一景話題

泉鏡花




     夫人堂

 神戸にある知友、西本氏、頃日このごろ摂津国摩耶山せっつのくにまやさんの絵葉書を送らる、その音信おとずれに、
なき母のこいしさに、二里の山路をかけのぼり候。靉靆たなびき渡る霞の中に慈光あまねおん姿を拝み候。
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 ※(「りっしんべん+刀」、第3水準1-84-38)()()()()()()()()()()()()()()()()()
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 ()()()()()()()※(「りっしんべん+刀」、第3水準1-84-38)西()()()()

     

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 これ、佐藤継信つぎのぶ忠信ただのぶ兄弟の妻、二人都にて討死せしのち、その母の泣悲しむがいとしさに、我が夫の姿をまなび、老いたる人を慰めたる、優しき心をあわれがりて時の人木像にきざみしものなりという。
この物語を聞き、この像を拝するにそぞろに落涙せり。(略)かく荒れ果てたる小堂の雨風をだに防ぎかねて、彩色も云々うんぬん
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いくさめく二人の嫁や花あやめ
 また、安永中の続奥の細道には――故将堂女体、甲冑をたいしたる姿、いと珍し、古き像にて、彩色のげて、下地なる胡粉ごふんの白く見えたるは、
の花やおどし毛ゆらり女武者
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 ()()()()()()西()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()※(「兀のにょうの形+虫」、第4水準2-87-29)※(「こざとへん+貴」、第3水準1-93-63)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
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底本:「泉鏡花集成8」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年5月23日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集 第二十八卷」岩波書店
   1942(昭和17)年11月30日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、以下の箇所を除いて大振りにつくっています。
 安達あだちヶ原の婆々ばばあを想い
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年10月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について