特集 2017年6月22日

ヘボコン、ふたたびアメリカへ~ヘボコン・ベイエリア2017レポート

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インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

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ヘボコンとは、そして忘れられない初渡米

2014 25130
去年開催した世界大会の様子
世界中で開催されているといっても、ふだんは各地の主催者が自由にやっている。僕はあとで写真を見せてもらって、いいねボタンを押したり、このロボ最高!とかってコメントしたりする程度。でも今までに一度だけ、海外に自分で行って大会を主催したことがある。それが、昨年の5月、アメリカでのイベントだ。
昨年の様子
昨年の様子
これがもう、僕にとってはたいそう感動的なできごとだった。自分が始めたイベントが言葉の壁を越えて、海外の人たちが盛り上がっているのを目の当たりにしたのだ。

一生に一度の、忘れられない体験。だった。

実は2回目があった

Maker Faire Tokyo8Maker Faire Tokyo
で、またここに来ちゃった
で、またここに来ちゃった
Maker Faire Bay AreaDIYDIY
今年は巨大ロボもいた
今年は巨大ロボもいた
火を噴く巨大なモニュメントあり
火を噴く巨大なモニュメントあり
子供が自転車をこいで発電した電気で大人がライブをやっている
子供が自転車をこいで発電した電気で大人がライブをやっている
謎のごっついロボットとカジュアルに触れ合う子供
謎のごっついロボットとカジュアルに触れ合う子供
そんな会場内に、ひときわゴチャゴチャしたブースが…
片付けのできない人たちが集まる一角
片付けのできない人たちが集まる一角
ガラクタ…いやロボットが並ぶ
ガラクタ…いやロボットが並ぶ

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進化する材料

使
例えば箱いっぱいのアヒル
例えば箱いっぱいのアヒル
こういったおもちゃを改造してロボットと言い張るのがヘボコンの趣旨。これらは事前にネットで注文して、アメリカに直で届けてもらった。アリババで「electric toy」で検索したものを安い順にソートして、頭から順にカートに入れていく作業。1個3ドルほどである。
これは去年のイベントでロボットの見本として作った通称「犬」。本体である犬のおもちゃ、当時これは茶色やピンク等の単色しかなかったのだけど…
これは去年のイベントでロボットの見本として作った通称「犬」。本体である犬のおもちゃ、当時これは茶色やピンク等の単色しかなかったのだけど…
今年はシマシマやスカート&サングラスがついたものなど、一気に種類が増えていた
今年はシマシマやスカート&サングラスがついたものなど、一気に種類が増えていた

光りながら左右に揺れて踊る!
光りながら左右に揺れて踊る!

商魂 vs 創作意欲


DIY
口から炎でなくメルヘンを吐いている
口から炎でなくメルヘンを吐いている
「箱に詰める」という武装のありかた
「箱に詰める」という武装のありかた
縦に積む。
縦に積む。
Maker Faire7

時にそれはもう神々しさを帯びる(そして尻尾に札)
時にそれはもう神々しさを帯びる(そして尻尾に札)
もう建て増しすぎて元がなんだか分からなくなっている
もう建て増しすぎて元がなんだか分からなくなっている
犬が、板になった!
犬が、板になった!
前提としてヘボコンはロボットとロボットの戦いの場である。しかし今回は、その影にもうひとつの戦いがあった。少しでもおもちゃを目立たせ売りさばきたい中国人の商魂と、アメリカの子供たちのむき出しの創作意欲。それらが力と力でぶつかり合う。ここは二重の意味で、戦場だったのである。

強力な助っ人

3

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この男だ
この男だ
Robot Riot
エイドリアンが見本用に作ってくれたロボット。海賊顔にぐるぐるパンチが最高。ダンボールのストッパーをはずすと走る
エイドリアンが見本用に作ってくれたロボット。海賊顔にぐるぐるパンチが最高。ダンボールのストッパーをはずすと走る
エイドリアンが友人に託されたというロボット。友人は動物園勤務で、骨はすべて本物!
エイドリアンが友人に託されたというロボット。友人は動物園勤務で、骨はすべて本物!
マイクを握るエイドリアンの雄姿
マイクを握るエイドリアンの雄姿
雰囲気だけでも動画でどうぞ
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いったん広告です

結果発表!

発表の前にまずルールのおさらいを。ヘボコンはロボット相撲だ。相手を押し出したり倒したりしたら勝ち。
トーナメントで優勝が決まるが、それ以上に尊い賞として、投票で決める「最も技術力の低かった人賞(最ヘボ賞)」というのを設けている。

今回は3日間の会期のうち、2日間に渡り6回のトーナメントを開催した。

第1トーナメント

優勝:Hannah

瓦礫の山からかろうじて出てきたみたいな衝撃的なビジュアル。
瓦礫の山からかろうじて出てきたみたいな衝撃的なビジュアル。
ボディの上に組まれた割りばしの構造がわからなくて、ずっと見ているとだんだん不安になってくるこのロボ。決勝戦では準優勝機と激戦を繰り広げた。
かわいすぎる激戦。
かわいすぎる激戦。
vs

最ヘボ賞:Ingrid

今回髄一の不思議マシン。会場で配布した動力用のおもちゃが使われていないように見え、謎のテクノロジで動いている。
今回髄一の不思議マシン。会場で配布した動力用のおもちゃが使われていないように見え、謎のテクノロジで動いている。
スーッと音もなく相手の懐に入り込んでいくのだが、謎のテクノロジは馬力がなく残念ながら押され負け。
ちなみにいま映像を確認したところ、実はアライグマの後ろで小さなファンが回っており、風の力で動いていたようだ。

第2トーナメント

優勝:Mark

怖い
怖い
血のり(絵の具)のついた板にカッターナイフの刃を突き立てているという凶暴なマシン。野蛮な見た目ながら、リモコン操作でうまく立ち回るなど狡猾な戦い方を見せた。完全に悪役ポジションながら優勝してしまい、勝者インタビューには「I feel guilty」(罪悪感)と答えた。

最ヘボ賞:Karen

ロボット名は「猫」。概念である。
ロボット名は「猫」。概念である。
2退

第3トーナメント

優勝:Jenna

クラブ映えするタイプ
クラブ映えするタイプ

最ヘボ賞:Lucas

見てくれこの長さを
見てくれこの長さを
ほぼ土俵を縦断するいきおいの長いボディ。かっこよく解釈すれば槍のようだが、実戦においてはただの棒に過ぎなかった…ならまだマシだった。実際にはこの棒は、押し出す際の「持ち手」として作用。非常に便利な形で敵ロボットに押し出された。
おまけ。こちらは受賞は逃したものの健闘したロボット。おもちゃでなくモーター(ギア入りで強い)を2つ使用、乾電池と銅線でリモコンを自作するなどを作るなど高度な工作だった。(結局負けたんだけど)
2使
入れ歯との対決
入れ歯との対決

第4トーナメント

優勝:Drishti Patel

扇子と基盤を組み合わせたサイバーパンクなマシン
扇子と基盤を組み合わせたサイバーパンクなマシン

最ヘボ賞:Sopha&Julia

女の子二人組が作った、尻尾がモップになった犬。
女の子二人組が作った、尻尾がモップになった犬。
この犬、印象に残った試合といえば…
2体絡み合って、ぐるぐるとダンスを踊り続けたこの試合。
2体絡み合って、ぐるぐるとダンスを踊り続けたこの試合。
何回転もするうちにだんだん回転の中心がずれていき、敵がコースアウトする形で勝利した。ちなみにこのときの対戦相手が
このお二人
このお二人
子供を相手に試合前の挑発から始まり、最後は帽子をテーブルに叩きつけて帰っていって、悪役としての演出が最高だった。

第5トーナメント

優勝:Justin

馬力の強い電車のおもちゃに緩衝材を搭載したロボ
馬力の強い電車のおもちゃに緩衝材を搭載したロボ
最初の当たりでは、緩衝材で相手をやさしく包み込む。そしてそのままやさしく包み込んだまま、グイグイ押して相手を場外に追いやっていく。暴力だけが強さではないと教えてくれる、教訓あふれるマシンであった。

最ヘボ賞Louis

使ってる材料は優勝機と同じ
使ってる材料は優勝機と同じ
優勝したJustinのマシンと同じく、電車2台を使用したロボ。論理的にはそれに匹敵する馬力を持つはずだが、実戦ではなぜか同じ電車を1台だけ使った相手に押し負け、敗退。性能を決めるのはエンジンがすべてではないのだ。

第6トーナメント

優勝:Soma

左が前。機能としては前進オンリーながら、貪欲な設計
左が前。機能としては前進オンリーながら、貪欲な設計
ハの字に広がったアームで相手を自分の正面に誘導し、そのまま馬力を生かして押し出す、という作戦。その作戦自体も有効に機能したのだが、それ以上に…
フワフワの羽毛の効果で敵機との境目があいまいになり、まるで相手を食って取り込んでいるようなおそろしさがあった。
フワフワの羽毛の効果で敵機との境目があいまいになり、まるで相手を食って取り込んでいるようなおそろしさがあった。
さて次は最ヘボ賞の紹介だが、その前に、ちょっと別のロボットを見てほしい。
Nachaという女の子のロボット
Nachaという女の子のロボット
ベースのおもちゃがお風呂用の泳ぐアヒル。足を空中でバタバタさせるのみで、地上では移動能力がない!それを踏まえて最ヘボ賞の紹介に入ろう。

最ヘボ賞:Nina

こちらが最ヘボ賞に輝いたNinaのロボット。
さっきとは別のアヒルを使用している
さっきとは別のアヒルを使用している
NachaNacha

1Yui
試合展開とともにボロボロ壊れていくさまが圧巻だったうえ、最後の疾走(というか失踪というか)も最高であった。

ヘボコンの不思議

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今回のヘボコンで、MakerFaireの母体である雑誌「Make:」のエディターズ・チョイスを4つ、教育によいプロジェクトに送られるベスト・イン・クラスをひとついただきました!(自慢です)

今回のヘボコンで、MakerFaireの母体である雑誌「Make:」のエディターズ・チョイスを4つ、教育によいプロジェクトに送られるベスト・イン・クラスをひとついただきました!(自慢です)


そして、これって今回のイベントに限った話ではなくて、ヘボコンがここまで世界に広がったこと自体も、あんまり僕の力ではない気がしている。世界のヘボコンを盛り上げてくれたのは、世界各地に散らばったオーガナイザー達だ。僕はそれを「いいね」ボタンを押しながらぼんやり眺めてただけである(僕も自分のイベントはやったけど)。

ヘボコンは自分が立ち上げて今も自分が運営しているプロジェクトだけど、それでいて、自分も参加者の一人に過ぎないという感じもする。無責任な感覚かもしれないけど、実際に僕が何もしなくても外国でイベントは月10本ペースでどんどんあるし、ヘボコンの歌ができたり、新しい競技が考案されたり、勝手にどんどんいろんなことが起こっていくのだ。不思議。3年たってもいまだに不思議だ。

これがずっと続けばいいな、と思う。続くようにうまくコントロールしなきゃいけないのはやっぱり僕なんだろうけど。がんばろう。

おしらせ

8/5~6(土・日)に開催されるMaker Faire Tokyoでもヘボコンを開催予定!
近日中にデイリーポータルZにて正式告知します。

その他、ヘボコンの最新情報はFacebookグループにて!

おまけ。当日のタイムラプス動画です。アメリカの夜明けも見られます
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