与太郎は毎日隣村へ遊びに行って、まだ日の暮れぬうちに森を通って帰って来ました。
﹁あの森は狸がいていろいろのものに化けるから、日の暮れぬうちに帰らぬと怖ろしいぞ﹂
とお母さんが言いきかせているからです。
ある日、太郎はうっかり遊び過ごして真暗になって帰って来ました。森の中に入ると、忽ち一丈もある位の一つ目入道が出ました。
﹁ヤア。大きな伯父さんが出て来た。眼玉が一つしかないんだね。面白いなあ。僕と一緒にうちへ遊びに来ないかい﹂
と与太郎は言いました。一つ目入道は見ているうちにロクロ首になりました。
﹁ヤア。綺麗な首の長い姉さんになった。変だなあ。どうしてそんなに長くなるの。もっともっと長くして御覧﹂
と言いました。ロクロ首は今度は鬼の姿になりました。
﹁オヤ、鬼になった。お節句の人形によく似てる。可お笑かしいなあ。もっといろんなものになって御覧﹂
化け物は与太郎がちっとも怖がらないのでつまらなくなって、狸になってしまいました。それを見ると与太郎は真青になって、
﹁ワア狸が出たあ。化けると大変だ。助けてくれ﹂
と言いながら一所懸命逃げて行きました。