今年のワイヤレスジャパンでは、NTTドコモとKDDIがともに拡張現実︵AR︶アプリを紹介し、多くの注目を集めていた。KDDIが展示した﹁実空間透視ケータイ﹂は、すでにau one ラボでβ版が公開されており、ドコモが﹁HT-03A﹂向けアプリとして展示した﹁直感検索・ナビ﹂も、お試し版が1000ダウンロード限定で配信されるなど、モバイル端末でARが体験できる環境が少しずつ整っている。
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ワイヤレスジャパンでデモンストレーションを行っていた、「実空間透視ケータイ」(写真=左)と「直感検索・ナビ」(写真=右)
さらに、ARアプリとしては、iPhoneやAndroid端末向けに開発が進んでいる﹁セカイカメラ﹂が有名だ。こちらはiPhone版が近くリリースされると言われている。
直感検索・ナビやセカイカメラは、カメラ映像にバーチャルな情報を重ね合わせてディスプレイに表示する。あたかも目の前の空間に情報が浮いているかのような“電脳メガネ”的な画面に、好奇心をくすぐられるユーザーも多いだろう。
一方で、実空間透視ケータイはカメラ映像ではなく3Dマップを使って空間を表現している。カメラ映像を使うタイプに比べると見た目のインパクトは少ないが、実際にデモンストレーションを体験してみると、非常に現実的だと感じた。
実空間透視ケータイに触れてまず驚いたのは、ユーザーの動きに対するレスポンスの速さ。カメラ映像を使ったものはどうしても動きにカクカクした感じがあるのだが、実空間透視ケータイはユーザーの素早い動きにも画面がしっかり追従し、リアルタイムな描写を実現していた。組み込み機器向けのグラフィック用API﹁OpenGL ES﹂を使うことで、高速な描写を実現しているとのことだ。
KDDIの説明員は﹁現実は目で見えているし、必ずしもディスプレイ上に同じ映像を表示する必要はない﹂と話していた。確かにビルや壁の向こうにある情報は、奥行きの分かりやすい3Dマップの方が距離感をつかみやすい。
さらに3Dマップでは、ケータイを持つ角度を自由にできるのも利点だ。カメラ映像を使うタイプは、端末のカメラ部を目線の先に向ける必要があるが、3Dマップなら端末の上下とマップ画面の連動を切ることで、端末の角度に関係なく、水平線の固定された画面で情報を見られる。
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デモでは、サービスによって端末の上下の傾きとマップを連動させるかを切り替えていた。「地球アルバム(β版)」は上下の動きと連動していた(写真=左/中央)が、店舗情報を表示するサービス「MAWARIPO」では、マップの地平線が固定されている(写真=右)
例えば「天井の一部」といったピンポイントな情報には、端末の向きとフルに連動した画面表示が必要だが、店舗や施設の位置ぐらいなら、上下の動きに画面が連動しないほうが使い勝手はよさそうだ。コンテンツの特性に合わせて、そうした挙動を調整できるのが、3Dマップならではのメリットだろう。
3次元をくまなくカメラ映像で“拡張”できることは非常に魅力的だが、処理の負荷や位置情報の精度などを考えると、まだまだソフト、ハードともに改良が必要。そんな過渡期のARにとっては、見た目の斬新さには欠けるが、3D表示というのも現実的な手段だと思った。
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