虫の生命

夢野久作




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街には人の冬ごもり
明るい楽しい美しい
樹々には虫の冬ごもり
暗い悲しいたよりない

冬の夜すがら鳴る風や
降る雪霜のしみじみと
たよりに思う樫の樹は
りたおされて枯らされて
炭焼竈に入れられて
明日は深山に立つけぶり

その樫の樹ともろ共に
灰か煙りかかた炭か
あとかたもなく消えて行く
悲しい悲しいそのいのち
たれがあわれと思おうか

小さい小さい虫一つ
たれがあわれと思おうか
 姿
 
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 鹿鹿
 調
 
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小さな虫を救うても
救うた生命いのちは只一つ
象の生命いのちを助けても
助けた生命いのちは只一つ
虫でも象でも救われた
その有り難さは変らない
虫でも象でも同様に
助けた心の美しさ

人の生命いのちを助くるは
人の心を持った人

虫の生命いのちを助くるは
神の心を持った人

みんな仕えよ神様に
御礼申せよ神様に
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 姿
鹿鹿()()()()
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1
   199245221
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2000131
200653

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●表記について