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林建次

埼玉で暮らす在日クルド人 「ワラビスタン」のいま

2016/01/19(火) 10:42 配信

オリジナル

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蕨駅に隣接する繁華街。ここでは毎週日曜日、夕方4時を過ぎるとオレンジ色のジャンパーを羽織ったクルド人たちがパトロールをしている光景を目にする。

「通行人の邪魔にならないようにね」「ゴミを捨てないように」路上にたむろするクルド人たちに呼びかけていく。毎週1時間のパトロールはクルド人たちが、地域社会に受け入れてもらうためにボランティアで始めた活動だ。今日のパトロールに参加しているチョウラクさん(35)は日本に来て14年だ。

一番右がチョウラクさん(撮影:井上さゆり)


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また、正式に受け入れが決まった難民とは違い、仮放免状態では健康保険などの社会保証もなく、就労も禁じられている。さらに入管に届け出た住所のある都道府県から出ることも原則として認められておらず、移動の必要が生じた場合は、入管局から「一時旅行許可」をもらわなければならない。違反すれば仮放免が取り消される可能性もある。そうなれば、最悪、強制送還されてしまう。

法的には働くことができないチョウラクさんだが、家賃や日々の生活費を稼がなければならない。そのため、クルド人コミュニティのLINEグループで紹介される建設・土木関係の仕事をこなして糊口をしのいでいる。日給は1万円ほどで、多い月は20万円ほど稼ぐというが、立場は不安定な状況にある。

国際的な重要課題

クルド人に限らず、難民問題は国際的な重要課題になっている。ドイツでは2015年だけで96万人(11月末時点)もの難民受け入れを決めたが、日本では2014年の間に11人。積極的に難民を受け入れている主要国と比較すると、日本の難民認定数は突出して少ない。

日本の場合は、難民の要件である「迫害」の範囲が狭いという。東洋大学社会学部社会福祉学科の荻野剛史准教授は、政府が難民認定に慎重な理由として「外国への門戸を広げることで、治安の悪化や人種対立が生じるから、受け入れ数を増やしたくないという見解にあるのではないか」と指摘する。

日本語を勉強する在日クルド人(撮影:林建次)







(撮影:井上さゆり)

前出の荻野准教授は、難民受け入れの方策の一つとして、2014年の欧州内のデータで総人口比の難民受け入れ数が最も多いスウェーデンのケースを挙げる。同国では難民申請者に対して、申請をした時点で国が最低限の生活費や住居の援助を行っている。生活最低限の保証を行うことで、治安は悪化せず、国民の受け入れに対する不安も拭えるのではないか、という発想だ。

日本クルド文化協会の事務局長は「難民申請を受けられない場合も、就業ビザや特別在留許可を出すなど、難民判定の基準そのものは変えるのは難しくても、実態に即した対応をしてほしい」と訴える。

(撮影:林建次)


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(撮影:井上さゆり)

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