東京理科大学は11月4日、新開発の情報記録方式「3次元クロスシフト多重方式」を採用することで、5インチサイズのフォトポリマーディスクと、小型かつ簡易な光学系およびメカ機構により、2TBのホログラム多重記録を可能とするメモリ技術を開発したと発表した。

技術の説明を行う東京理科大の山本教授


 

/10075&50HDD

3()10μm52TB10-4(65)

従来技術と今回の技術の比較。角度多重記録方式の場合、角度は0.1度ずつだが、その制御の精度は0.01度以下と、1桁異なる精度が求められ、メカニカルな機構での実現が難しかった。一方のコリニア方式はスペクトルパターンを用いるが、光学系を変更した際に、同じスペクトルパターンを出せない場合があり、媒体の互換性という観点で課題があった。今回考案された方式は、そこまで制御精度が必要なわけでもなく、媒体互換性の確保も容易であるという

同じ場所に角度を変えることで、別の情報を記録させることが可能

同じ場所に角度を変えることでも別の情報を記録させることも可能

こうした技術を組み合わせると、1つのホログラム(0.5mmの円)あたり1Mビットながら、5.5cm長で10μmシフトだと5500個となり、さらに5度間隔での傾きを左右で行い6多重化すると、合計33Gビット(4.1GB)の容量が実現される

この実験系は、光源に青色のレーザー光源を採用しているほか、空間光変調器は画素数が縦横ともに2000以上、画素ピッチは7.8μm、最高フレームレートは1000fps以上、CCDは画素数が縦横ともに2700以上、画素ピッチが5.79μm、最高フレームレートが750fpsとしているが、それ以外のディスクの角度を制御する機構などは非常にシンプルで、小型化も容易に行えるものとの考えを山本氏は示しているほか、基本的なターゲットはニアラインとオフライン領域であるが、フレームレートを今後、高速化できればデータの転送レートもさらに向上されることから、「HDDを超す高速化も可能になるとの見込み」とのことで、アクティブアーカイブ領域での活用も可能になるとしている。

実験系の構成を写した画像。実用化には、これをいかに小型化するか、というところもポイントとなる


10μm

従来のメモリ技術各種と今回の技術の優位性比較


30cm(5)

 5TFT1G/s()  

なお、山本教授としては、2020年の東京五輪開催に伴って用いられるであろう高精細な映像のアーカイブを第一ターゲットとして、まずは2TBで商用化を目指すとしているが、現状の2値記録方式から、多値記録方式に増やしたり、多重記録の回数を現状の数百から数千にできる材料の開発などを行っていくことで、2030年ころには100TBまでは行けるのではないかとしている。