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見習ってほしい=吉井理記
2024/6/19 13:16 865文字パーティーが苦手である。 この言葉がまとう﹁上流階級感﹂もさることながら、僕はひどい人見知りである。以前、本欄でちょっと触れた。新聞記者としてどうかと思う。 それでも仕事がら、たまにお誘いを受ける。先日もある立食パーティーの招待状が届いた。 ……どうしよう、これ。いっそ見なかったことにするか? で -
岸田グルメの大異変=吉井理記
2024/6/12 13:05 884文字新聞で、とりわけ愛読するコーナーがある。 首相の動静欄である。毎日新聞では「首相日々」がそれだ。 首相がどんな有名店で食事をしたか、その絶品料理のあれこれを想像して、一人さびしくヨダレをたらすのである。 記者が何をヒマな、とお思いになるかもしれないが、食は人間の根本である。19世紀フランスの美食家
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伊藤さんと鈴木さん=吉井理記
2024/6/5 13:06 854文字仕事がら、﹁右﹂の人ともお会いする。 最近、訃報を耳にした伊藤邦典さんもその一人だ。享年77。三島由紀夫が作った﹁楯の会﹂の1期生だった。 三島は1970年、楯の会の学生長・森田必勝や会員3人と東京・市ケ谷の陸上自衛隊施設に乱入し、自衛隊にクーデターを呼びかけた後、森田と自決した。会員3人のうち、 -
拉致と今市・飯塚事件=吉井理記
2024/5/29 13:09 894文字殺伐とした話で恐れ入るが、大事な論点を含むと思う。 2005年冬、栃木県で小1の女児が殺害された。﹁今市事件﹂である。僕も取材にあたった。 捜査は難航した。栃木県警は翌年、犯人像を﹁男性﹂と断定して公表した。 警察が手がかりとなるDNAを検出したと推測できたが、ウラが取れなかった。﹁DNA検出﹂は -
小池さんの記者会見=吉井理記
2024/5/22 13:15 846文字新型コロナウイルスの「5類移行」から1年がたった。 読者はご存じだろうが、おさらいしておく。感染症法では、感染症をその感染力などに応じ、1~5類にランク分けして社会の対応を変えていく。 新型コロナは、致死率の高い中東呼吸器症候群(MERS)などとともに上から2番目の「2類相当」とされていたが、昨年
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カップラーメン懇談会=吉井理記
2024/5/15 13:09 851文字かつて、山内豊徳さんという官僚がいた。 旧厚生省で福祉や公害問題に携わり、後に環境庁(現環境省)へ転じる。そして企画調整局長だった1990年12月5日、自ら命を絶つ。 是枝裕和さんの「雲は答えなかった」、佐高信さんの「官僚たちの志と死」に詳しいが、山内さんは水俣病認定訴訟の国側の責任者だった。患者
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経済学者たちの「予言」=吉井理記
2024/5/8 13:06 885文字円安が続く。物価高のニュースは毎日のように流れる。 そんな中でも、購読料を支払い、新聞を読んでくださっている読者の皆様には、ただただ感謝を申し上げるしかない。本欄を愛読しているという読者から、「年金暮らしだが、毎日新聞を読み続けている」というお手紙もいただく。 筆無精でいまだお返事も差し上げていな
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日経コラムで考えた=吉井理記
2024/5/1 13:07 879文字イヤなものを見た。 日本経済新聞4月22日付朝刊1面のコラム「春秋」を巡るてんまつである。カタカナが多くなるが、少し前置きしたい。 この原稿は毎日新聞社から貸与されているノートパソコン(PC)で書いている。原稿のデータは、ノートPC内の記憶装置に保存されるが、インターネット経由で会社のデータサーバ
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打倒・田原総一朗=吉井理記
2024/4/24 13:10 863文字討論番組「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)でご存じ、ジャーナリストの田原総一朗さんが卒寿、90歳になった。 その記念というわけでもないのだが、先日、何度目かになるインタビューをさせてもらった。 毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい人である。最近では、「朝生」での独善的に映る司会ぶりや、自民党の権力者
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「聖戦」と呼んでみよう=吉井理記
2024/4/17 13:05 873文字毎日新聞東京本社が入るビルは、パレスサイドビルという。 名前の通り、皇居に面している。近くにはかつて旧陸軍近衛師団の司令部や駐屯地があった。今も往時を伝える石碑がある。 その近衛兵の「精神」を継ぐ、と自負する陸上自衛隊第32普通科連隊の公式X(ツイッター)が騒動になった。 激戦地・硫黄島であった戦
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わびてほしい=吉井理記
2024/4/10 13:09 833文字自民党議員と話していて、例の「女性ダンサー懇親会」問題を起こした自民党青年局にシンボルマークがあることを知った。 ご存じでした? まさに海に飛び込まんとするペンギン、いわゆるファーストペンギンのイラストである。 ペンギンは群れで行動する。群れを離れ、最初に危険な海に身を投げるペンギンを特にこう呼ぶ
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二十四条知ってるかい=吉井理記
2024/4/3 13:01 866文字♪なんてったってお父さん 僕はあの娘(こ)が好きなんだ……結婚ってのは両性の 合意によって決まるのさ お父さんたら知らないの 憲法二十四条を…… 歌手・守屋浩さんの「二十四条知ってるかい」(1959年)を教えてくれたのは民族派の作家、故鈴木邦男さんである。 大ヒットした歌ではない。鈴木さん自身、あ
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デマにあらがう=吉井理記
2024/3/27 13:05 886文字どこまで書くか悩ましいのだが、小学5、6年のころ、軽くいじめられた時期がある。 裕福な家の子弟が集まる学校だった。僕の家は平均的な経済状況だったと思うが、学校ではそうはみなされなかった。流行のテレビゲーム機も家になかった。そのせいか、級友たちから﹁ビンボー﹂などとからかわれた。 口げんかが苦手なの -
説きたがる人たち=吉井理記
2024/3/13 13:01 875文字エラい人たちは、余計なお世話が好きらしい。 亡くなった人をそしるつもりはないが、第1次政権時代の安倍晋三元首相が注力した教育基本法改定(2006年12月)もそうだった。教育の目的に「愛国心を育てる」ことを付け加えた。 なぜこんなことを? 安倍氏いわく「戦後60年間、自国をいとおしく思う感情が否定さ
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銀座のクラブの記憶=吉井理記
2024/3/6 13:00 885文字あれは2014年1月の寒い夜のことだった。東京・銀座の、会員制クラブである。 薄暗い一角で、自民党の二階俊博元幹事長と作家の大下英治さん、それに二階氏と親しい閣僚経験者の政治家OBがテーブルを囲んでいた。 普通のサラリーマンである僕はもちろん会員ではないが、大下さんに伺いたいことがあり、呼ばれた場 -
社歌と教育勅語=吉井理記
2024/2/28 13:09 891文字読者にさして益する話ではないが、毎日新聞には社歌がある。 ♪光は東の空よりと かかぐる星の旗じるし 見よや我社が雄々しくも 新文明の使徒として 日も夜もたえぬいとなみを はた戦いを勝どきを おお毎日 おお毎日 我らの毎日~ ……今の時代、少し気恥ずかしい。これがもし、僕個人のテーマソングであれば指
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早野透さんの本=吉井理記
2024/2/21 13:04 861文字古書が好きだ。 特に行間にマーカーがひかれ、余白に書き込みがある古本の味わいは何物にも代えがたい。だれかの学びのあと、努力の痕跡には、尊さすら漂うと感じる。 最近、僕の元にやってきた本もそんな一冊だった。 朝日新聞の名物記者、故早野透さんと、評論家・佐高信さんの対談をまとめた﹁丸山真男と田中角栄﹂ -