著作権の保護期間の例外なき延長に反対する
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執筆者:藤田稔
私は、青空文庫の工作員もしておりますが、今回は実名で発言をさせていただきます。
青空文庫では、著作権の保護期間の延長に反対しており、私も延長には基本的に反対です。しかしながら、TPPの交渉結果では、延長される可能性も高いものと思います。そこで、青空文庫の趣旨を生かし発展させる為に、より現実的で広範な支持を集めやすい提言を行うことを提唱いたします。
私は、週刊金曜日の2014年11月21日号の投書欄に次の提言を発表しました。
︵出版社に配慮して、雑誌の公刊後、1か月は重ねての発言を控えておりました。︶
著作権の保護期間の例外なき延長に反対する
著作権の存続期間を著作者の死後50年から70年に延長することが、TPPの交渉事項になっており、議論を呼んでいる。私は存続期間の延長には反対であるが、百歩譲って延長自体は認めるとしても、その効果を以下に述べるように制限すべきであると考える。
延長を主張している者は、著作権の財産的価値を維持する為にコストをかけてきた者であろう。彼らは著作権を延長後にも主張していくであろう。ところが、そういった著作物の数は著作物全体の中で大きくはない。多くの著作物は公刊されていないし、公刊されても著作者の死後50年も経てば、多くは絶版・品切れの状態にある。さらに著作権の相続に際しては、相続すること自体が認識されていない結果、著作者の死後50年も経てば、多数の相続人の共有となっており、誰が著作権を相続しているか調査して著作物利用の許諾を得ることは不可能ないし莫大なコストがかかるものが大半であろう。こういった著作物の著作権者は、自分が著作権者であること自体、知らず、著作権行使など全く考えていないのが実情であろう。
こういった著作物でも著作権が消滅すれば、出版社が出版することもあるし、青空文庫のようなサイトで公開されることで、著作物が自由に広範に利用されることもあり、文化の発展に資するものとなっている。ところが著作権の存続期間の例外なき延長は、こういった著作物の利用まで、全て著作権侵害の烙印を押して抑圧するものであり、文化の発展を妨げるものと考える。
著作物の登録・公示制度を整備し、存続期間の延長の際には、登録・公示されない著作物の著作権は現行法の存続期間をもって消滅したとみなす措置を、法律で定めるべきであると考える。必要があれば国際条約でも交渉事項として提起すべきであろう。
いかがでしょうか。皆様のご意見をお伺いしたいと存じます。
2014年12月26日 藤田稔
校正の楽しみ
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執筆者:雪森
青空文庫の一読者だった私が、校正をするようになったのは、富田倫生さんが週刊エコノミストで、未校正の作品が溜まっていると話されているのを読んだからです。もうじき2年になります。やり始めて感じたのは、校正をすれば、その作品は早晩公開されます。誰かが校正してくれるまではいつまでも公開されない入力作業よりやりがいがあるということでした。 (more…)
著作権保護期間延長の動きに対する青空文庫としての対応、2013年まで(クロニクル風)
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執筆者:Juki
著作権保護期間延長の動きに対して、青空文庫は主に反対の立場から三つの活動を行なってきました。それは﹁パブリックコメントの提出﹂と﹁署名活動﹂、そして﹁他団体との連携﹂です。青空文庫呼びかけ人の富田倫生さんは、主な推進役として昨年まで活動を担ってこられました。
2014年5月27日掲載の﹁そらもよう﹂記事﹁著作権保護期間延長の動きに対する青空文庫としての対応、2013年まで﹂では、三つの活動毎に動きをまとめました。
ここでは、﹁そらもよう﹂や他サイトの記事を道しるべにして、時間の経過に沿って短く記述していきます。
ただし、情報元の一つだった掲示板﹁みずたまり﹂﹁こもれび﹂は既に終了し、ログを見る事が出来なくなりました。もしかしたら、筆者が見落としている情報が載っていたかもしれません。ご存知の方がいらっしゃいましたら、コメント欄にてご指摘いただけると幸いです。
(more…)
TPPによる著作権保護期間延長の危機に際しての思い
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2014年5月22日付そらもようを見て、意見表明をしたいと思い書かせていただきました。
読売新聞報道以来、著作権保護期間が70年に延長されるのではないかとおびえながら、江戸川乱歩作品を入力してきました。あと1年半、2016年1月1日には公開できる!と頑張ってきたのに、ここで70年に延長されたら、それまでの分も含めてお蔵入りにせざるをえません。
江戸川乱歩氏がパブリックドメインに入れば、彼が産みだした明智小五郎や怪人二十面相、小林少年を団長とする少年探偵団の世界がフリーカルチャーにはいり、 少年探偵団関連をまとめた全集が新たに出版されたり、魅力的な絵師の手でさまざまな怪人二十面相が描かれたり、あの世界を下敷きにした二次創作や新たな芸術作品が産みだされるはずです。それに、私が学校の図書室で読みあさったあの世界にふたたび出会えるのを楽しみにしているのです。電子書籍としても紙本で も新たな読者にあの世界をみせられる、それはとてもワクワクすることで、だからこそポチポチ入力していく地味で目がいたくなる作業に日々従事してきたのです。
ですが、ここで70年に延長されたら、フリーカルチャーのなかにあの世界が入るのは2036年まで先送りされます。あと20年待つのは耐えられません。
なので、青空文庫が、かつて検討されていた著作権保護期間延長の流れをくいとめたようなムーブメントをふたたび起こしてくれるのを期待しています。
ただ期待しているだけではなんの意味もないので、こんな﹁三本の矢﹂が放てないかなあと思ったものを書かせていただきます。
安部総理は一連の経済政策、通称アベノミクスによって、不景気にうちひしがれていた空気を反転させ、景気回復に持っていきました。それにならい、時期をずらした3つのアクションを起こし、大きな期待をもたらすことで、著作権保護期間延長をくいとめる力をつくれないでしょうか?
1.著作権保護期間の延長を行わないよう求める請願署名を再び集め、国会に提出する。
2007年から2008年にかけて青空文庫において著作権保護期間の延長をおこなわないようもとめる請願署名を集めていましたですよね。あれを再び集めるのです。まずはここから。意見表明するだけでもインターネット上では拡散してくれる人は多数いることでしょう。
2.青空文庫の一式をおさめたDVD-ROM付き冊子﹁青空文庫 全﹂を再び作成する。
﹁青空文庫 全﹂の作成は、一月や二月でできることではないですが、青空文庫の一式をおさめたDVD-ROMを作って希望者へ実費を負担してもらった上で配送してしまうところまでを実行しておけば、形あるものが手元にくるのでやはりうれしいです。
DVD-ROMのパッケージで1.の署名用紙を一緒におくれば一粒で二度おいしいはず。
3.2015年1月に、書店で﹁みんなのものになった文化フェア﹂を書店で実行する。
じつはこれが本命だったりしますが、実際にものを見せた方がインパクトが強いと思うのです。﹁著作権保護期間満了=パブリックドメインに入る﹂ということは、単に﹁青空文庫で公開できるようになる﹂ことだけを意味するのではなくて、その作品を新たに出版したり新たな絵師の表紙やさし絵で付加価値をつけたりすることで、お金儲けの種もふえるんだよーもちろん個人の生活も豊かになるよーということを、青空文庫を知らない人にも見せてやりたいのです。
パブリックドメインに入っている作品の紙本を集めて書店でフェアをすれば、本屋に行くような人へのアピールになるのではないでしょうか。というか、個人の善意の集積でどれだけ文化が豊かになったのか、私が見たいです。
吉川英治氏﹁三国志﹂﹁宮本武蔵﹂︵新潮文庫︶とか、インプレス社発行の青空文庫PODやNDL所蔵文庫PODとか、真珠書院のパール文庫とか、ヴィクトル・ユーゴー﹁レ・ミゼラブル﹂豊島与志雄訳とか﹁チベット旅行記﹂河口慧海著とか片岡義男氏の青空文庫公開済みの本とか…。
そのなかに2.の﹁青空文庫 全﹂を市販するか寄贈したものをならべるかしておくことで、青空文庫としての主張もきっちりつたえられることが期待できます。
時期的には1.署名集めが夏で、2.﹁青空文庫 全﹂の作成が秋、その間に出版社と書店と交渉して2015年1月に﹁みんなのものになった文化フェア﹂を実施。これでとぎれなく世論を喚起できると思うのです。
かつて山形浩生氏はローレンス・レッシグ著﹁FREE CULTURE﹂ の翻訳あとがきにおいて﹁理論的にどうこう言う話をいくらしてもしょうがない。現実に著作権をやたらに引き延ばすと害があるんだ、ということを見せなきゃいけない﹂︵FREE CULTURE 初版第1刷362ページ︶と書きました。それにならって今こそ﹁理論的にどうこう言う話をいくらしてもしょうがない。現実に著作権が切れることで利益があるんだ、ということを見せなきゃいけない﹂のだと思ったのです。
末筆ながら、青空文庫が今後も新しい共有作品を生み出していけるようお祈り申し上げます。