「幸田露伴」を編集中

{{Infobox 作家
| name          = 幸田 露伴<br />（こうだ ろはん）
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| caption       = 明治中期の露伴
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| education     = [[文学博士]]（京都帝国大学）
| alma_mater    = 電信修技学校
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| genre         = [[小説]]
| subject       = [[理想主義]]
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| notable_works = 『露団々』（[[1889年]]）<br />『風流仏』（[[1889年]]）<br />『[[五重塔 (小説)|五重塔]]』（[[1891年]]）<br />『風流微塵蔵』（[[1895年]]）<br />『天うつ浪』（[[1905年]]）
| awards        = [[文化勲章]]（[[1937年]]）
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'''幸田 露伴'''（こうだ ろはん、[[1867年]][[<span class="ltr">8</span>月<span class="ltr">22</span>日]]（[[慶応 (元号)|慶応]]3年[[<span class="ltr">7</span>月<span class="ltr">23</span>日 (旧暦)|7月<span class="ltr">23</span>日]]） - [[1947年]]（[[昭和]]22年）[[<span class="ltr">7</span>月<span class="ltr">30</span>日]]）は、[[日本]]の[[小説家]]。本名は'''成行'''（しげゆき）。別号には、蝸牛庵（かぎゅうあん<ref>家をもたないカタツムリに擬した命名。</ref>）、笹のつゆ、雷音洞主、脱天子など多数。[[江戸]]（現[[東京都]]）[[下谷]]生れ。[[帝国学士院]]会員。[[帝国芸術院]]会員。第<span class="ltr">1</span>回[[文化勲章]]受章。娘の[[幸田文]]も[[随筆家]]・小説家。

『風流仏』で評価され、『[[五重塔 (小説)|五重塔]]』『[[運命 (幸田露伴)|運命]]』などの[[文語体]]作品で文壇での地位を確立。[[尾崎紅葉]]とともに紅露時代と呼ばれる時代を築いた。擬古典主義の代表的作家で、また漢文学・日本古典や諸宗教にも通じ、多くの随筆や史伝のほか、『芭蕉七部集評釈』などの古典研究などを残した。

== 生涯 ==
[[1867年]][[<span class="ltr">8</span>月<span class="ltr">22</span>日]]（[[慶応]]3年<span class="ltr">7</span>月<span class="ltr">23</span>日）、[[江戸]][[下谷]]三枚橋横町（現・[[東京都]][[台東区]]）に、四男として生を受ける。父は[[幕臣]]の幸田利三（成延）で、母は猷。幸田家は[[江戸時代]]、大名の取次を職とする表御坊主衆であった。幼名は鉄四郎。もともと病弱であり、生後<span class="ltr">27</span>日目にして医者の世話になるなど、幼時は何度も生死の境をさまよったことがあった。翌年、[[上野戦争]]が起こったため、浅草諏訪町に移る。

下谷に戻った後、[[神田 (千代田区)|神田]]に落ち着いた。下谷泉橋通りの関千代（[[書家]]・[[関雪江]]の姉）の塾で手習い、御徒士町の相田氏の塾で素読を学んだ。[[1875年]]（[[明治]]8年）、千代の勧めで[[東京高等師範学校|東京師範学校]]附属小学校（現・[[筑波大学附属小学校|筑波大附属小]]）に入学。このころから草双紙、読本を愛読するようになった。

卒業後の[[1878年]]（明治<span class="ltr">11</span>年）、東京府第一中学（現・[[東京都立日比谷高等学校|都立日比谷高校]]）正則科に入学する。[[尾崎紅葉]]や[[上田萬年]]、[[狩野亨吉]]らと同級生であった。のちに家計の事情で中退し、数え年<span class="ltr">14</span>歳で、東京英学校（現在の[[青山学院大学]]）へ進むが、これも途中退学。[[東京都立図書館|東京府図書館]]に通うようになり、[[淡島寒月]]を知った。また兄成常の影響で俳諧に親しみ、さらに菊地松軒の迎羲塾では、漢学、漢詩を学んだ。

数え年<span class="ltr">16</span>歳の時、給費生として[[逓信省]]電信修技学校に入り、卒業後は官職である電信技師として[[北海道]][[余市町|余市]]に赴任。現地の芸者衆に人気があったと伝えられるが、[[坪内逍遥]]の『[[小説神髄]]』や『当世書生気質』と出会った露伴は、文学の道へ志す情熱が芽生えたと言われる。そのせいもあり、[[1887年]]（明治<span class="ltr">20</span>年）職を放棄し帰京。この北海道から東京までの道程が『突貫紀行』の題材である。

免官の処分を受けたため父が始めた紙店愛々堂に勤め、一方で[[井原西鶴]]を愛読した。[[1889年]]（明治<span class="ltr">22</span>年）、露伴は「露団々」を起草し、この作品は淡島寒月を介して『都の花』に発表された<ref>「露伴の出世咄」、『思い出す人々』（内田魯庵、岩波文庫）所収。</ref> 。これが[[山田美妙]]の激賞を受け、さらに『風流佛』（[[1889年]]）、谷中[[天王寺 (台東区)|天王寺]]をモデルとする『五重塔』（[[1893年]]）などを発表し、作家としての地位を確立する。

[[1894年]]（明治<span class="ltr">27</span>年）、腸チフスにかかり死にかけるが、翌年に結婚、それ以降の数年で『ひげ男』（[[1896年]]）『新羽衣物語』（[[1897年]]）『椀久物語』（[[1899年]]～[[1900年]]）を発表、また当時としては画期的な都市論『一国の首都』（[[1899年]]）『水の東京』（[[1902年]]）も発表する。

この頃に同世代の尾崎紅葉ととも「紅露時代」と呼ばれる黄金時代を迎える。「写実主義の尾崎紅葉、理想主義の幸田露伴」と並び称され明治文学の一時代を築いた露伴は、近代文学の発展を方向づけたとされる。また尾崎紅葉・坪内逍遥・[[森鴎外]]と並んで、「紅露逍鴎時代」と呼ばれることもある。

[[1904年]]（明治<span class="ltr">37</span>年）、それまで何度も中絶のあった「天うつ浪」の執筆が途絶えた。これ以後、主に史伝の執筆や古典の評釈に主眼を移した。史伝の作品としては「頼朝」「平将門」「蒲生氏郷」などがある。一方、井原西鶴や『[[南総里見八犬伝]]』を評釈し、[[沼波瓊音]]、[[太田水穂]]ら芭蕉研究会の<span class="ltr">6</span>人との共著『芭蕉俳句研究』を出した。[[1920年]]（[[大正]]9年）には『芭蕉七部集』の注釈を始め、<span class="ltr">17</span>年かけて晩年の[[1947年]]（[[昭和]]22年）に評釈を完成させている。

[[1907年]]（明治<span class="ltr">40</span>年）、[[唐]]の伝奇小説[[遊仙窟]]が万葉集に深い影響を与えていることを論じた『遊仙窟』を発表。[[1908年]]（明治<span class="ltr">41</span>年）には[[京都大学|京都帝國大学文科大学]]初代学長の旧友・狩野亨吉に請われて、国文学講座の講師となった。同時期に[[内藤湖南]]も東洋史講座の講師に招聘されている。この両名はそれぞれ小説家として、ジャーナリストとして当時から有名であったが学者としての力量は未知数であり、狩野の招聘は破天荒とさえいわれた。

露伴の指導を仰いだ[[青木正児]]によると、日本文脈論（日本文体の発達史）・『[[曽我物語]]』と『[[和讃]]』についての文学論・[[近松門左衛門|近松世話浄瑠璃]]などの講義内容で、決して上手な話し手ではなかったが学生の評判は非常によかったという。ただし、黒板の文字は草書での走り書き、しかも体格ががっちりして頭が大きいのでその文字を覆ってしまい学生達はノートを取ることが難しかったという。露伴は学者としても充分な素養があったのだが、何かの事情により夏季休暇で東京に戻ったまま、僅か一年足らず（京都へ移り住んだのは当年初めだった）で大学を辞してしまった。露伴自身は冗談めかして、京都は山ばかりで釣りが出来ないから、と述べているが、官僚的で窮屈な大学に肌が合わなかったようだ。また、妻の幾美子が病気がちであったことも理由に考えられる（幾美子は翌[[1910年]]に亡くなっている）。皮肉なことに、大学を辞めた翌年の[[1911年]]（明治<span class="ltr">44</span>年）に文学博士の学位を授与されている（『遊仙窟』が主要業績）。

しばらく作品を発表しなかった時期の後、『幽情記』（[[1915年]]から[[1917年]]の作品をまとめた短編集）『運命』（[[1919年]]）を発表、大好評を博して文壇に復活する。これらは中国の古典を踏まえた作品であり、これ以降も中国から素材をとった作品を多く発表している。小説を書くだけではなく、[[道教]]研究でもパイオニアの一人であり、世界的にまだほとんど道教が研究されていない時期に幾つかの先駆的な論文を表している。これらの評価については、『運命』は[[谷崎潤一郎]]らの絶賛を博したが、[[高島俊男]]は中国の史書の丸写しに過ぎないと批判している。道教研究に関しては[[南條竹則]]が「道教の本を色々漁ったが、最も感銘を受けたものは露伴とマスペロのものだった」と述べており、[[アンリ・マスペロ]]の「道教」と並んで未だに道教研究の古典として名高い。

[[1937年]]（昭和<span class="ltr">12</span>年）[[<span class="ltr">4</span>月<span class="ltr">28</span>日]]には第<span class="ltr">1</span>回[[文化勲章]]を授与され、帝国[[芸術院]]会員となる。[[1947年]]（昭和<span class="ltr">22</span>年）[[<span class="ltr">7</span>月<span class="ltr">30</span>日]]、戦後移り住んだ[[千葉県]][[市川市]]において、満<span class="ltr">80</span>歳で没。墓所は[[池上本門寺]]。[[戒名]]は、露伴居士。

死後、[[墨田区]]寺島町にあった露伴が長く住んでいた民家の老朽化が進み取り壊された時に、その跡地に公園が建設される事となった。公園は昭和<span class="ltr">38</span>年<span class="ltr">4</span>月<span class="ltr">24</span>日に完成し<span class="ltr">5</span>月上旬に開園式が行われ、この公園には「露伴公園」の名前が付けられた。

=== 家族・親族 ===
露伴は幸田成延、猷夫妻の四男である。長兄の成常は実業家で相模紡績社長などを務めた。次兄の[[郡司成忠|成忠]]は海軍軍人、探検家で、郡司家へ養子に出された。弟は歴史家の[[幸田成友|成友]]で、妹の[[幸田延|延]]、[[安藤幸|幸]]はともにヴァイオリニストである。

幸田家は[[法華宗]]を宗旨としていたが、罷免された成延が延の学友である岩城寛と[[植村正久]]の勧めにより[[キリスト教]]へ改宗、他の家族も入信させた。余市の赴任から帰京した露伴も植村に改宗を勧められたが、これを拒絶している。そのため父母兄弟の中で露伴だけがキリスト教徒ではない。

数え年<span class="ltr">29</span>歳の時に山室幾美子と結婚。よき理解者であり、[[幸田文]]は幾美子との間に生まれた次女である。幾美子は[[1910年]]（明治<span class="ltr">43</span>年）に亡くなり、その<span class="ltr">2</span>年後の[[1912年]]（大正元年）にキリスト教徒の児玉八代子と再婚している。文は八代子の計らいでミッション系の[[女子学院中学校・高等学校|女子学院]]へ通い、植村正久より洗礼を受けキリスト教徒になっている。

文は、露伴の死後、父に関する随筆を書き注目を集め<ref>随筆「こんなこと」のあとがきに、幸田文が文章を書き始めたきっかけが書かれている。文は父の生前には文筆活動はしていない。</ref>、その後小説も書き始め作家となった<ref>没後、岩波書店で『幸田文集』全<span class="ltr">24</span>巻が刊行された。</ref> 。一人娘[[青木玉]]も随筆家<ref>対談集に『記憶の中の幸田一族』　講談社文庫で再刊、[[2009年]]。</ref>、またその子[[青木奈緒]]はドイツ文学畑のエッセイストである。

==主な作品==
※『露伴全集』は生前に<span class="ltr">1</span>度、弟子の[[漆山又四郎]]を中心に編まれた。没後、[[塩谷賛]]等により第<span class="ltr">2</span>次全集が編まれ、[[岩波書店]]で刊行された。新版（第<span class="ltr">2</span>次全集を1978年から<span class="ltr">80</span>年にかけて再刊し、増補を加えたもの）は全<span class="ltr">44</span>巻。
; 小説
* 露団々（1889年、金港堂）
* 風流仏（1889年、吉岡書籍店）
* 縁外縁（1890年）
* いさなとり（1891年前編、1892年後編、嵩山堂）
* [[五重塔 (小説)|五重塔]]（1892年、嵩山堂『小説 尾花集』収録）
* ひげ男（1896年、博文館）
* 新羽衣物語（1897年<span class="ltr">8</span>月、村井商会）
* 天うつ浪（1903年<span class="ltr">1</span>月 - 05年<span class="ltr">1</span>月、春陽堂）
* 雪たたき（1929年、『日本評論』）
* 連環記（1941年、『日本評論』）
; 史伝
* 頼朝（1908年、東亜堂）
* [[運命 (幸田露伴)|運命]]（1919年、雑誌『[[改造 (雑誌)|改造]]』<span class="ltr">4</span>月創刊号）
*: [[明]]の[[建文帝]]が[[永楽帝]]に追われて、何十年も潜伏して生活していたという伝説について書かれた話、他にも中国を舞台にした文語体作品が多数ある。
* 蒲生氏郷
* 平将門
; 随筆・評論
* 一国の首都（1899年 - 1901、雑誌『新小説』）
* 水の東京（1901年、雑誌『[[文芸倶楽部]]』）
* 潮待ち草（1906年、東亜堂）
* 蝸牛庵夜譚（1907年<span class="ltr">11</span>月、春陽堂）
*:「遊仙窟」を収録
* 小品十種（1908年<span class="ltr">6</span>月、成功雑誌社）
* 普通文章論（1908年<span class="ltr">10</span>月、博文館）
* 努力論（1912年、東亜堂）
; 俳諧評釈
* 冬の日記抄（1924年<span class="ltr">9</span>月、岩波書店）
* 春の日・曠野抄（1927年<span class="ltr">6</span>月、岩波書店）
* ひさご・猿蓑抄（1929年<span class="ltr">12</span>月、岩波書店）
* 炭俵・続猿蓑抄（1930年<span class="ltr">1</span>月、岩波書店）
*『評釈[[芭蕉七部集]]』（1947年完成）
*: 1983年に<span class="ltr">7</span>巻組で復刻　
; 紀行・日記
* 枕頭山水（1893年<span class="ltr">9</span>月、博文館）
* 蝸牛庵日記（1949年<span class="ltr">8</span>月、[[中央公論社]]）
; 戯曲
* 名和長年
; 校歌
* 東京都立墨田川高等学校校歌

== 近年刊の作品集 ==
*『幸田露伴　近代浪漫派文庫<span class="ltr">9</span>』　[[新学社]]　2005年
*『幸田露伴　ちくま日本文学<span class="ltr">23</span>』　[[ちくま文庫]]　2008年
*『幸田露伴集　怪談　文豪怪談傑作選<span class="ltr">15</span>』 ちくま文庫　2010年－[[東雅夫]]解説
*『幸田露伴　明治の文学<span class="ltr">12</span>』　[[福田和也]]編、[[筑摩書房]]　2000年
*『幸田露伴集』　＜新[[日本古典文学大系]]．明治編22＞岩波書店　2002年
*『露伴随筆集』 [[寺田透]]編、[[岩波文庫]]　上巻.考証篇、下巻.言語篇、初版1993年

== 主な回想・研究文献 ==
*[[小林勇]]　『蝸牛庵訪問記』 岩波書店、1956年／筑摩書房「著作集」、1983年／講談社文芸文庫、1991年
*塩谷賛　『幸田露伴』　中央公論社全<span class="ltr">3</span>巻／中公文庫全<span class="ltr">4</span>巻、1977年
*下村亮一　『晩年の露伴』　経済往来社、1979年
*[[篠田一士]]　『幸田露伴のために』　岩波書店、1984年
*関谷博　『幸田露伴論』　翰林書房、2006年
*登尾豊　『幸田露伴論考』　学術叢書：学術出版会、2006年　
*[[井波律子]]・[[井上章一]]編　『幸田露伴の世界』　思文閣出版、2009年
*[[斎藤礎英]]　『幸田露伴』　[[講談社]]、2009年

== 脚注 ==
{{reflist}}

== 外部リンク ==
* [http://www.city.ichikawa.chiba.jp/shisetsu/tosyo/kyo/kahuyukari/rohan-aya.htm 幸田露伴・文]
* [http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person51.html 幸田 露伴：作家別作品リスト]（[[青空文庫]]）
* 書評
** [http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0983.html 幸田露伴『連環記』1991 岩波文庫]（[[松岡正剛]]の千夜千冊）第983夜2004年<span class="ltr">5</span>月<span class="ltr">28</span>日

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[[Category:日本の小説家]]
[[Category:日本の文芸評論家]]
[[Category:文化勲章受章者]]
[[Category:帝国学士院会員]]
[[Category:日本藝術院会員]]
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[[Category:京都大学の教員]]
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[[Category:1947年没]]