北米時間2017年6月8日,Intelは﹁X86: Approaching 40 and Still Going Strong﹂︵x86,40歳目前にしてなおも強く成長中︶というblogエントリを掲載した。これは,Intelの生み出したx86命令セットおよびアーキテクチャ︵以下,x86 ISA︶の歴史と優位性を語るというものなのだが,その終盤に,
●﹁Intelはx86の革新を慎重に保護しており,他社にはその使用を広くライセンスしたりはしていない﹂
●﹁IntelはUnited MicroelectronicsやAMD,Cyrix,Chips and Technologies,VIA Technologies,そして最近ではTransmetaに対して特許権を行使する必要があった﹂
●﹁近年は他社が我々の特許を尊重していたため,そういう行動を取る必要がなかった﹂
●﹁しかし報道によると,Intelによる許可なしにx86 ISAをエミュレートしている企業が何社かあるようだ﹂
●﹁エミュレーションは新しい技術ではなく,Transmetaは﹃Code Morphing﹄と称して,x86 ISAと互換性のあるプロセッサを開発すると主張した最初の企業だったが,IntelはSIMD拡張命令セットについて,対Transmetaで特許権を行使した。いずれにせよTransmetaは商業的に成功せず,10年前にマイクロプロセッサ事業を終了させた﹂
●﹁x86 ISAをエミュレートしようという新たな試みが,︵Transmetaと︶異なる運命を迎えるかどうかは誰にも分からない﹂
●﹁Intelとしては合法的な競争を歓迎している。しかしながら,我々の特許の侵害は歓迎しない。他の企業がIntelの知的財産権を尊重することを期待している﹂
といった文章を次々と繰り出す,とても意味深なものになっている。
Intelは﹁x86 ISAをエミュレートしている企業﹂がどこかは明らかにしていないが,﹁何社か﹂が,﹁Snapdragon 835 Mobile Platform﹂︵以下,Snapdragon 835︶上で﹁Windows 10﹂のデモを実施したQualcommとMicrosoftを指す可能性が高いことは,容易に想像できる。
Intelは,Snapdragon 835とWindows 10によるx86 ISAレミューションについて,特定の企業を訴えるとは一言も述べていない。しかし,﹁x86 ISAをエミュレートしている企業﹂がIntelとエミュレーションについての協議を行っていないのだとすれば――Intelの言い分を読む限り,その可能性は低くなさそうだ――搭載端末の発売まで,もしくは発売後に一波乱あってもおかしくないだろう。
この手の話は訴訟が提起されない限り状況は見えなかったりするのだが,それでも,今後の状況をできる限り注視したいところである。