現代の女性の感覚は色調とか形式美とか音とかに就ついて著いちじるしく発達して来た。全あらゆる新流行に対して、その深い原理性を丹念に研究しなくとも直ちょ截くせつに感覚からして其その適応性優秀性を意識出で来きる敏びん感かんさを目立って発達させて来た。これは新発明とか、創造とかには或あるいは適さぬ性質かも知れない。何な故ぜと言えば、余り深く一ひと処ところ、一いち物もつに執着して研けん鑽さんを積むという性質ではないからである。しかし、流行の吸収に最も適した性質であり、巧たくみに模もほ倣うを容易ならしめる特質である。 斯かくして現代の一般女性たちは、内外特殊の研究家の創造発表するものを容易に採り上げて自由に利用するであろう。それだけでも昔の日本女性より、ずっと進歩していると言える。物の判断に於おいても感覚を広く鋭くする事によって充分に正確に処しょ断だんする事が出来るものであり、また実際現代の女性たちは意識無意識に拘かかわらず、彼女等の感覚によって大たい過かなく日常を処しょ置ちしているようである。 従したがって彼女等らをしてその特長の新感覚に広く磨みがきをかけさせたく思う。色調、形式美、音等に対する感覚ばかりでなく対人的、殊ことに異性に対する感覚をもっと洗練させ度たい。 この点、まだ現代の女性はイージーでセンチで安あん価かな妥だき協ょうをして了しまうのが多い。異性に対し、もっと高こう貴きで確たしかな潔けっ癖ぺきを持って貰もらい度い。潔癖のない女ほど下等で堕だら落くし易やすいものはない。潔癖を持つ事は時に孤こど独くな淋さみしさが身を噛かむ事もあるが、恆つねに、もののイージーな部分にまみれないではっきりとして客観的にものを観察出来て、結局ロング・ランには正当に自己を処しょ理りさせるに違いない。私は現代女性の処しょ世せい法ほうを、感覚の洗練から講こうじようとする態度が最も現代的だと信じている。