﹁ある人が橋の下で友達に会う約束をして待っていた。そのうちに雨が降って水がだんだん深くなって、その人の胸まで来た。けれどもその人は約束を守って立っていた。そのうちに水はいよいよ深くなって、その人の口の処まで来た。けれどもその人は動かなかった。そのうちに水は口から鼻から眼まで来て、とうとうその人は溺れ死んでしまった。だから約束を守るのはわるい事だ﹂
とある人が言いました。するとも一人の人がこう尋ねました。
﹁橋の下で溺れ死ぬ約束をしたのじゃないだろう。その人に間違いなく会うために約束をしたのだから、ほかのよくわかる処で待っていたっていいじゃないか﹂
﹁そうじゃない﹂
と初めの人は言いました。
﹁大体、約束を守ると言う事は馬鹿な事なんだ﹂
するとも一人の人がこう言いました。
﹁つまりお前は自分だけ約束を守らないで、ほかの人にだけ守って貰いたいのだろう﹂