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第6回宇宙エレベーターチャレンジ、目指せ2400m連続昇降!

2014年08月15日 18時00分更新

 夏の恒例イベントになりつつある、日本宇宙エレベーター協会の地上実証機実証大会『宇宙エレベーターチャレンジ』が、8月6日~9日の4日間、静岡県富士宮市にあるフィールドで開催された。第6回目の開催となる今年は、100キロの重量上げと2400メートル連続昇降にチャレンジしたチームも登場した。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑富士の裾野にバルーンを揚げ、自立型昇降ロボットの実現を目指す、SPace Elevator Challenge (SPEC) 2014。



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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑1200メートルのテザーだけでも100キロ以上あるため、直径6メートルのバルーン×3、小型バルーン×1を使って浮力を稼ぐ。合計で300キロ近い浮力だ。

■安定した100kgの重量上げにチャレンジ

 宇宙エレベーターの目的は、地上から軌道上まで低コストで安定して人員や貨物を運ぶこと。……ならば、ペイロード(貨物)の搭載性能を目指すクライマーがあってもよいのでは? と搭載性能を強化してきたのが、社会人チーム The 4th Laboratory とそのクライマー『呑龍』だ。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑本体重量が17kgもあり、運ぶのも一苦労な4th Labのクライマー『呑龍』。

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑重量物を確実に上昇させるため、径の大きなローラーを昇降準備のたびに取り外して付け直す。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑ペイロードは100kg、20kgの砂袋を5袋。地上付近ではずるずる引きずって行くぼどの重量感。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑見事に上昇。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑スタックしたクライマーの前で、悔しさを表現。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑記録は123.7mとなった。

■記録的な2400m連続昇降にチャレンジ

 昨年、世界で初めて1100mのクライマー昇降に成功したチーム奥澤は、『momonGa-6。』で1200mを2往復する連続昇降距離の記録達成に挑んだ。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑予選となる低高度の昇降では、上空での停止といったトラブルまったくなく、順調な仕上がりを見せた。

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑全19チーム中、テスト時に唯一トラブルがなかったチーム奥澤のクライマー『momonGa-6。』。(画像提供:鎌田恭彦)
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑1200mを2往復。2400mチャレンジを達成!



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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑右からチームリーダーのティムさん、通信機器関係を担当のジュリアスさん、ソフトウェア開発担当のヨハネスさん。

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑自重で降下するタイプのクライマーは他の参加チームにも多いのだが、ミュンヘンクライマーの場合は降下速度が秒速5mとやや速め。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑ZigBee規格の通信装置を持ち、地上で走行距離などのテレメトリが取得できる。

 パワーと重量感あふれるTUMRA-02は、200mバルーンでのテスト昇降3回を経て、最終日に1000m昇降に挑戦したのだが、テザーの張力が下がってたるんでいたため、コンクリート製のテトラポッドに激突。先頭に取り付けられた帰還判断用のプッシュスイッチが折れるというトラブルに見舞われた。しかしチームWARRは「30分で交換可能、機体損傷はない」といい、その頑丈さに「ドイツ車だ」、「ドイツ車だ……!」と周囲から驚きの声が上がっていた。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑コンクリートに激突して先端のスイッチが折れるも、交換して再度の挑戦を行なった丈夫な機体。低高度テスト時には軽トラック荷台にも激突しているのだが「トラックの方が大丈夫かな」との余裕ぶり。

 部品を交換して2回目の昇降に挑戦。クライマーは無事に上がって高速で上空へ。スタートから3分40秒ほどで設定の1000mへ達し、その高速性能を見せつけた。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑テザーへの取り付けを高速化したというTUMRA-02。無事にスタート。

 しかし1000m地点での停止後、そのままストップ。安全装置として通信切れから6分経つと自動的に下降を開始する設定のはずだが、6分経っても降りてこず、ドイツから来たクライマーも、呑竜同様、バルーンごと引き下ろされる結果に。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑クライマー搭載のGoPro映像から。停止地点からはるかにフィールドを見下ろしている。 (画像提供:ミュンヘン工科大学 WARR)

■高高度となる1000m越えにチャレンジ

 続いて、1000m以上の高高度昇降に成功したチームを順次紹介したい。

 慶應大学&まんてんプロジェクトチームは、3回目の参加にしてロープテザーで1000mの昇降に成功。昨年はテザーのスリップが激しくなかなか昇降できなかったが、今年は機体を長くして臨み、下降速度も毎秒1.5mと安定した動作を見せた。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑慶應義塾大学チーム、クライマーを取りつけてスタート。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑「上に参りました~!」喜ぶ慶応チームの石田さん(左)、笹木さん(右)
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑1000m上空はほとんど見えないが、それでもずっと見上げずにはいられない。

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑軌道に到達した昇降ログ。“Orbit reached”の表示に注目!(画像提供:チーム慶應&まんてんプロジェクト)
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑無事に帰ってきたところで、機体下部の停止スイッチをポンと押す。

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑高高度ロープテザーでのテストに臨む江上研Aチーム。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑そして本番。1200m昇降に挑戦し、スタートするクライマーを見送る。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑みんなで昇降成功記念にパチリ!

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑江上研Dチームのロープクライマー。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑昇降時間が比較的速いにも関わらず、安定して降りてくる。降下時は、比較的高速に下りてゴール前で速度を緩める、一定の安全な速度で降下するなど、チームによって考え方も違うのがおもしろい。
第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑こちらも見事に昇降成功!



 

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第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑発煙トラブルを起こしたクライマー。

■次なる課題へ

 目標を達成できたチーム、できなかったチームとそれぞれ結果は違ったが、全体的には長距離昇降、ペイロード搭載といった課題を消化し、クライマーに要求される性能を着実に上げてきている。来年以降は、目視不可能な2000m以上の高高度での自律制御や安全性への対応などが問われるようになるとだろう。

第6回宇宙エレベーターチャレンジ
↑第5回大会で下降時に課題を残した青木研Aチームのクライマーも今年はきちんと達成。

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