「Windows 7+WinRT=Windows 8」──明らかになるARMが動く“仕掛け”BUILD(1/4 ページ)

» 2011年09月15日 10時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

機能は増えているのにスリムになったWindows 8

 Windows and Windows Live部門プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏だが、同氏の功績はWindows Vistaで悪化したWindows OSの評価を、自らが陣頭指揮したWindows 7で一定水準まで回復させたことだ。普及率で前世代のWindows XPを下回ったWindows Vistaだが、シノフスキー氏によれば、BUILDが始まった2011年9月の時点でWindows 7の利用者数はWindows XPを上回り、Microsoftが長年の目標としていた「打倒XP」をついに達成したと来場者に報告した。

Windows and Windows Live部門プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏。Windows 7以降におけるOS開発の総責任者だ(写真=左)。Windows 7で達成したマイルストーンの数々。シノフスキー氏によれば、BUILDで基調講演を行ったちょうどその日にWindows 7の利用者数がWindows XPを上回ったという(写真=右)

 その成功したOSの後継となるWindows 8の目標を1つ挙げるなら、Windows 7で築いた成果をさらに拡大すること、になる。シノフスキー氏は、Windows 8について「Windows 7からさらに改善され、また、Windows 7で動くアプリケーションのすべては、そのままWindows 8でも動作する」と説明している。

 シノフスキー氏は、Windows 8がWindows 7の延長でありながら“Metro”と呼ばれる新しいユーザーインタフェース(UI)に対応した一方で、過去の資産もすべて引き継いだスーパーセット的な存在である点も強調している。それにも関わらず、OSはよりコンパクトになって、動作は「Windows 7よりかなり改良された」とも説明する。

 基調講演では、同じハードウェア構成のPCで、Windows 7とWindows 8のそれぞれを導入してデフォルトにおけるシステムリソース使用量をタスクマネージャーで比較し、Windows 7(エディションは公開せず。Service Pack 1は適用)のメモリ使用量が404Mバイトなのに対し、BUILDに参加した開発者に配布するWindows 8 Developer Previewのメモリ使用量が281Mバイトに減っていることを示した。

 OS自体はWindows 7から「さらにファット」になっているわけで、それにも関わらずメモリ使用量が減っているというのだ。Windows 7がDeveloper Previewの段階でメモリ使用量が540Mバイトだったことを考えれば、今後登場する正式版のWindows 8で、さらにメモリ使用量が少なくなっている可能性も否定できない。

 このようにメモリ使用量を“抑制”する理由の1つに、Windows 8で初めて対応することになる「ARM搭載デバイス」の存在が挙げられるだろう。少なくても2Gバイトや4Gバイトのメモリを搭載するPCに対し、スマートフォンなど小型デバイスが中心のARMでは、メモリ容量が256Mバイト程度、ハイエンドモデルでも512Mバイトから1Gバイト程度だ。PCとARM搭載デバイスのハードウェアリソースにおけるギャップは大きく、パフォーマンスの差も含めて、Microsoftはあまりにも違いすぎる両者の差をWindows 8で埋めていかなければいけない。

 シノフスキー氏が基調講演で行ったデモで、動作している機材がARM搭載デバイスであると繰り返し強調したのも、「ARM搭載デバイスの非力な性能でWindows 8と対応アプリケーションはまともに動かないのでないか」という不安を払拭するためだろう。

Windows 8はWindows 7よりコンパクトになった。Windows 7のメモリ使用量が、Developer Previewの540MバイトからService Pack 1で404Mバイトになったことを考えれば、Developer Previewで281MバイトのWindows 8も、さらに少なくなる可能性がある(写真=左)。OSをコンパクトにする理由の1つが、ARM搭載デバイスでの動作を意識したものだろう。シノフスキー氏も基調講演で操作するデバイスにARM搭載モデルがあることを繰り返し強調していた(写真=右)

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年06月29日 更新
  1. 約60万円の「Apple Vision Pro」が日本でも発売! 買うかどうか迷っている人に知っておいてほしいこと (2024年06月28日)
  2. 「UMPCが低スペックという概念を覆したい」──テックワンが3in1PC「ONEXPLAYER X1 mini」など国内販売 (2024年06月28日)
  3. 華やかな“Copilot+ PC”売り場、でも「それ、Arm版Windowsですよね?」 “分かっている人があえて選ぶPC”が一般層に猛プッシュされている不安 (2024年06月26日)
  4. インテルが「Lunar Lake」のチップ実物を披露 実は現行「Core Ultra」の直接後継ではない その理由は? (2024年06月26日)
  5. ワコムペン付属の「ASUS ProArt Display PA169CDV」は高級モバイルディスプレイの王道を行くのか? プロ絵師が試す (2024年06月28日)
  6. aiwa、耳をふさがず装着できる軽量設計のパーソナルスピーカー (2024年06月27日)
  7. キッザニア東京で自作PC体験! マウスコンピューターの「パソコン工場」パビリオンに潜入してきた (2024年06月27日)
  8. 米国生まれの「ヨシノパワー」が“固体電池”のポータブル電源に注力する理由 (2024年06月27日)
  9. PFUの“輪島塗”キーボードが復活 能登半島地震で被害を受けた「大徹八井漆器工房」を応援金で支援 (2024年06月27日)
  10. 有線+ワイヤレスでの接続にも対応しタッチ操作も可能! 15.6型モバイルディスプレイ「PROMETHEUS CAST 15.6inch」を試す (2024年06月27日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー