青空文庫で読める隠れた名作選

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03 Dec 2008 - 27 Jun 2013

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青空文庫で読める隠れた名作選

■小説︵発表年順︶山田美妙﹁武蔵野﹂　明治20年　約36枚秋の武蔵野を背景に、時代を南北朝時代の武士の抗争にとった悲劇的歴史小説。斬新な言文一致体で、当時の読者に強烈なインパクトを与えた。巌谷小波﹁こがね丸﹂　明治24年　約83枚近代日本における最初の少年読物であり、児童文学史上における記念碑的作品。川上眉山﹁書記官﹂　明治28年　約50枚社会の暗黒面を描いた、いわゆる﹁観念小説﹂の代表作品で、官僚や資本家の腐敗を題材としている。作者は明治41年に自殺。広津柳浪﹁今戸心中﹂　明治29年　約106枚吉原の遊郭を舞台とした作品で、愛欲のもつれから破滅していく人間を描いている。徳冨蘆花﹁不如帰﹂　明治31〜32年　約377枚幸せな結婚生活が、肺結核により崩壊していくさまを描いた悲劇小説。尾崎紅葉の﹁金色夜叉﹂と並ぶ、明治期の大ベストセラー作品。黒岩涙香﹁幽霊塔﹂　明治32〜33年　約682枚英国の作家ウィリアムソンの伝奇的探偵小説の翻訳。訳者は探偵小説の名訳を数多く発表し、日本の大衆文学の基礎を築いた。小泉八雲﹁耳無芳一の話﹂　明治37年　約22枚日本の古典や民間説話の怪異談を素材とした小説集﹁怪談﹂の中の一篇。作者はイギリス人のラフカディオ＝ハーン︵小泉八雲︶で、日本文化の研究・紹介に大きな功績を残した。鈴木三重吉﹁千鳥﹂　明治39年　約57枚瀬戸内海の小島で出会った、若い女性との交流を描いた清純な浪漫的作品。作者の処女作であり、夏目漱石の推薦により雑誌に掲載された。白柳秀湖﹁駅夫日記﹂　明治40年　約100枚駅に勤める一青年労働者の人間的、階級的目覚めを描いた作品で、プロレタリア文学の先駆とされる。三島霜川﹁解剖室﹂　明治40年　約45枚何事にも冷淡で無感動な医学士が、ある少女との出会いにより、心を変化させていく作品。田村俊子﹁木乃伊の口紅﹂　大正2年　約108枚小説家の女性を主人公とし、夫婦生活の深刻な確執を描いた私小説的作品。平出修﹁逆徒﹂　大正2年　約57枚大逆事件を題材とした作品。作者は実際に弁護士として事件の裁判に関わっており、貴重な記録小説ともなっている。発表直後に発禁となり、日の目を見たのは第二次大戦後であった。中里介山﹁大菩薩峠﹂　大正2〜昭和16年　約13321枚約30年にわたって書き継がれた大長編小説で、大衆文学における不朽の名作とされる。作者の死去により未完。相馬泰三﹁田舎医師の子﹂　大正3年　約108枚東京での生活に疲れた主人公が、六年ぶりに実家へ帰郷する作品。都市と農村の問題や、知的敗残者の心象を描き、大正期特有の情緒を漂わせている。伊藤野枝﹁出奔﹂　大正3年　約29枚強制された結婚に反抗して出奔する、熱烈な個性を持った女性を描いた自伝的小説。上司小剣﹁鱧の皮﹂　大正3年　約43枚大阪道頓堀のうなぎ屋を舞台とした作品で、情味豊かに大阪の庶民を描いている。南部修太郎﹁修道院の秋﹂　大正5年　約32枚北海道旅行の際に立ち寄った、函館郊外の修道院の人々との交流を描いた作品。水野仙子﹁嘘をつく日﹂　大正7年　約21枚病院で長い入院生活を送る主人公が、エイプリル・フールに遊び心で院長を騙そうと試みる作品。島田清次郎﹁地上﹂　大正8年　約478枚貧しい環境に育った少年が、学校や社会に反抗しながら、人生の遍歴を続ける作品。豊島与志雄﹁野ざらし﹂　大正12年　約232枚恋の三角関係に悩む男女の姿を追求した作品。生活の倦怠、無為よりくる憂鬱が全体をおおっている。里村欣三﹁苦力頭の表情﹂　大正15年　約23枚満州におけるルンペン・プロレタリアートを描いた作品。どん底の生活を描きつつも、屈託のない明るさと野放図さが溢れている。佐藤紅緑﹁ああ玉杯に花うけて﹂　昭和2〜3年　約378枚貧しい豆腐売りの少年が、不屈の向上心によって、一高に入学するまでを描いた少年小説。当時の少年たちの立身出世の夢や理想を現実に即して描き、児童文学に新機軸をもたらした。甲賀三郎﹁支倉事件﹂　昭和2〜4年　約617枚大正時代におきた疑獄事件にもとづいた犯罪実話小説。死刑判決の下った被疑者は、冤罪を訴えるものの、最終的には獄中で自殺してしまう。黒島伝治﹁渦巻ける烏の群﹂　昭和3年　約53枚兵士たちの悲劇的運命と、軍隊機構の非人間性を描いた反戦小説。作者のシベリヤ出征中の体験に基づいて書かれている。佐左木俊郎﹁黒い地帯﹂　昭和5年　約38枚近代化の波によって崩壊していく農村にあって、小作人のために尽力する善良な地主を描いた作品。直木三十五﹁南国太平記﹂　昭和5〜6年　約1616枚薩摩藩のお家騒動に材をとった時代小説。﹁直木賞﹂で有名な直木三十五の代表作。林芙美子﹁風琴と魚の町﹂　昭和6年　約44枚広島県尾道市を舞台にした自伝的小説。底辺の人々の生活が、少女の目を通して詩情豊かに描かれる。田畑修一郎﹁鳥羽家の子供﹂　昭和7年　約64枚地方の旧家の末子に生まれた主人公が、父親の自殺に遭い、義母のもとに引き取られていく私小説的作品。小栗虫太郎﹁黒死館殺人事件﹂　昭和9年　約810枚明治に建てられた黒死館を舞台とする探偵小説。ペダントリーと非現実性でユニークな世界を築いている。本庄陸男﹁白い壁﹂　昭和9年　約70枚小学校の障害児学級の担任を主人公とした作品。教育の理想と現実との乖離が描かれている。夢野久作﹁ドグラ・マグラ﹂　昭和10年　約1154枚狂人の書いた推理小説という状況を設定し、前衛的な手法を駆使して、デモーニッシュな精神世界を追求した作品。金史良﹁光の中に﹂　昭和14年　約69枚在日朝鮮人文学の先駆であり、小説としては初めて彼らの生活の一端が描かれた作品。神西清﹁雪の宿り﹂　昭和21年　約68枚応仁の乱を題材とした歴史小説で、太平洋戦争を生き抜いた作者自身の感慨も込められている。林芙美子﹁晩菊﹂　昭和23年　約40枚老年一歩手前の女を、かつての恋人が訪ねてくるところから生じる心理的葛藤を描いた作品。 ■評論︵発表年順︶内村鑑三﹁後世への最大遺物﹂　明治30年　約98枚近代日本の文学や思想に多大な影響を与えたキリスト教伝道者・内村鑑三の講演筆記。福田英子﹁妾の半生涯﹂　明治37年　約178枚婦人解放運動家・福田英子の自叙伝。自由民権運動や婦人解放運動の戦いの歴史が生々しく描かれており、近代日本女性史研究上、必読の作品とされる。大杉栄﹁自叙伝﹂　大正10〜11年　約324枚近代日本を代表するアナキスト・大杉栄の自叙伝。自由奔放な筆致で、その行動力あふれる波乱の半生が描かれている。長谷川時雨﹁旧聞日本橋﹂　昭和4〜7年　約499枚女流劇作家・長谷川時雨の自伝的エッセイ。少女の目を通してみた江戸の名残が描かれ、滅びゆくものへの作者の無限の愛惜が伝わってくる。九鬼周造﹁﹃いき﹄の構造﹂　昭和5年　約130枚哲学者・九鬼周造による日本文化論。ヨーロッパにはない、日本固有の美的人間的価値である﹁いき﹂について分析している。

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