tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

リーマン面の定義

最近、寺杣先生の「リーマン面の理論」という本を勉強しています。

リーマン面の理論

リーマン面の理論

  • 作者:寺杣友秀
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





tsujimotter







定義

定義:リーマン面
 X を第二可算公理を満たす位相空間で連結かつハウスドルフであるとする。

 X のある開被覆  X = \bigcup_{i \in I} U_{i} と、各  i \in I に対して  \mathbb{C} の開集合への同相写像

 \varphi_{i} \colon U_{i} \to \mathbb{C}

を考える。

 X \{(U_i, \varphi_i)\}_{i \in I} の組が次を満たすとき、 (X, \{(U_i, \varphi_i)\}_{i \in I})リーマン面であるという:

任意の  i, j \in I に対して、 U_{i} \cap U_{j} \neq \emptyset ならば
 \varphi_{j}\circ \varphi^{-1}_{i}\colon \varphi_{i}(U_{i} \cap U_{j}) \to \varphi_{j}(U_{i} \cap U_{j})

は正則関数

※単に「 X はリーマン面である」ともいう。



  X  X




 X は位相空間


 X 

 X  X 


 X は第二可算公理を満たす

 X の開集合全体を  \mathcal{O} として、そのある部分集合  \mathcal{B} をとります(「 X のいくつかの開集合」を元とするような集合)。 X の任意の開集合  U が、 \mathcal{B} の部分集合  \mathcal{B}_0 の合併によって表せるとき、つまり

 U = \bigcup_{B \in \mathcal{B}_0} B


 \mathcal{B}   X X 

 X  X  X   \mathcal{O} \mathcal{O}   \mathcal{O} \mathcal{O} 使  \mathcal{O}




 X は連結


 X   \emptyset

 X   X  \emptyset X 

連結の定義から「連結」のイメージが湧きづらいかもしれません。同値な定義として、 X の任意の開集合  U, V について

 U \neq \emptyset, \; V \neq \emptyset, \; X \subset U \cup V ならば  U \cap V \neq \emptyset


 X 


2  X  X

22  X


 X はハウスドルフ

位相空間  X がハウスドルフであるとは、 X の任意の2点  x, y に対して、 U_x \cap U_y = \emptyset となるような  x, y の開近傍  U_x, U_y が存在するということです。

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「2点が近傍によって分離できる」というのは素朴でイメージしやすい性質ですが、 X がハウスドルフであることを示すのは簡単ではない場合が多そうです。

 \bigcup_{i \in I} U_{i} X の開被覆


  X X   \mathcal{U} = \{ U_i  \mid i \in I \} \mathcal{U}  I 




 \mathbb{C} の開集合への同相写像  \varphi_{i} \colon U_{i} \to \mathbb{C}

上で定めた開被覆の各開集合  U_i に対して、「 \mathbb{C} の開集合への同相写像  \varphi_{i} \colon U_{i} \to \mathbb{C}」とは、 \mathbb{C} のある開集合  V_i に対して、同相写像

 \varphi_i \colon U_{i} \to V_i

  U_i  \varphi_i \colon U_i \to \mathbb{C}  (U_i, \varphi_i)  \{(U_i, \varphi_i)\}_{i \in I}

  \varphi_i  \mathbb{C} \mathbb{C}  X  \varphi_i   \mathbb{C}
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 X  X 

ここは僕が最初に誤解したポイントでした。座標近傍系はあくまで「今考えている開被覆に対して」定めればよいのであって、その開被覆に属さないような「任意の開集合に対して」定める必要はないということですね。



 \varphi_i  \varphi_i 3


 \varphi_i 

 \varphi_i 

 \varphi_i^{-1} 





 \varphi_j \circ \varphi_i^{-1} \colon \varphi_i(U_i \cap U_j) \to \varphi_j(U_i \cap U_j) は正則関数


 X 

  U_i, U_j U_i, U_j   \varphi_i, \varphi_j  U_i \cap U_j  \varphi_i, \varphi_j2

 U_i \cap U_j   \varphi_i, \varphi_j  \varphi_i(U_i\cap U_j), \varphi_j(U_i\cap U_j)  \mathbb{C} U_i \cap U_j 
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よって、次のような合成写像を考えることができます。 \varphi_i の逆写像  \varphi_i^{-1} によって  \varphi_i(U_i \cap U_j) U_i \cap U_j に戻します。さらに、 \varphi_j によって  U_i \cap U_j \varphi_i(U_i \cap U_j) に写します。この合成写像を

 \varphi_j \circ \varphi_i^{-1}\colon \varphi_i(U_i \cap U_j) \xrightarrow{\varphi_i^{-1}} U_i\cap U_j \xrightarrow{\varphi_j} \varphi_j(U_i \cap U_j)

とします。

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構成からわかるように、 \varphi_j \circ \varphi_i^{-1} \mathbb{C} の開集合から  \mathbb{C} の開集合への写像となっていますね。つまり、単なる複素関数になります。

条件⑦では、複素関数  \varphi_j \circ \varphi_i^{-1} が正則であることを要請しているというわけです。

リーマン面と多様体の関係




  \mathbb{C}  \mathbb{R}^n n   n \mathbb{C}   \mathbb{R}^22

 \mathbb{C}   \mathbb{C}^n  n1


おわりに


  X

  X = \mathbb{P}^1





2020.12.24追記

リーマン面の定義について誤解があった部分を修正しました。

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2021.03.07追記

リーマン面の定義に「連結」の条件が入っていなかったので、追記しました。合わせて連結性の定義の説明を追記しました。

2021.03.08追記

「局所座標系」と書いていた部分を「座標近傍系」という呼び方に変えました。局所座標系はまた別の概念を呼ぶときに使いたいと思います。