︹霧降る萱の細みちに︺
宮沢賢治
霧降る萱の細みちに
われをいぶかり腕組める
なはたくましき漢子かな
白き上着はよそへども
ひそに醸せるなが酒を
うち索めたるわれならず
はがねの槌は手にあれど
ながしづかなる山畑に
銅を探らんわれならず
検土の杖はになへども
四方にすだけるむらどりの
一羽もために落ちざらん
土をけみして培(つちかひ)の
企画をなさんつとめのみ
さあればなれよ高萱の
群うち縫へるこのみちを
わがためにこそひらけかし
権現山のいたゞきの
黒き巌は何やらん
霧の中より光り出づるを
底本‥﹁新修宮沢賢治全集 第六巻﹂筑摩書房
1980︵昭和55︶年2月15日初版第1刷発行
※︹︺付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。
入力‥junk
校正‥土屋隆
2011年5月14日作成
青空文庫作成ファイル‥
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