2015.02.25

「文化が違うから分ければよい」のか――アパルトヘイトと差異の承認の政治

亀井伸孝 文化人類学、アフリカ地域研究

社会 #アパルトヘイト#曽野綾子

本論の概要








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産経新聞コラムとその余波


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第一の誤謬:わずかな事例を「人種」と結びつける悪意






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第二の誤謬:「文化による分離」の素朴さが孕む危険性






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アパルトヘイトの成立を後押しした人類学

白人とそれ以外の住人を、居住地、参政権、結婚、教育、職業などのあらゆる側面で分離したアパルトヘイトは、「前近代的な差別的慣行の残存」のイメージで見られることがあるかもしれないが、そうではない。20世紀に入って次第に強化され、20世紀中葉に完成した、近代国家における法に基づいた制度的な差別である。この政策が導入された背景には、オランダ系移民をルーツとする貧困白人層(プアホワイト)の救済という問題があった。

アパルトヘイトを推進した白人政権は、もちろん政治・経済的な側面を計算し尽くして、計画的にこれを導入したが、この政策に対して文化面での装飾を施し、人びとを同意へと誘った役割を果たしたものの一つに、イギリス系の社会人類学の存在があった(注:「文化人類学」と一般に呼ばれる学問であるが、イギリスではしばしば「社会人類学」の呼称が用いられる)。

この経緯について、明快な指摘を行っている著作を、以下に引用する。

「当時(引用者注:居住区の隔離が法制化されていった20世紀初頭)の隔離政策のブレーンとして、「原住民」の境遇に同情するイギリス系の知識人が積極的に利用された」

「白人権力による征服と抑圧、さらには部分的な同化の容認によって、伝統的なアフリカ人社会は崩壊の危機に瀕していた。白人社会と伝統的なアフリカ人社会を引き離しておくことで、それぞれの集団は、それぞれの価値観に従って生存していくことができる。こうした考え方は、「文化相対主義」を信奉し「原住民の伝統文化の保護」を求める当時の人類学者によって、強く唱導された。」(峯, 1996: 124)

人種による隔離を唱導していた人びとの思想的な立場はさまざまであり、その中にはたとえば人種と社会を明白に序列化してとらえる進化主義者や社会ダーウィニズムの信奉者なども存在していたが、同時に、文化相対主義を唱えるリベラルな人びとが存在していたことが指摘されている(Dubow, 1995)。

たとえば、「文化的適応(cultural adaptation)」ということばが、政治的な場面で称揚され、広く用いられた。「バンツー文化(Bantu culture)」(引用者注:黒人住民の文化)は認知され、奨励されるべきだとし、「原住民の義務とは、黒いヨーロッパ人になることではなく、自らの理想と文化をそなえたよりよい原住民になることである」と述べる者もいた(Dubow, 1995: 162)。

こうした言説が、アパルトヘイトの成立と強化にどのように加担したかについては、たとえば以下のような指摘がある。

「人類学者が人種隔離政策を積極的に提唱したわけではないが、彼らの知的営みは、隔離政策に理論的根拠を与えるものとして、南アフリカ連邦の官僚と政治家に大いに活用された。」(峯, 1996: 124)

当時、強制的な移住や隔離居住区の設置に対して、疑問を抱いたり、心を痛めたりする人びとが一定数存在したことも考えられる。しかし、自他の文化の本質的な差異を強調し、それを承認しようとする、一見して「良心的で、多様性に対し理解を示す」言説が、隔離政策を正当化し、異論を封じ込める側の陣営にいたことは明らかである。少なくとも、文化人類学は、この隔離政策強化の時代にあって、明快な否を唱えてはいなかった。

バンツー教育:黒人には黒人の言語を与えよ


1999 =  2004

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南アフリカの手話通訳者の事件


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二種類の差別:「同化型」と「隔離型」




assimilationségrégation2Taguieff, 1987








同化と隔離のはざまで:手話をめぐる共存の課題




1920, 1995; , SYNODOS 2015217

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異なりつつも、確かにつながり続ける社会へ








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(2015217).

NPO (2015213).

 (Facebook).

Session-22(2015217).

1: SYNODOS (2015217).

. 1995. : 23(3). 354-362.

 (Facebook).

: 2015211. 7.

, . 1999=2004. : .

. 1996.: : .

Dubow, Saul. 1995. The elaboration of segregationist ideology. In: Beinart, William and Saul Dubow eds. Segregation and Apartheid in Twentieth-Century South Africa. New York: Routledge. 145-175.

Taguieff, Pierre-André. 1987. La force du préjugé : essai sur le racisme et ses doubles. Paris: Edition La Découverte.

 

Apartheid MuseumJoao Vicente

http://urx.nu/hK9h

プロフィール

亀井伸孝文化人類学、アフリカ地域研究




2017EHESS

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