﹃パンドラの匣﹄あとがき
太宰治
この小説は、終戰後に仙臺の河北新報社から出版せられたものであるが、河北新報社が或る印刷技術の支障に依り、再版に手まどる樣子で、讀者の要望もある樣子だし、河北新報社出版部の宮崎泰二郎氏の好意ある了承のもとに、その再版を、岩月英男君にゆだねた。
岩月君は、私と十年もそれ以上も昔からの知合ひである。井伏鱒二氏の門にかよつてゐたので、私と知合ひになつたのである。このたび、出版業をはじめるさうで、その第一出版を、同門のよしみで、私のこの﹁パンドラの匣﹂にしたいと言ふ。いまの状勢で、あらたに出版業をはじめる事の難儀は、私の如き迂愚の者にも察しがつく。さいはひにして、大過無き出發となつてくれたらよいと、いまはそれを祈るばかりである。以上。
昭和二十二年晩春
底本‥﹁太宰治全集11﹂筑摩書房
1999︵平成11︶年3月25日初版第1刷発行
初出‥﹁パンドラの匣﹂双英書房
1947︵昭和22︶年6月25日発行
入力‥小林繁雄
校正‥阿部哲也
2012年1月7日作成
青空文庫作成ファイル‥
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