竹中平蔵氏が twitter で以下の発言をした。結論から言うと、﹁あえて単純計算﹂する限り竹中平蔵の算数は正しい。(こんなどうでもいい話より、このblog内で原発関係で今一番読んでもらいたいのはこれなので、併せて宜しくお願いします。)
30年で大地震の確率は87%・・浜岡停止の最大の理由だ。確率計算のプロセスは不明だが、あえて単純計算すると、この1年で起こる確率は2.9%、この一カ月の確率は0.2%だ。原発停止の様々な社会経済的コストを試算するために1カ月かけても、その間に地震が起こる確率は極めて低いはずだ。 2011-05-10 08:03:08 via web
これに対する反応は何通りかある。
(一)竹中平蔵は馬鹿じゃないの。ポアソン分布なんだから、30年で割ったら駄目だろ。1年当たりの発生確率は 6% だ。
(二)発生確率は毎日 87% だ。
(三)いやいや、BPT 分布を仮定したら、ポアソン分布で計算するほうがおかしい。
(四)数学の計算はともかく、決して低くない確率なんだから (以下略、政治や危機管理の議論)
このうち注目すべきが1つ目と2つ目。説明は省くが、1つ目は間違い。なぜなら、東海地震の発生頻度をポアソン分布と仮定するのがおかしいから*1。2つ目は言っている意味が分からないので間違い。巨大地震の発生確率が毎日 87% なら、誰もそんな地域には住みません。 どんな反応があったかは、togetter のまとめを眺めて下さい。ここで、1. と 2. の反応をしている人は切り捨てて良いです。 以下、難しいことを省いた説明。BPT 分布とかポアソン分布とかの数学用語は忘れて良い。 東海地震の発生確率が、次の30年間で 87%*2 というのは、東海地震が周期性を持つという観測事実に基づいている。周期が 120 年くらいだと言われていて、前回の発生から 120 年は過ぎているので、いつ起きてもおかしくない、という主張がされている。そのため、次の30年は特に発生確率が高いと考えられている。 簡単な少し極端な例えをすると、出産間近の人がいて、次の30時間で赤ん坊の産まれる確率が 87% だとします。そうすると、次の1時間で産まれる確率はいくらですか、という問題と同じ。大雑把な計算をするなら、87% を30時間で割れば良い。竹中平蔵と同じ計算で良い。 1. で﹁ポアソン分布だからー﹂と言っている人は、受精した日にも赤ん坊が産まれるという主張をしているのと同じ。また妊娠 100 ヶ月でも産まれると主張しているのとも同じ。さらには、(双子などを除いて) 何度も何度も 100 回くらい赤ん坊が出てくる可能性もあるという主張をしているのと同じ。だから、数学を駆使し過ぎて間違えた計算結果の 6% を出しちゃいます。﹁30年で 87%﹂というのは、こういう変な場合を除外しています。妊娠10ヶ月でおよそ出産するのと同じように、120 年くらいの周期で東海地震が発生するという話をしているだけです。つまり、1. の主張をしている人は完全無視で良い。 ちなみに答えだけ書きますが、1. の主張が正しいとすると、東海地震は平均で15年に1回程度発生することになります。その時点で常識的に考えておかしいと分かる。 3. で、﹁BPT 分布だからー﹂と言っている人は、ちょっと詳しい人。ただし、本当に BPT 分布で良いのか、周期性が本当にあるのかは賛否両論 (らしい)。 で、赤ん坊の話に戻ると、30時間の最初の1時間で産まれる確率は、30時間のうちどの時間帯に産まれやすいかが分かっていないと計算できない。そこで面倒だから、どの時間帯にも同程度に産まれる可能性があると思いましょう、と。なので、竹中平蔵の言う﹁あえて単純計算﹂すると、30時間で割っちゃいましょうという話になる。 小難しい BPT 分布を持ち出すと、本当は30年で割っちゃいけない。なぜなら、発生確率は遠い将来よりも近い将来のほうが高いと考えられているから。しかし概算をするだけなら30年で割れば十分。それを、さも自分は確率の計算ができる、竹中平蔵は馬鹿だ、あんな奴が大臣をやっていたなんて、と声高に罵声を浴びせる人間は、それこそ厚顔無恥で無知。 ざっくり 3% だろうが 6% だろうが、議論の本筋は変わらない。なので、4. の反応をする人が一番まともだと思います。この手の概算をするときは、そもそも有効数字2桁も必要ないです。87% という値だって、そんなに細かく出るわけがない。2倍くらい間違っていても、どうでも良い。むしろ、数倍は間違えている可能性を前提に、より安全に行動する必要がある。 1. の主張を振りかざして、逆に恥ずかしい発言をしちゃってる人は、例えば﹁平成の龍馬﹂を名乗るお方。この龍馬には絶対ついて行っちゃいけない。駄目、絶対。この記事を鵜呑みにして twitter で retweet してる人もいっぱいいるけど、危険物。 以上。
このうち注目すべきが1つ目と2つ目。説明は省くが、1つ目は間違い。なぜなら、東海地震の発生頻度をポアソン分布と仮定するのがおかしいから*1。2つ目は言っている意味が分からないので間違い。巨大地震の発生確率が毎日 87% なら、誰もそんな地域には住みません。 どんな反応があったかは、togetter のまとめを眺めて下さい。ここで、1. と 2. の反応をしている人は切り捨てて良いです。 以下、難しいことを省いた説明。BPT 分布とかポアソン分布とかの数学用語は忘れて良い。 東海地震の発生確率が、次の30年間で 87%*2 というのは、東海地震が周期性を持つという観測事実に基づいている。周期が 120 年くらいだと言われていて、前回の発生から 120 年は過ぎているので、いつ起きてもおかしくない、という主張がされている。そのため、次の30年は特に発生確率が高いと考えられている。 簡単な少し極端な例えをすると、出産間近の人がいて、次の30時間で赤ん坊の産まれる確率が 87% だとします。そうすると、次の1時間で産まれる確率はいくらですか、という問題と同じ。大雑把な計算をするなら、87% を30時間で割れば良い。竹中平蔵と同じ計算で良い。 1. で﹁ポアソン分布だからー﹂と言っている人は、受精した日にも赤ん坊が産まれるという主張をしているのと同じ。また妊娠 100 ヶ月でも産まれると主張しているのとも同じ。さらには、(双子などを除いて) 何度も何度も 100 回くらい赤ん坊が出てくる可能性もあるという主張をしているのと同じ。だから、数学を駆使し過ぎて間違えた計算結果の 6% を出しちゃいます。﹁30年で 87%﹂というのは、こういう変な場合を除外しています。妊娠10ヶ月でおよそ出産するのと同じように、120 年くらいの周期で東海地震が発生するという話をしているだけです。つまり、1. の主張をしている人は完全無視で良い。 ちなみに答えだけ書きますが、1. の主張が正しいとすると、東海地震は平均で15年に1回程度発生することになります。その時点で常識的に考えておかしいと分かる。 3. で、﹁BPT 分布だからー﹂と言っている人は、ちょっと詳しい人。ただし、本当に BPT 分布で良いのか、周期性が本当にあるのかは賛否両論 (らしい)。 で、赤ん坊の話に戻ると、30時間の最初の1時間で産まれる確率は、30時間のうちどの時間帯に産まれやすいかが分かっていないと計算できない。そこで面倒だから、どの時間帯にも同程度に産まれる可能性があると思いましょう、と。なので、竹中平蔵の言う﹁あえて単純計算﹂すると、30時間で割っちゃいましょうという話になる。 小難しい BPT 分布を持ち出すと、本当は30年で割っちゃいけない。なぜなら、発生確率は遠い将来よりも近い将来のほうが高いと考えられているから。しかし概算をするだけなら30年で割れば十分。それを、さも自分は確率の計算ができる、竹中平蔵は馬鹿だ、あんな奴が大臣をやっていたなんて、と声高に罵声を浴びせる人間は、それこそ厚顔無恥で無知。 ざっくり 3% だろうが 6% だろうが、議論の本筋は変わらない。なので、4. の反応をする人が一番まともだと思います。この手の概算をするときは、そもそも有効数字2桁も必要ないです。87% という値だって、そんなに細かく出るわけがない。2倍くらい間違っていても、どうでも良い。むしろ、数倍は間違えている可能性を前提に、より安全に行動する必要がある。 1. の主張を振りかざして、逆に恥ずかしい発言をしちゃってる人は、例えば﹁平成の龍馬﹂を名乗るお方。この龍馬には絶対ついて行っちゃいけない。駄目、絶対。この記事を鵜呑みにして twitter で retweet してる人もいっぱいいるけど、危険物。 以上。