ThinkPadのキーボードが打ちやすい理由――大和のエンジニアかく語りきThinkPad 600は完全ではなかった?(1/3 ページ)

» 2007年11月14日 00時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]

レノボがキーボードに求める必要条件

堀内氏は1996年からThinkPadのキーボードを手がけ、1998年発売の「ThinkPad 600」以降のほぼ全機種でキーボードを担当している

 レノボ・ジャパンは11月13日、報道関係者向けに大和研究所のエンジニアによる技術説明会を実施した。「ThinkPadキーボード設計の取り組みについて」をテーマに掲げ、同社ノートブック開発研究所 サブシステム技術 機構設計 テクニカルマスターの堀内光雄副部長がキーボード設計におけるこだわりを語った。

 同社がThinkPadのキーボードに求める必要条件は「速く打てること」「タイプミスが少ないこと」「長時間使用しても疲れないこと」の3つで、これらを実現するための重要項目として「キーフィーリング」「キー形状とキー周辺形状」「キー全体のレイアウト」「ポインティングデバイスとの組み合わせ」の4つが挙げられるという。「車にとっていちばん重要なのはエンジンだが、サスペンションがよくないとコーナリング特性が悪くなるし、ブレーキがきかなければ速く走れない。キーボードも同じで、すべての要因を高めなければ、よいものにならない」(堀内氏)

キーの形状に加えて、キーの周辺部も作り込む

画面1:旧式のシリンダー型キーボード

 まず、キーの形状とキー周辺の作り込みについて、キーボードの基本的な構造とともに説明がなされた。画面1は、旧式のシリンダー型キーボードの基本設計を示したもの。旧式のキーボードは厚みがあり(当時はノートPCの薄さが重視されなかった)、キートップ(キーキャップ)を支えるシリンダーが長かったため、キーの端を押してもキートップがふらつくことは少なかった。しかし、昨今のキーボードユニットは6ミリ程度の薄型に仕上げるためにシリンダーが短くなっており、このままではキーの端を押した場合にキーがふらついてしまう。

 そこでThinkPadでは、厚さ1ミリ以下のメンブレンシート回路にラバードームをかぶせて、その上にハサミのように可動するシザーズ(パンタグラフ)を配置した(画面2〜4)。このシザーズを内蔵したおかげで、キーの4隅を押してもキートップが傾くことなく、水平をキープしたままで垂直に下がる仕組みになっている。

画面2:ThinkPadに搭載されるキーボードの原理図(左)。画面3:キーの動作を安定させるシザーズ(中央)。画面4:キーボードの内部構造(右)

ThinkPadに搭載されたキーボードのメンブレンシート回路。右はラバーを装着したもの

画面5:シリンドリカルカーブを設けたキートップ

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 ThinkPad

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ファンクションキーを区切るバリアーは場所によって高さが違う

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