京都・祇園祭で富裕層インバウンド客向け特等席でひと悶着
日本三大祭りのひとつ京都・祇園祭のあり方を巡って、地元でひと悶着が起きている。京都市観光協会は昨年より、高額な「プレミアム観覧席」の販売を開始した。今年も同様の席を設けようとしたところ、八坂神社の宮司が「祇園祭はショーではない」として猛反発したのだ。
京都は空前のインバウンド需要が続く。市は、祭りを維持するために富裕層を取り込みたい意向を示しているが、寺社の思惑とは必ずしも一致していない。観光イベントと宗教行事はどう折り合いをつけていくべきか。
祇園祭は例年、7月の古都でひと月間にわたって開催される盛大な祭りである。﹁コンチキチン﹂の祇園囃子の音色と、豪華絢爛の山鉾が繰り出されるさまは、実に壮観だ。東京の神田祭、大阪の天神祭と並び、日本三大祭の一角をなす。また、葵祭、時代祭とあわせて京都三大祭としても知られている。
祇園祭のはじまりは869︵貞観11︶年まで遡る。京都に疫病が流行し、人々は祇園精舎の守護神・牛ごず頭てん天の王うの祟りだと畏れた。そして、現在の二条城の南側にある真言宗寺院﹁神泉苑﹂に当時の国の数である66の鉾を立てて﹁露払い﹂とし、祇園社︵明治期に八坂神社として再編︶の神輿を迎えたのが始まりとされている。祇園祭は神仏習合の祭りなのだ。
戦後の高度成長期には、観光促進と交通渋滞緩和のために、期間が縮小。本来の祇園祭の姿である前さき祭まつりと後あと祭まつりを合同にして、17日に祭りのハイライトである山鉾巡行がまとめて実施されていた。ことわざの﹁後の祭り﹂とは、﹁もはや手遅れ﹂という意味で使用されるが、祇園祭の後祭が語源とも言われている。
2014︵平成26︶年からは、前祭・後祭の両方が、49年ぶりに復活した。かれこれ半世紀が経過し、このままでは祭り本来の姿が永遠に失われてしまうという危機感などから、元の前祭・後祭のかたちに戻そうということになったのだ。
コロナ禍では3年連続で山鉾巡行は中止に。長期間、祭りが中断すると、資金や技術の継承などが行き詰まってしまう。コロナ禍が開けた後の祇園祭はインバウンド急増の後押しもあって、大いに盛り上がっている。昨夏は82万人もの集客があった。今年はさらに増えることが予想される。
京都市観光協会は祇園祭の保全・継承のための収益源確保などを目的にして昨年、1席最高40万円の﹁祇園祭プレミアム観覧席﹂を発売した。祇園祭のハイライトである山鉾巡行のある7月17日、河原町通と御池通りが交差する南西角の一等地で観覧できるとあって、大変な話題になった。