最後の事件

THE FINAL PROBLEM

アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle

大久保ゆう訳




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挿絵1


 




 


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挿絵7
 
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挿絵8
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わが親友ワトソン君へ
 僕はこの数行をモリアーティ氏の厚意でしたためている。氏は二者間にある各種問題の最終討論にあたって、しばし僕に便宜を図ってくれている。英国警察をも回避した氏は、我々の動向を絶えず仕入れていたその手はずを、さきほどまで手短に語ってくれていた。なるほど氏の能力に関する僕の高評価を裏付けるものだった。今後はその氏の及ぼす手からも、世の中を救いえると思って嬉しくあるが、僕の友人たちには、とりわけ君、親友のワトソン君には痛ましい犠牲を伴う点が、懸念として残る。しかしながら君には説明済みだが、いずれにせよ僕の行く道もとうとう瀬戸際に達した上に、本件では僕にとってこれ以上ふさわしい決着はありえないのである。実のところ君にすべてを白状すれば、マイリンゲンからの言伝はでっち上げであると僕にはお見通しであり、だからこそ、こうした展開になることを納得ずくで、君をその用件へと向かわせるままにしたのだ。一味の確保に必要は書類は、分類棚Mのなか、〈モリアーティ〉と記した青の封筒内に入れてあると、パタソン警部に伝えてほしい。イングランドを発つ前に、自分の所有財産はみな整理して、兄のマイクロフトに託してある。どうかワトソン夫人によろしく、そして我が親友よ、忘れないでほしい――
僕は君の相棒

シャーロック・ホームズなり。


 残る話は数語で十分だろう。専門家の調査によれば、二者の私闘について、この状況では当然のことながら、互いに腕を組み合ったまま姿勢が崩れて転落に終わったことは疑いの余地がない。遺体回収の試みもまったく甲斐なく、現地、水が渦巻き泡が波立つ恐ろしい大釜の深い底で、当世最凶の犯罪者と当代第一の法の守り手は、今もとこしえに横たわっているものと思われる。スイス人青年は二度と見つからず、その人物がモリアーティの使役していた数多くの手先のひとりであることは疑いようもない。一味に関しては、世間の記憶にもまだ新しいが、ホームズの積み上げた証拠のおかげでその組織の全容は完璧に暴かれ、亡き友の手は一同をなおも重く押さえつけた次第である。その戦慄すべき領袖の素性は、訴訟手続きのあいだもあまり仔細が明らかになっていなかったが、今になってなにゆえその人物の経歴についてはっきり言明せざるを得ないのかと言えば、心ない声高な人々がその者の汚名をそそがんとするあまり、私が知るなかでも最もすばらしく最も賢い人物と思われる友のことまで誹謗中傷するからにほかならない。
挿絵9





翻訳の底本:Arthur Conan Doyle (1893) "The Final Problem"
   上記の翻訳底本は、著作権が失効しています。
   2021(令和3)年9月25日翻訳
   2022(令和4)年7月7日青空文庫公開
※挿絵は、シドニィ・パジェット(1860-1908)によるものです。
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翻訳者:大久保ゆう
2022年6月9日作成
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