連載
水説
毎日新聞朝刊に毎週水曜に掲載している記者コラム。2024年3月からは赤間清広・専門記者が担当します。
記事一覧
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豆腐屋、伝統油を搾る=赤間清広
2024/6/26 02:00 1009文字<sui-setsu> おいしいものを食べると、思わず人に勧めたくなる。誰にでも、そんな﹁逸品﹂があるだろう。 私の一推しは、福島県会津若松市にある﹁平出油屋﹂が作る菜種油。時間をかけてじっくり搾る﹁玉締め圧搾法﹂の伝統を守る全国でも数少ない店だ。 平出の油を料理に使うと一切、しつこさがないことに -
シン「荒野の七人」=赤間清広
2024/6/19 02:00 1007文字<sui-setsu> 1960年製作の西部劇映画「荒野の七人」。原題の「マグニフィセント・セブン」は「壮大な7人」という意味になる。 原作となったのは黒沢明監督の名作「七人の侍」だ。舞台を西部開拓時代に、主人公を侍からガンマンに改変した「荒野の七人」も大ヒットし、続編やリメーク版が次々と作られた
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スイカゲームの秘密=赤間清広
2024/6/12 02:00 1017文字<sui-setsu> 任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」のダウンロードランキングで、2023年のトップになったのが「スイカゲーム」だ。 画面の上から落ちてくる同じ種類の果物同士を組み合わせ、より大きな果物に進化させていくパズルゲーム。シンプルなゲームなのに、時間を忘れて熱中してしまう不思議
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「日本製」は信頼できる?=赤間清広
2024/6/5 02:00 1003文字<sui-setsu> 最も信頼できる国は、日本。オーストラリアのシンクタンク、ローウィー国際政策研究所が実施した国民調査で、こんな結果が出た。 アジアで最良の友人は?という質問でも日本が3年連続でトップに輝いている。 オーストラリアだけではない。国際的に見ても、日本は「信頼に足る国」との認識が比
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「乗れない」時刻表=赤間清広
2024/5/29 02:00 991文字<sui-setsu> 前々から不思議に思っていた本がある。﹁貨物時刻表﹂。文字通り、貨物列車の発着時間をまとめた一冊だ。 内容に問題があるわけではない。興味深いのは、一般の人が利用できない﹁乗れない列車﹂の時刻表なのに、なぜか毎年、大売れしているという現実だ。 書店の中には年間の書籍売り上げラン -
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コーヒーが消える日=赤間清広
2024/5/22 02:00 994文字<sui-setsu> 先週に続き、世界的な気候変動について語りたい。 気づいているだろうか? スーパーマーケットから、おなじみの商品が消えつつあることを。 オレンジジュースだ。世界最大の生産地、ブラジルで記録的な不作が続き、オレンジ果汁はいま、世界的な争奪戦の様相だ。 日本でも果汁不足が深刻化し
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ビーン・ショック=赤間清広
2024/5/15 02:00 1009文字<sui-setsu> 日本で初めてチョコレートを売り出したのは東京の菓子店「風月堂」だとされる。1878(明治11)年の新聞広告が確認できる。 大正期には大手菓子メーカーがカカオ豆からの一貫生産に乗り出し、チョコは一気に大衆化した。 甘く、ほろ苦い風味と、口溶けに日本人はたちまち、とりこになった
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サトシ・ナカモト=赤間清広
2024/5/8 02:01 995文字<sui-setsu> 経済界にとって今世紀最大のミステリーである。「サトシ・ナカモト」とは一体、何者なのか? 名前の響きから、日本人のような印象を受ける。しかし、その正体は誰も知らない。本人に直接、接触した人がいないからだ。 始まりは2008年、ナカモト氏名義でインターネット上に投稿された論文だ
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脱「座りすぎ」のススメ=赤間清広
2024/5/1 02:01 956文字<sui-setsu> 座っている時間が世界で最も長いのは日本人。こんな調査結果をオーストラリアの研究機関がまとめたことがある。1日平均7時間にもなるそうだ。 さもありなんと納得するしかない。自分の生活を顧みても、一日の大半をデスクでパソコンとにらめっこしている状況だ。社内を見渡しても、座りっぱな
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うまい話には……=赤間清広
2024/4/24 02:00 970文字<sui-setsu> 「日本なめんなよマジで」「広告配信業務停止の行政処分を出すべき」 自身のSNS(ネット交流サービス)に怒りに満ちたメッセージを連投しているのは、衣料品通販大手「ZOZO」創業者の前沢友作さんだ。 SNSでは、前沢さんら著名人の名前や写真を勝手に使った詐欺広告がまん延している
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見放された通貨=赤間清広
2024/4/17 02:00 984文字<sui-setsu> 南米アルゼンチンの全国紙を眺めていると、不思議な言葉を見つけた。「ブルーレート」。テレビのニュースにも頻繁に登場する。これは一体、何だろう? 同国の通貨はペソ。しかし、経済危機が長期化し、為替市場からの信頼は失墜している。 国民も自国通貨を信用していない。手持ちの資産を一刻
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元「米国の象徴」の威光=赤間清広
2024/4/10 02:01 972文字<sui-setsu> どの国にも、一つの時代を築いた「国民的企業」がある。米国でいえば、USスチールがそれに当たるだろう。 その歴史は20世紀の米国の成長の軌跡そのものと言っていい。 源流企業の「カーネギー・スチール」を所有していたのは、「鉄鋼王」と呼ばれたアンドリュー・カーネギー。慈善活動にも
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水運「大動脈」の異変=赤間清広
2024/4/3 02:01 959文字<sui-setsu> その話を最初に耳にしたのは昨年夏のことだ。 「水運の大動脈の一つが目詰まりを起こした。大型船が大渋滞を起こしている」 年末になると、事態はさらに悪化した。 「残る大動脈も通れなくなった。これから一体、どうなるのか」 水運関係者が心配するのは、パナマ、スエズという二つの巨大運
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ワンダーランドの呪縛=赤間清広
2024/3/27 02:00 1005文字<sui-setsu> ルイス・キャロルの名作﹁不思議の国のアリス﹂は人間の服を着た白いウサギを追いかけ、主人公のアリスが深い穴に飛び込む場面から始まる。 この有名な児童小説が、堅苦しいイメージが強い日銀の会議で取り上げられたことがある。1999年2月のことだ。 日銀は追い詰められていた。金融不安 -
そして「神話」は崩れた=赤間清広
2024/3/20 02:00 996文字<sui-setsu> あの人は今、どうしているだろうか。中国のニュースを目にするたび、こんな思いに駆られる。 特派員時代、北京で知り合った中国語の女性講師のことだ。今年50歳になる私と同年代だった。 いつもスマートフォンとにらめっこし、マンションの物件探しに忙しい様子が印象に残っている。 新型コ -
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ラッパを吹くのは誰か=赤間清広
2024/3/13 02:01 992文字<sui-setsu> ﹁暗い夜道を一人で歩くのは不安だ。みんなでお手々つないで行けばいい﹂ ﹁春闘﹂という日本独自の賃上げ交渉は1955︵昭和30︶年、こんな呼びかけで始まった。 声の主は現在の連合の母体の一つ、総評の議長も務めた太田薫。ダミ声でエネルギッシュにまくし立てる姿から﹁太田ラッパ﹂の -
雪国からの温風=赤間清広
2024/3/6 02:00 995文字<sui-setsu> 今週から水説を担当します。経済コラムを中心にお届けします。 ◇ 「春はあけぼの」で始まる清少納言の枕草子。夏、秋に続いて、冬の場面に登場するのが早朝の光景だ。厳しい寒さをしのぐため、大急ぎで炭を運んで火をおこす宮中の姿が描かれている。 炭は昭和の中ごろまで、日本の暖房
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音楽が起こす奇跡=元村有希子
2024/2/28 02:00 1000文字<sui-setsu> オンガクとブンガク。どちらも人の心を動かすけれど、文﹁学﹂に対して音﹁楽﹂。心の垣根を越える力は多分、音楽が上だ。 先週、オーストリア・ウィーンで開かれた国際会議に、日本から訪れた総勢100人のチームの姿があった。﹁ホワイトハンドコーラスNIPPON﹂。聴覚・視覚障害、身体 -
見た目より大切なこと=元村有希子
2024/2/21 02:01 988文字<sui-setsu> 容姿や外見で人を判断するルッキズム︵外見至上主義︶。人種差別も女性差別も、根底にはこの思想がある。 上川陽子外相に関する麻生太郎氏の発言を思い出そう。本来無関係な外交手腕と外見を結びつけて批評した。そもそも美醜は個人の価値観による。﹁ほめ言葉だった﹂とも看過できない。 ルッ -
脱タコツボのすすめ=元村有希子
2024/2/14 02:00 1014文字<sui-setsu> タコには知性があるらしい。餌を見つけると8本の腕を器用に操って瓶のふたを開けるとか、脳の神経細胞の数は犬に匹敵する、などの報告が時に話題になる。 狭い場所を好むことは広く知られる。その習性を利用したのがタコツボ漁だ。転じて、自らの世界にこもり外界との接触を避ける様子を「タコ
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