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古くなったPCを自作NASに変える方法。TrueNAS SCALEを使えば結構簡単に作れる

古いミニPCにTrueNAS ScaleをインストールしてNASにした

 「放置状態の古いPCが家に転がっている」という人は結構多いのではないだろうか。そんな使い道がなさそうなPCを別の用途で有効活用する方法を紹介しよう。

 買い替えで余ったデスクトップPCや、使い道がなくなったミニPCなどを再活用することで、ファイル共有に加え、仮想マシンや各種アプリサーバーを動かすための汎用自宅サーバーとして復活させることができる。今回は、2021年発売のミニPCに無料で使える「TrueNAS Scale」をインストールする方法を紹介する。

第11世代Core i5搭載のミニPCをNASとして活用


  NASPCMINITSFORM2021TL50PCCore i5-1135G712GBPC 

 NAS()1NVMe M.2SATA 2.522.5Gbps×2LANNAS 

 PCOSTrueNAS SCALE8GB(16GB)16GB SSD2(3) 
TrueNAS Scaleには、最低3台のストレージが必要

  PCPC使TrueNAS Scale 

 iXsystemsOSOpen Source Hyperconverged Infrastructure (HCI) solutionNASDockerKubernetes 

  

TrueNAS Scaleのインストール

 では、早速構築していこう。

STEP1:インストールメディアの準備


  TrueNAS SCALENo Thank you, I have already signed up.ISO23.10.2 

 USBRaspberry Pi Imager 
インストール用のISOファイルをダウンロード
Raspberry Pi imagerでインストール用USBを作成

STEP2:インストール開始

 インストールメディアが作成できたら、PCに装着してUSBメモリから起動する。インストーラーが起動したら、インストール先を選択する。

インストール先を選択。画面は説明のために仮想マシンでキャプチャしているため、ストレージが1台しか表示されないが、実際は搭載されているストレージが表示される

  PC256GBM.2 NVMe SSD×1500GBSATA SSD×2256GBNVMe 

 AdminPC 
管理者としてAdministratorを選択してパスワードを設定する
インストールメディアを取り外し、「Reboot System」を選択して再起動する

STEP3:管理画面にアクセスする

 TrueNAS SCALEが起動すると、画面に接続先のIPアドレスが表示されるので、ネットワーク接続されたPCでブラウザを起動し、「https://[IPアドレス]」でアクセスすると、管理画面が表示される。インストール時に指定したアカウントとパスワードでサインインしよう。

起動すると、アクセス先のIPアドレスが表示されるので、ネットワーク上のPCからアクセスすると管理可能になる
管理画面

TrueNAS SCALEをファイルサーバーにする

 TrueNAS SCALEは、前述したようにかなり多機能なため、設定は決して簡単とは言えない。シンプルに共有フォルダを作成するだけでも、それなりの手順が必要になる。まずはファイルサーバーとして利用するための最低限の設定をしておこう。

STEP4:ユーザー作成

 最初にユーザーを作成する(ストレージが先でも構わない)。「Credentials」の「Local Users」から「Add」でユーザーを追加する。利用するユーザーの名前を指定して作成しておこう。

 なお、グループで管理したり、ホームディレクトリを作成したりすることもできるが、今回はこうした設定もすべてスキップしている。必要に応じて設定するといいだろう。

ユーザーを作成する。最低限、フルネーム、ユーザー名、パスワードを設定。後はとりあえず標準のままで構わない

STEP5:プールの作成

 続いてストレージの設定をする。「Storage」から「Create Pool」を選択し、ウィザードに従ってプールを作成する。プールは、物理的なドライブを仮想的なストレージとして管理するためのものだ。

プールを作成する

 今回は、2台のSATA SSDが搭載されているので、これを「Mirror」で構成する。「pool」など名前を設定後、もしも、2台のSSDの容量が異なる場合は「Treat Disk Size as Minimum」を選択することで、少ない容量のほうに合わせて構成される。

 ウィザードではLogやChacheなど、用途ごとの構成もオプションで設定できるが、今回はすべてスキップして、シンプルにデータ用の領域のみを作成した。

今回は、2台のSSDをMirrorで構成する
LogなどのOptionalの設定は今回はすべてスキップして作成

STEP6:データセットの作成

 ストレージが作成できたら、そこにSMB共有用のデータセットを作成する。「Datasets」から作成したプールを選択し、「Add Dataset」から設定する。「Public」など適当に名前を付け、「Share Type」を「SMB」に設定して保存する(圧縮や暗号化などは標準設定でOK)。

作成したプールを選択して「Add Dataset」を実行
「Share Type」で「SMB」を選択する

STEP7:Windows(SMB) Sharesを設定


  SharesWindows(SMB) SharesPath(public)EnabledSave 

 Start SMB ServiceEnable Services 
SMBは標準では無効になっているので「Add」で設定する
作成したデータセットをPathに指定して有効化する

 これで、最低限の設定は完了だ。すべてのユーザーがアクセスできる「public」フォルダが共有された。ネットワーク上のPCからエクスプローラーで「¥¥IPアドレス¥public」にアクセスし、登録したユーザーでログインすれば共有フォルダを利用できる。

 もちろん、組織で使うならグループの構成や共有フォルダごとのアクセス権設定も必要なので、設定してみるといいだろう。ただし、市販のNASのように簡単ではないので、初めての場合はかなり苦戦するかもしれない。

設定完了
ネットワーク上のPCからアクセス可能になる

アプリを追加してみよう


  TrueNAS Scale1 

Redis
Minecraft
Plex
Prometheus
NextCloud

  Planka 

 AppsRefresh ChartsProductivityView All ProductivityPlanka(OK) 
カタログを更新

 アプリをインストールする初回のみ、インストール先のプールをセットアップする必要があるので、「Setup Pool To Install」をクリックする。

初回はインストール先のプールを選択する

 設定は基本的に標準のままで構わないが、管理者アカウントと「BaseURL」のみ手動で設定する必要がある。アプリにサインインするために必要になるので、管理者のメールアドレスやユーザー名、パスワードを設定しておこう。

 「BaseURL」は、アプリにアクセスする際に利用するアドレスで、ドメイン名を利用可能であれば指定しても構わないが、今回はローカルで利用するので「http://192.168.50.227:30062」とTrueNAS ScaleのIPアドレスとポート(少し下にある「Web Port」を参照)を設定した。

管理者アカウントとBaseURLを設定

  CPUPC 

 InstallDeployingRunning 
Runningになれば完了
設定したアドレス(今回は「http://192.168.50.227:30062」)にアクセスすればアプリを利用できる。同じく設定で指定した管理者アカウントでサインインする

本格的なNASとして利用可能

 以上、TrueNAS Scaleのインストールと基本的な使い方を紹介した。最近は市販のNASが高機能かつ使いやすくなっているので、正直NASを自作するのは効率があまりよくない。

 しかしながら、PCを利用することで、拡張性が高く(特にメモリ)、高性能なNASが作成できるため、今回のTrueNAS Scaleのようにアプリを追加したり、仮想マシンを稼働したりできる環境では、リソースに余裕があるPCを利用するメリットがある。

 ミニPCで小型のNASにするもよし、タワー型の自作PCでハイスペックサーバーを目指すもよし、いろいろな構成で楽しめるだろう。