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立原道造(1914-1939)
大正3年7月30日ー昭和14年3月29日 24歳 (温恭院紫雲道範清信士)
谷中・多宝院


けふ 私のなかで
ひとつの意志が死に絶えた………
孤独な大きい風景が
弱々しい陽ざしにあたためられようとする

しかし寂寥が風のやうに
私の眼の裏にうづたかく灰色の雲を積んで行く
やがてすべては諦めといふ絵のなかで
私を拒み 私の魂はひびわれるであらう

すべては 今 真昼に住む
薄明の時間のなかでまどろんだ人びとが見るものを
私の眼のまへに 粗々しく 投げ出して

……煙よりもかすかな雲が煙つた空を過ぎるときに
嗄れた鳥の声がくりかへされるときに
私のなかで けふ 遠く帰つて行くものがあるだらう
(初 冬)

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