Macで読書

　青空文庫の﹁読書ガイド﹂をMac向けに特化し、情報を充実させたものがこの﹁Macで読書﹂です。Windowsには﹁テキストビューワー﹂のページにあるように、読書用のソフトウェアが数多く開発されていますが、Mac用はほんのわずかです。しかし、Macintoshでも工夫しだいで快適な読書が楽しめます。自分のやり方を以下にまとめてみました。少しでもお役に立てれば幸いです。


(一)テキストを読む

(二)HTMLを読む

(三)TTZ・ドットブックを読む

(四)エキスパンドブックを読む

(五)PDFを読む

(六)番外‥iPodで読書

1．テキストを読む

　青空文庫のテキストの多くはZIP形式で圧縮されています。ファイルをダウンロードしましたら﹁StuffIt Expander﹂などのソフトウェアで解凍します。すると﹁作品名.txt﹂というテキストファイルができます。︵﹁作品名﹂の部分は、個々の作品によって違い、通常は半角のアルファベットで表記されます。たとえば夏目漱石﹁こころ﹂のルビありテキストでしたら﹁kokoro_ruby.txt﹂のようになっています。詳しくは青空文庫の﹁ファイルのダウンロード方法、解凍方法﹂を御覧ください。︶

　旧MacOSに標準でついているSimpleTextでは32KB以上のサイズのテキストファイルは開けませんが、Jedit、 iText、mi、YooEditといったテキストエディタや、AppleWorks、Microsoft Word、EGWORDといったワープロソフトなら32KB以上のファイルも開けます。※MacOSXに付属のテキストエディットではファイルサイズの制限はありません。

　青空文庫のテキストファイルは、改行コードが﹁CR+LF﹂というWindows︵MS-DOS︶の形式で保存されています。Macでは改行に﹁CR﹂だけしか使いませんので、余分な﹁LF﹂が改行の冒頭に記号として表示される場合があります。Jedit、miなどのテキストエディタでは、改行形式を自動で判定して余計なLFを非表示にしたり、ファイルを保存するとき改行形式を選択できたりします。


●Jedit

●iText

●mi

●YooEdit


︻豆知識︼
　CRとはCarriage Return︵キャリッジリターン︶、LFとはLine Feed︵ラインフィード︶の略で、もともとは英文タイプライターで﹁行頭復帰﹂﹁行送り︵改行︶﹂を行うためのキーから来ています。標準的な改行コードは、MacOSでは﹁CR﹂、Windowsでは﹁CR+LF﹂、UNIXでは﹁LF﹂を使います。MacOSXでは、システムの基盤がUNIXになりましたので、﹁LF﹂が主流になっていくと思われます。ちなみにMacOSXではWindows用のTrueTypeフォントも利用可能です。

TTVブックリーダで読む

﹇注意﹈現在﹁TTVブックリーダ for Java﹂は入手できなくなっています。作者のかたのサイトも無くなっています。Windows、ポケットPC、Palm用の﹁TTVブックリーダ﹂は﹁ebook-salon﹂のサイトから入手できるようです︵ユーザー登録が必要。﹁パブリ﹂ユーザーのかたはパブリからどうぞ︶。

　原田昌知さんが作成された﹁TTVブックリーダ for Java︵注‥リンク切れ︶﹂というソフトを使うことで、縦書きで快適に読書ができるようになります。使用するには﹁TTVブックリーダ for Java﹂の他に﹁Mac OS Runtime for Java﹂というJavaの実行環境が必要になります。事前にAppleのサイトからMac OS Runtime for Java 2.2.5を入手し、インストールしておいてください。MacOS8.1以降、PowerPCを搭載したMacに対応しています。Mac OS XでもClassic環境で動作可能です。

　原田さんのサイトの﹁ダウンロード︵注‥リンク切れ︶﹂のページで﹁全機種向けZIPファイル﹂をクリックし、﹁TTVJ112.zip﹂というファイルを入手します。それをStuffIt Expander等で解凍しますと﹁TTVJ112フォルダ﹂ができますので、それを開きます。そうしましたら、フォルダ内にある﹁RunTTVOnMac.lzh﹂というファイルをMacLHAやLHA Expanderなどを用いて同じフォルダ内に解凍してください。すると﹁RunTTV_OnMac﹂というアイコンができますので、これをダブルクリックして起動します。そしてメニューから﹁ファイル﹂→﹁開く﹂で開きたいファイルを選択すれば、縦書きで読みやすくテキストを表示してくれます。

　TTVブックリーダは青空文庫のルビ形式に対応しています︵メニューから﹁表示﹂→﹁ルビ...﹂で︽ルビ︾を選択︶。また、ZIP圧縮されたテキストファイルを解凍せずに読むこともできます。


●TTVブックリーダ︵注‥リンク切れ︶

●Mac OS Runtime for Java 2.2.5

●MacLHA

●LHA Expander

2．HTMLを読む

　青空文庫のHTML版は2002年5月より﹁W3C勧告 XHTML1.1﹂対応となりましたが、スタイルシートの導入やPNG形式画像の採用により、一部のブラウザーでは表示に不具合が発生することが確認されています。Internet Explorerをお使いのかたは、MacOS8.1以降に対応したInternet Explorer 5.1以後のバージョンでの御利用をおすすめします。

※各種ブラウザーでの表示確認は、青空文庫の﹁新形式のHTMLファイルについて﹂にまとまっています。︵私も﹁Mac用WWWブラウザー﹂のページを用意してありますが、情報が古くあまり役に立ちません。︶

※Internet Explorerでルビ︵ふりがな︶の表示に不具合が発生する場合があります。原因は不明ですが、フォントサイズが21、22、25〜31のときに、1字の漢字に2字のルビがつく場合や、2字の漢字に4字のルビがつく場合に、ルビが飛んでしまうようです。

独自のスタイルシートを設定する

　スタイルシートを使って自分が読みやすいようにしてみましょう。青空文庫側で設定してあるスタイルシート︵default.css︶は次のようになっています。

body { margin: 8% 10%; }
div,h1,h2 { line-height: 150%; }
ruby { line-height: 100%; }
rt { line-height: 50%; }
span.notes { font-size: smaller; }
img.gaiji { width: 1em; height: 1em; align: top; }

　上下に8%、左右に10%のマージン︵余白︶や、行間を0.5行分とる、といった指定をしています。

　それでは試しに、背景色を黒に、文字色を黄色にしてみましょう。ここではInternet Explorer 5.1以降のブラウザを想定しています。まず、新規のテキストファイルを作成し、以下の一行をファイルに書き込んでから、MyStyle.css等の名前をつけてお好きなところに保存します︵保存した場所は忘れないでください︶。

body { color: yellow; background-color: black; }

　次に、Internet Explorerの﹁編集﹂メニューから﹁初期設定﹂を選びます。初期設定ウィンドウが開きましたら、左側の﹁Webブラウザ﹂→﹁Webコンテンツ﹂をクリックします。そして、今度は右側の、﹁スタイルシートの使用﹂→﹁独自のスタイルシート﹂をチェックし、さきほど保存したMyStyle.cssを指定します。すると、背景が黒色、文字の色が黄色で表示されるようになります。

　元に戻すときは﹁独自のスタイルシート﹂のチェックを外してください。

　スタイルシートは活用しだいでもっといろいろな表現が可能です。他のウェブや参考書などで研究してみてください。

HTMLをローカルで読む

　常時接続のかたはオンラインでも構わないでしょうが、まだまだ多くのかたは電話料を気にしながらインターネット接続をされていることと思います。HTMLファイルをハードディスクに保存してローカルで読む場合の注意点をあげておきます。

　保存するとき、Internet Explorerでは次の3つの形式が選べます。Webアーカイブ、HTMLソース、テキスト形式です。﹁Webアーカイブ﹂ではHTMLだけでなく、含まれている画像などもいっしょに一つのファイルにまとめて保存します。﹁HTMLソース﹂は、HTMLで記述されたテキストファイルが保存されます。﹁テキスト形式﹂では、HTMLタグを含まないかたちでのテキストが保存されます。

　Webアーカイブの形式で保存した場合は、ブラウザで表示したとおりに再現できます。ただしテキストファイルではありませんので、編集はできません。編集したい場合は﹁HTMLソース﹂や﹁テキスト形式﹂で保存しなおす必要があります。

　HTMLソースの形式で保存した場合は外部スタイルシートが適用されません。独自のスタイルシートを設定しましょう。またファイルに画像が使われている場合は、別個にダウンロードする必要があります。

azurで読む︵準備中︶

　azur︵アジュール︶というのは、青空文庫のXHTML版を快適に読むために開発されたボイジャー社の製品です。30日の試用期間がありますので、お気軽にどうぞ。普通のテキストやTTZ、.book形式のファイルにも対応しています。


●azur

T-Timeで読む︵準備中︶

﹇注意﹈2004年9月に新しいT-Time5が公開されましたが、以下の説明は以前のバージョン︵T-Time Ver2.x︶についてのものです。

　HTML版は、T-Timeを使うことでさらに快適な読書ができます。ただし機能限定版ではできませんので、シェアウェア登録するか、パッケージ版を購入してください。

　WEBブラウザでHTML版をひらきましたら、メニューから﹁ファイル﹂→﹁別名で保存﹂、形式はHTMLソースを選択して保存ください。このファイルをT-Timeのアイコンにドラッグ＆ドロップするだけでＯＫです。︵もちろんT-Timeがきちんとインストールされている必要があります︶

　また、T-Spoonというツールを使うことでもっと簡単にHTMLファイルの保存ができます。Internet Explorerでは次のようにします。T-Timeのフォルダ内の﹁ツール﹂→﹁Into Apple Menu﹂のフォルダの中に、﹁T-Time IE サポート﹂というファイルがありますので、これをアップルメニューフォルダに入れておきます。ブラウジング中にじっくり読みたいページに出会いましたら、アップルメニューから﹁T-Time IE サポート﹂を選ぶだけでT-Timeが自動的に起動して表示し、ファイルをデスクトップ上のT-Potに保存してくれます。Netscapeでのやり方など、詳しくはT-Timeのヘルプを御覧ください。
　ただしこれらの方法では外字画像や図版の保存はできません。そこで……？。

※Mac OS X用のT-Time︵Carbon版︶は、青空文庫テキストのルビ形式︽︾に一部対応しています。


●T-Time

3．TTZ・ドットブックを読む

　青空文庫の一部の作品にはTTZという形式のファイルがあります。また﹁随筆計画2000﹂では.book︵ドットブック︶という形式のファイルが用意されています。これらのファイルの閲覧に必要になるのがT-Timeというソフトウェアです。

　T-Time5は︵株︶ボイジャーの製品です。通常ではTTZ形式と.book形式のファイルビューワーですが、ライセンスキーを購入して登録することによって、通常のテキストファイルやHTMLファイルを縦書きできれいに表示してくれるようになります︵ライセンスキーは税込1,050円︶。ドットブックをWWWブラウザで閲覧するにはさらにT-TimePlugが必要になります。
　TTZファイルの作成には﹁T-Timeパブリッシャーズキット﹂か、ボイジャーの提供するTTZ作成サービスを利用することになります。ドットブックの作成にはボイジャーとのライセンス契約が必要になります。

﹇注意﹈以前のバージョンのT-TimeではApple社のQuickTime3.0以降が必要でしたが、T-Time5からは必要なくなりました。またライセンスキーの代金も税込2,100円から、税込1,050円に引き下げられました。

　2003年にはTTZおよび.bookの閲覧に機能をしぼった﹁T-Timeビュワー﹂が登場しました。T-TimeビュワーはQuickTimeを必要としませんが、GIF画像が表示できなくなる等の機能変更もなされています。

　﹁T-Time5﹂では、QuickTimeが必要なくなる、秀英太明朝が内蔵されるなど、明らかに利便性が高まりましたが、以前のT-TimeではサポートされていたPDFおよびエキスパンドブックの閲覧ができなくなるなどの変更もされました。﹁電子文庫パブリ﹂などへの対応の意味合いが強いといえます。

※T-Timeの解説書として、富田倫生著﹃インターネット快適読書術﹄、多村栄輝・仲晃生・LUNA CAT共著﹃ひらけ！ T-Time﹄︵共にひつじ書房︶の二冊が刊行されています。紹介しているのはどちらも古いバージョンのT-Timeですが、基本的な使い方や、T-Timeの成り立ちを知る上では今でも十分に役立ちます。

※T-Time ver.1.0の発売は1998年7月。ver.2.0は1999年7月。dotbookは2000年7月。2003年にはTTZ、.bookファイル閲覧専用のT-Timeビュワーが登場、T-TimeビュワーはPDA版も開発されました。2004年4月にazur。2004年9月には秀英太明朝フォントを内蔵したT-Time5、2005年4月には画像書き出し機能のついたT-Time5.5が登場。


●T-Time

●T-TimePlug

●QuickTime

4．エキスパンドブックを読む

　エキスパンドブックはT-Timeより以前に︵株︶ボイジャーが開発した電子本のフォーマットです。2002年5月7日までは青空文庫の標準ファイルの一つとして採用していました。エキスパンドブックを読むためにはBookBrowserが、また、エキスパンドブックの作成には﹁エキスパンドブック・ツールキットII﹂が必要になります。

※アメリカのボイジャー︵Voyager︶社のExpanded Bookを元に、日本語版の﹁エキスパンドブック﹂が発売されたのは1993年のことでした。当時は米国のExpanded Bookと同様に、日本語版もMacintoshのHyperCardをベースに開発されていました。
　1995年5月には、HyperCardから脱却して一から作り直され、日本語表現が飛躍的に向上した﹁エキスパンドブック・ツールキットII Ver1.0﹂が登場しました。その年の12月にはWindowsにも対応したVer1.5が登場。同時期にリリースされた﹃CD-ROM版　新潮文庫の100冊﹄が話題を呼びました。それから97年1月に﹁エキスパンドブック Ver1.6﹂が登場しましたが、その後メジャーなバージョンアップは行われず、事実上、開発の主体はT-Timeに移行しています。

※T-Timeの正規登録版であれば、エキスパンドブックファイルも見ることができます。ただしテキストのみで、正確なレイアウトや注釈、画像等は再現できません。MacOS X︵Carbon︶版は未確認です。T-Time5では閲覧できなくなりました。


●BookBrowser

5．PDFを読む

　PDFはPortable Document Formatの略で、︵株︶アドビシステムズの開発した電子書類のフォーマットです。PDFファイルを閲覧するにはAcrobat Readerというソフトが必要です︵バージョン6.0から名前がAdobe Readerになりました︶。ファイルの作成にはAcrobatを使うのが一般的ですが、ファイル仕様が公開されており、他にもPDFで保存できるソフトがいくつもあります。Mac OS Xでは標準で扱えるようになっています。どちらかといえばPDFは、印刷を前提とした、きっちりとレイアウトされたファイルの作成に向いています。

※PDFの発表は1992年。Acrobat 3.0 日本語版が発売されたのは1997年5月のことでした。その後、4.0︵1999年6月︶、5.0︵2001年4月︶、6.0︵2003年7月︶、7.0︵2004年12月︶とバージョンを重ねるごとに完成度を高めていき、印刷を考慮したファイルとしてはもっとも普及したものとなっています。公共機関にもよく浸透しているようです。


●Adobe Reader︵Acrobat Reader︶

番外‥iPodで読書

　iPodはアップル社製のハードディスク内蔵の音楽プレイヤーです。その液晶画面を使ってテキストを表示する、つまり読書することができます。2003年4月28日に発表された新型のiPod︵iPod2.0︶からは標準でノートリーダー機能が付きました。けれど一つのファイルのサイズが4KBまでに制限されています。﹁TransNotes for iPod﹂﹁iPod-Texter﹂﹁LogPod﹂﹁Book2Pod﹂といったソフトを使えば、ファイルを4KB毎に分割してくれますので、あとはファイルを転送するだけです。ちなみにWindows用には﹁TextMemo for iPod﹂﹁Pod野郎﹂があります。

　古いiPodにはノートリーダーの機能が付いていませんので、﹁READ OR LISTEN﹂というソフトを使ってvCard形式にテキストを変換、分割し、アドレス帳で読むことになります。ちなみにWindows用には﹁vCard作成 for iPod﹂﹁iPodder﹂があります。

参考リンク

■多言語テキストビューワーとしての iPod ︵中国学電脳 Tips 2︶
http://www.karitsu.org/com/ipod.htm
﹁過立齋﹂より。

■大谷和利のインナー・ワンダーランド 第7回　　iPod photoで美しい縦書き小説を楽しむPod Books - livedoor コンピュータ
http://computers.livedoor.com/series_detail?id=7096
2005年4月15日に発売されたボイジャー社の﹁T-Time5.5﹂ではデバイスに合わせたテキスト画像ファイルの書き出しが可能です。

■青空文庫MacRename
http://www003.upp.so-net.ne.jp/suzutown/aozoramac/index.html
青空文庫のテキストファイルから﹁著者_作品名.txt﹂のファイルを作成するツールです。MacOSX10.1〜10.3専用。﹁SUZU Town﹂より。