概要
﹁激安の殿堂﹂でおなじみのドン・キホーテから税抜き4980円で発売されたアクションカムを分解しました.
深センでの1万円,3000円,700円,秋葉原での2700円なアクションカムと分解してきたし,そろそろ他のガジェットの分解もやらないとなあと思って後回しにしておくつもりだったのですが,なんと﹁ニコ技深セン観察会﹂OBの有志の皆様から支援を頂いたので︵本当にありがとうございます!︶,せっかくだし勢いのあるうちに分解してしまおうと発売から4日目の朝イチでドン・キホーテに駆け込み,入手・分解しました.
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私が行ったドン・キホーテでは,デジカメ売り場に﹁緊急入荷・次回入荷未定!﹂との広告とともに,1台だけこの箱ごと天井からぶら下がって展示されていました.
店員さんに在庫はあるかと聞くと赤以外はあるとのことで,迷彩はクオリティが低く,赤と黒ばかり売れていくとのことでした.
ドン・キホーテのプライベートブランドであるらしい”ACTIVEGEAR”のロゴはシールで貼ってあるのかと思いきや,印刷でした.おもて面は上部の﹁全天候型﹂という部分だけがシールでした.
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横には特徴と付属品が描かれていました.
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裏面には仕様一覧の他に問い合わせ先などがかいてありました.﹁ティーズネットワーク株式会社﹂が輸入者ということのようです.
中ほどの自撮り棒の説明だけシールとなっていて,元々は何だったのか気になり剥がしてみたところ,シールの下には3段階伸縮,最大49.5cmの自撮り棒の説明が書いてありました.箱を作った後に変更したのでしょうか.
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自撮り棒以外の付属品は至って普通のアクションカムの付属品という印象でした.自撮り棒はどこでも見かける安っぽい銀色のものではなく,黒塗装がされており好印象です.
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説明書もざっと読んでみましたが,特に変なところはありませんでした.
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1万円のものはボタンの右下に,3000円のものはボタンの右横にインジケータのLED用の透過パーツが配置されていますが,今回のものと700円のものはそのような穴はありませんでした.また,今回のものは電源ボタンのロゴがプライベートブランドのものに変更されています.
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横から見てみると,1万円アクションカム以外はレンズの飛び出し量が少ないのが一目瞭然です.
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また,底面のバッテリーホルダーの蓋は可動式の爪タイプではなく,樹脂の弾性変形を利用したタイプでした.
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側面部も至って普通のアクションカムといったところでしょう.
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背面にある画面は1.5インチと小さめです.分解レポート初の1.5インチモデルです.また,左端の透明部分はインジケータLED部です.この形状は初めてだと思います.
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電源ボタンで長押しして起動し,設定画面を出したところです.今までのアクションカムとはUIがかなり異なりました.見た目もそうですが,一番わかりやすいポイントは設定画面の出し方です.
今まで分解したアクションカムは電源ボタン短押しで動画→静止画→再生→設定と順に遷移していくものが多かったのですが,このアクションカムは電源ボタン短押しでは動画→静止画→再生の3状態のみを遷移するようになっていて,設定はそれぞれの状態で”OK︵シャッター︶”ボタンを長押しするという操作で呼び出すという形式でした.きちんと,動画モードで設定を呼び出すと動画に関係する設定が,静止画モードで設定を呼び出すと静止画に関係する設定が…というように,モードと設定の対応関係がわかりやすい点は親切に感じました.
また,メニューの日本語についても変なところはなく,その辺のチェックはきちんとしている印象を受けました.
設定のツッコミどころは,何故か起動音を3種類から選べるといった点でしょうか.終了時の音は選べず,ビートの効いたメロディが流れます.一体どうしてここを選べるようにしたのか…
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写真を見てもらえば分かるように,いつも通りのバッテリーでした.バッテリーを引き出すためのタブ︵2枚目・3枚目の右側︶の貼り合わせが悪く,粘着面が表に出てきてしまっていることや,3枚目の写真にあるようにちょっとシールが剥がれていたりした点は若干作りの雑さを感じさせます.
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一方,フロントパネルを外して出てきたスイッチ基板は配線の付け根部分が樹脂で保護されていたりと,振動対策はきちんとしている印象を受けました.また,基板には”KW8W9_PWRkey_V1.0″,”20151022″などの表記がありました.また上部のケーブルとの接続部と基板右端の未実装パターンを見るとLEDも取り付けられるような構成になっています.この部分にLEDを取り付けると3000円アクションカムと同じ位置にインジケータが来るようになるということだと思います.また,毎度のことですが筐体パーツのくぼみが電源スイッチの下にも続いています.こちら側にLED用の基板を用意すれば,1万円アクションカムと同じ位置にインジケータが来るということになるわけです.
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おもて面のレンズを囲っているプラパーツは爪で固定されているだけで,簡単に外すことができました.また,今までに分解した2インチモデルのLCDは横方向にフレキシブル基板が来ていましたが,今回のものはLCDは筐体下側にフレキシブル基板が来るような配置でした.
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背面から開いていくとこちら側が最初に見えるわけですが,いきなり登場した”TOSHIBA”のロゴに驚いてしまいました.
TOSHIBAのロゴがついているのはTC59SM716AFTL-80という﹁ただの(=DDR等ではない)﹂SDRAMです.1990年代後半から2000年代前半に自作PCをやっていた方は記憶があるかもしれませんが,あのPC100とかPC133のDIMMに載っていたような汎用のメモリICです.末尾の”-80″がクロックサイクルの最小値が8nsであることを示しているので,逆数を取ると125MHzとなり,PC133では使えずPC100ならOK,というメモリICということになります.︵オーバークロックしたら動いちゃった,とかよくありましたが︶
現在,SDRAMといえばDDR(Double Data Rate)というより高速にデータを転送できる規格とその後継規格のものが一般的になっていて,﹁ただの﹂SDRAMは普通のパソコンでは使われなくなっています.アクションカムでも3000円のものや1万円のものに搭載されていたメモリはDDR3 SDRAMでした.そんな背景もあり,現在﹁ただの﹂SDRAMはじわじわと製造するメーカーが減ってきているという状況です.
さて,DRAMといえば過去の日米半導体摩擦の火種の一つであったりと,日本の半導体メーカー各社の主力製品であった時期もあった半導体製品でもあるのですが,DRAMメーカーはその後倒産や合併などで大幅に淘汰されていったことをご存じの方も多いかと思います.東芝のDRAM部門も例外ではなく,2001年の12月にはMicronに事業を売却することを発表しています.ということは,このSDRAMは一体いつ製造されたのかという疑問が湧いてきます.
SDRAMの表面を見てみると,”JAPAN”の刻印の上に”0132KAD”という刻印があります.これはおそらく製造管理用の番号でいわゆる﹁デートコード﹂と呼ばれている日付を含む番号だと考えられます.”0132″とあるので,2001年第32週の製造ということになります.なんと16年前のICが今をときめく︵?︶アクションカムの裏方だったのです.
その他の部品は殆どがこれまでに登場した部品になっています.気になったのは刻印が”LTH7″となっているバッテリーチャージャーICです.文字の刻印の下の丸印の位置が同じ”LTH7″とマーキングされた部品を使っている2700円アクションカムと異なっています.AliExpress等で検索するとマーキングの字体が違うものなども出てくるので,互換品︵おそらくは無許可のデッドコピーでしょうが︶が出回っているのかもしれません.
“A19T”という表記のある3本足の素子は調べたところSi2301DSまたはAO3401のどちらか,という結論になりました.どちらもP-Channel MOSFETで,中国ではよく使われている品種なので,どちらでも大した差はないかと思います.おそらく電源のON/OFFあたりに使われているのだと思います.
FlashメモリはまたしてもSPI Flashなので,一通り遊んだらデータの吸い出しにも挑戦してみようと思います.FlashメモリのメーカーがMKというメーカーなのも2700円アクションカムと同じ点です.︵容量は異なりますが.︶
LCDのフレキシブル基板が筐体下側から出ていたと先ほど書きましたが,それに対応するように基板側コネクタも下側からのケーブルを受けるように水平に取り付けられていました.700円アクションカムや2700円アクションカムもこの向きにコネクタを取り付けられるような空きパターンが存在していましたが,それらのパターンは1.5インチのLCDを取り付けるためのものだと言えそうです.
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おもて面の右上には”K71_Main_V3.0 20160405″とあります.改版されていることもあってか割と最近の日付だという印象を受けました.
おもて面は受動部品は多いですが,ICは1つだけです.左側に鎮座するLQFP128ピンパッケージのICは台湾iCatch TechnologyのSPCA1521A-HL091というSoCです.データシートは残念ながら見つけることができませんでしたが,インターネット上のドライブレコーダー分解記事などを見ると2013年頃にはすでに存在したSoCのようです.こちらも一番下の行がおそらくデートコードで,2017年第06週製造だと思われます.iCatch TechnologyのSoCは3000円アクションカムにも使用されていましたが,こちらはDDR3 SDRAMが接続可能なかなり新しめのSoCでした.
バッテリーのそばの3ピンの素子はダイオードアレイのBAT54Cでした.電源の逆流防止にしては非力な気がしますが,この位置だとやっぱり電源関係かなあという気もします.
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カメラモジュールのレンズとレンズマウントは樹脂できちんと固定されていましたが,デザインナイフで軽く削ってから強く回すときちんと回転し,イメージセンサーを観察することができました.残念ながらメーカーや型番のヒントになる情報はありませんでしたが,かなり横長なセンサーを使っていることがわかりました.アクションカムの仕様を見ると静止画は4:3のアスペクト比となっていますが,一部を切り出して使っているのでしょうか…?︵有効画素エリアがどこからどこまでかにもよりますが.︶
センサーのサイズ自体は700円アクションカムや2700円アクションカムに比べて大きく,通電して背面のLCDで見た印象も悪くないのでそれなりのイメージセンサーを使っているのだとは思います.
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最後にLCDモジュールです.
フレキシブル基板には”FY15001H2″,ケース部には”FY15001H YSH 2017-06-12″とありました.”FY15001H2″というLCDモジュールは見つけることができなかったのですが,“FY15001-2”というモジュールを見つけることができました.それによると画素数が480(RGB合計)*240ピクセルというモジュールのようです.顕微鏡での画素間隔の観測結果と表示領域の寸法からざっくり計算した結果もほぼ同様だったので,この推測は正しいかと思います.
注意
本分解レポートは分解を推奨するものではありません.また,このレポートを参照した結果生じたいかなる損害についても筆者は責任を負いません.外箱
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付属品
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外観
まず,値段順に1万円,今回のもの,3000円,700円と並べてみました.![](https://t-techlab.com/wp-content/uploads/2019/10/DSC_0059-e1570392423246-1024x260.jpg)
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本体の分解
さて,ここからは本体の分解です.分解の手順は今までと完全に同じで,背面パネルは基板を保持している筐体と目隠し板の貼り合わせ,フロントパネルは爪で固定となっていました.![](https://t-techlab.com/wp-content/uploads/2019/10/DSC_0080-e1570392729822-1024x691.jpg)
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基板うら面
さて,皆様お待ちかねの基板チェックです.まずはうら面︵カメラセンサのない側︶です.![](https://t-techlab.com/wp-content/uploads/2019/10/back-2-1024x583.png)
![](https://t-techlab.com/wp-content/uploads/2019/10/back-2-1024x583.png)
基板おもて面
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LCDモジュール
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