わたしたちは黄いろの実じっ習しゅ服うふくを着きて、くずれかかった煉れん瓦がの肥こえ溜だめのとこへあつまりました。
冬中いつも唇くちびるが青ざめて、がたがたふるえていた阿あべ部と時き夫おなどが、今日はまるでいきいきした顔いろになってにかにかにかにか笑わらっています。ほんとうに阿部時夫なら、冬の間からだが悪わるかったのではなくて、シャツを一枚まいしかもっていなかったのです。それにせいが高いので、教室でもいちばん火に遠いこわれた戸のすきまから風のひゅうひゅう入って来る北東の隅すみだったのです。
けれども今日は、こんなにそらがまっ青さおで、見ているとまるでわくわくするよう、かれくさも桑くわばやしの黄いろの脚あしもまばゆいくらいです。おまけに堆たい肥ひ小ご屋やの裏うらの二きれの雲は立りっ派ぱに光っていますし、それにちかくの空ではひばりがまるで砂さと糖うみ水ずのようにふるえて、すきとおった空気いっぱいやっているのです。もう誰だれだって胸むね中じゅうからもくもく湧わいてくるうれしさに笑い出さないでいられるでしょうか。そうでなければ無む理りに口を横よこに大きくしたり、わざと額ひたいをしかめたりしてそれをごまかしているのです。
(コロナは六十三万二百
※[#ト音記号、48-12]‥‥‥
※[#ト音記号、48-13]‥‥‥
ああきれいだ、まるでまっ赤 な花火のようだよ。)
それはリシウムの※[#ト音記号、48-12]‥‥‥
※[#ト音記号、48-13]‥‥‥
ああきれいだ、まるでまっ
(※[#ト音記号、49-8]‥‥‥
コロナは三十七万十九
※[#ト音記号、49-10]‥‥‥
※[#ト音記号、49-11]‥‥‥ )
くずれかかったコロナは三十七万十九
※[#ト音記号、49-10]‥‥‥
※[#ト音記号、49-11]‥‥‥ )
(コロナは六十七万四千
※[#ト音記号、50-6]‥‥‥
※[#ト音記号、50-7]‥‥‥ )
※[#ト音記号、50-6]‥‥‥
※[#ト音記号、50-7]‥‥‥ )
さあ、ではみんなでこいつを下した台だいの麦ばたけまで持もって行こう、こっちの崖がけはあんまり急きゅうですからやっぱり女学校の裏うらをまわって楊やなぎの木のあるとこの坂さかをおりて行きましょう。大だい丈じょ夫うぶ二十分かかりません。なるべくせいの似にたような人と、二ふた人りで一つずつかついで下さい。そうです、町の裏を通って行くのです。阿あべ部く君んはいっしょに行くひとがない、それはぼくといっしょに行こう。ああ鳴っている、鳴っている、そこらいちめん鳴っている太陽マジックの歌をごらんなさい。
(※[#ト音記号、51-1]‥‥‥
※[#ト音記号、51-2]‥‥‥
コロナは八十三万五百
※[#ト音記号、51-4]‥‥‥
※[#ト音記号、51-5]‥‥‥ )
※[#ト音記号、51-2]‥‥‥
コロナは八十三万五百
※[#ト音記号、51-4]‥‥‥
※[#ト音記号、51-5]‥‥‥ )
まぶしい山の雪の反はん射しゃです。わたくしがはたらきながら、また重おもいものをはこびながら、手で水をすくうことも考えることのできないときは、そこから白びかりが氷こおりのようにわたくしの咽の喉どに寄よせてきて、こくっとわたくしの咽の喉どを鳴らし、すっかりなおしてしまうのです。それにいまならぼくたちの膝ひざはまるで上じょ等うとうのばねのようです。去きょ年ねんの秋のようにあんなつめたい風のなかなら仕しご事ともずいぶんひどかったのですけれども、いまならあんまり楽でただ少し肩かたの重おも苦くるしいのをこらえるだけです。それだって却かえって胸むねがあつくなっていい気きも持ちなくらいです。
(コロナは六十三万十五
※[#ト音記号、52-2]‥‥‥
※[#ト音記号、52-3]‥‥‥ )
おおこまどり、鳴いて行く鳴いて行く、※[#ト音記号、52-2]‥‥‥
※[#ト音記号、52-3]‥‥‥ )
かえれ、こまどり、アカシヤづくり。
赤の上着 に野やまを越 えて
赤の
(※[#ト音記号、52-8]‥‥‥
※[#ト音記号、52-9]‥‥‥
コロナは三十七万二千
※[#ト音記号、52-11]‥‥‥ )
そこの角から※[#ト音記号、52-9]‥‥‥
コロナは三十七万二千
※[#ト音記号、52-11]‥‥‥ )
さあ、春だ、うたったり走ったり、とびあがったりするがいい。
(コロナは八万三千十九
※[#ト音記号、53-8]‥‥‥
※[#ト音記号、53-9]‥‥‥ )
※[#ト音記号、53-8]‥‥‥
※[#ト音記号、53-9]‥‥‥ )
(コロナは八万三千十九)
わたくしたちが
(コロナは十万八千二百
※[#ト音記号、54-7]‥‥‥
※[#ト音記号、54-8]‥‥‥ )
※[#ト音記号、54-7]‥‥‥
※[#ト音記号、54-8]‥‥‥ )
こんどは帰りはわたくしたちは近みちをしてあの急きゅうな坂さかをのぼりましょう。あすこの坂なら杉すぎの木が昆こん布ぶかびろうどのようです。阿あべ部く君ん、だまってそらを見ながらあるいていて一体何を見ているの。そうそう、青ぞらのあんな高いとこ、巻けん雲うんさえ浮うかびそうに見えるとこを、三羽の鷹たかかなにかの鳥が、それとも鶴つるかスワンでしょうか、三またの槍やりの穂ほのようにはねをのばして白く光ってとんで行きます。
(コロナは三十七万二百
※[#ト音記号、55-1]‥‥‥
※[#ト音記号、55-2]‥‥‥ )
※[#ト音記号、55-1]‥‥‥
※[#ト音記号、55-2]‥‥‥ )
おや、このせきの去年のちいさな丸太の橋はしは、雪ゆき代しろ水みずで流ながれたな、からだだけならすぐ跳とべるんだが肥こえ桶おけをどうしような。阿部君、まず跳び越こえてください。うまい、少しぐちゃっと苔こけにはいったけれども、まあいいねえ、それではぼくはいまこっちで桶をつるすから、そっちでとってくれ給たまえ。そら、重おもい、ぼくは起きじ重ゅう機きの一いっ種しゅだよ。重い、ほう、天びん棒ぼうがひとりでに、磁じし石ゃくのように君きみの手へ吸すい着ついて行った。太たい陽ようマジックなんだほんとうに。うまい。
(※[#ト音記号、55-9]‥‥‥
※[#ト音記号、55-10]‥‥‥ )
※[#ト音記号、55-10]‥‥‥ )