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■美しい日本語やカッコいい表現はいらない
﹁おいおい、伝わるように文章を書いてくれよ﹂
﹁ちょっと、これ……意味が分からないんだけど?﹂
そんな言葉を上司や同僚から言われたことはありませんか?
仕事で使う文章に求められるのは、﹁伝える﹂ことではなく︵!︶、相手に﹁伝わる﹂ことです。せっかく有益な情報をもっていても、せっかくいい仕事をしても、せっかく伝えたい想いがあっても、文章の内容が相手に伝わらなければ意味がありません。美しい日本語やカッコいい表現は必要ありません。大事なのは相手に確実に伝わることです。
残念ながら、学生のときに学んでいそうで、実は学んでいないのが、伝わる文章を書く技術です。今回は﹁ダメな文章﹂が﹁伝わる文章﹂に変わる3つのポイントをお伝えします。
■【ポイント1】 「一文一義」で書く
伝わりやすい文章を書くには﹁一文一義﹂を意識する必要があります。﹁一文一義﹂とは、一文︵句点<マル>が打たれるまでの文章︶のなかに、ひとつの情報だけを書く、という意味です。
【原文】
このチームをマネージメントするのは難しいと言われていましたが、チーフの鈴木は、独自の基準でスタッフを選別し、他部署からも有能な人材を引き抜き、さらには、若手の山田に現場を統率する権限を与えるなど、目を見張る采配でマネージメントの基盤を構築しました。
句点︵マル︶が打たれたのは、最後だけ。一文に120文字以上が費やされています。これでは、読む人の頭に内容が入ってきません。
【改善文】
このチームをマネージメントするのは難しいと言われていました。しかし、チーフの鈴木は、独自の基準でスタッフを選別。他部署からも有能な人材を引き抜きました。さらには、若手の山田に現場を統率する権限を与えるなど、目を見張る采配でマネージメントの基盤を構築しました。
句点を打って文章を4分割した結果、ずいぶん読みやすくなりました。一文に盛り込む情報が多くなればなるほど、読みにくさが増し、読み手の理解度が下がります。ダラダラと読点︵テン︶でつながれた冗長な文章は、書き手の自己満足以外の何ものでもありません。
もっとも、すべての文章を﹁一文一義﹂で書くと、読む人にやや淡白な印象を与えてしまうことがあります。実際には﹁一文一義﹂をベースにしながらも、ほどよく﹁一文二義﹂を織り交ぜて、メリハリのある文章を紡ぐのが理想です。
■【ポイント2】主語と述語を正しく対応させる
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主語と述語を正しく対応させる——文章を書くうえで守らなければいけないルールです。主語と述語が正しく対応していない文章は、「伝わらない文章」、つまりは悪文です。
【原文】
新進気鋭の77コーポレーションは、業績の良さはもちろん、社員の自主性や交渉力を伸ばす企業としても、その社風を高く評価している。
﹁77コーポレーションは﹂という主語に、﹁高く評価している﹂という述語を組わせるのは不自然です︵自社が自社を評価する……考えにくいケースです︶。このように、主語と述語が正しく対応していないと、読む人の理解度が著しく下がります。もしも﹁77コーポレーション﹂を主語にするなら、次のような文章が適切です。
【改善文1】
新進気鋭の77コーポレーションは、業績の良さはもちろん、社員の自主性や交渉力を伸ばす企業としても有名だ。
﹁主語︵77コーポレーションは︶﹂と﹁述語︵有名だ︶﹂が正しく対応したこの文章であれば、まったく問題はありません。
一方で、もしも原文の述語︵高く評価している︶を残すなら、この述語に正しく対応する主語を盛り込まなければいけません。
︻改善文2︼
新進気鋭の77コーポレーションは、業績の良さはもちろん、社員の自主性やディベート能力を伸ばす企業としても有名だ。わたしは、その社風を高く評価している。
﹁わたし﹂という主語を加えて、述語︵高く評価している︶と正しく対応させました。この文章であれば、首を傾げる人はいないでしょう。
■︻ポイント3︼修飾語と被修飾語を近づける
修飾語と被修飾語は、できる限り近づけましょう。これも、伝わる文章を書くうえで無視できない重要な原則です。
【原文】
佐々木は、いつものように手早くランチを食べて現場に向かった。
この文章では、﹁いつものよう﹂が、﹁手早くランチを食べて﹂を修飾しているように読めます。しかし、実はこの佐々木さん、いつもは、ゆっくりランチを食べています。手早くは食べていません。そう、書き手は﹁いつものように﹂を、本当は﹁現場に向かった﹂という一文にかけたかったのです。
誤読を招く文章になった原因は、﹁いつものように﹂︵修飾語︶と﹁現場に向かった﹂︵被修飾語︶の距離が離れすぎている点にあります。誤解を防ぐには、両者を近づける必要があります。
【改善文】
佐々木は、手早くランチを食べて、いつものように現場に向かった。
この文章であれば、誤読を招く心配はありません。修飾語と被修飾語が離れていると、読む人が勘違いしやすくなります。とはいえ、注意を払っていても、両者の距離が離れてしまうことは珍しくありません。修飾語と被修飾語の距離については、読み返すときに、チェックするようにしましょう。
■伝わる文章は、社会人の﹁みだしなみ﹂&﹁武器﹂である
﹁一文一義を心かげる﹂﹁主語と述語を正しく対応させる﹂﹁修飾語と被修飾語を近づける﹂——この3つのポイントを意識するだけで、文章の読みやすさと情報伝達力、それに、読み手の理解力が格段にアップします。
確実に相手に伝わる文章が書けるようになると、仕事の効率がアップするほか、書き手自身の信頼性も高まります。伝わる文章を書くスキルは﹁社会人のみだしなみ﹂であり、なおかつ﹁社会人の武器﹂であると心得ておきましょう。
著者‥山口拓朗
﹃伝わる文章が﹁速く﹂﹁思い通り﹂に書ける87の法則﹄著者。
伝える力︻話す・書く︼研究所主宰。﹁伝わる文章の書き方﹂や﹁メールコミュニケーション﹂﹁キャッチコピー作成﹂等の文章スキルをテーマに執筆・講演活動を行う。伝わる文章の書き方スキルは﹃伝わる文章が﹁速く﹂﹁思い通り﹂に書ける87の法則﹄︵明日香出版社︶に詳しく掲載。モットーは﹁伝わらない悲劇から抜けだそう!﹂。
山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/
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