泡鳴五部作

發展

岩野泡鳴






 宿
 ()宿
 
()()
 
 
 
 

 姿

 
 

 

 








()



 
 
 
 便
鹿




 ()()


 




宿

宿










 
()







調滿 





調滿滿



調

 




姿



 ()()便
 
 

 椿
 調


 
 

 

 便
稿
 
 
 


 
 
稿
 


 
 
禿
 
 
「熱くて 堪らない 日が
 噛んだ 氷の やうに しみ込む 頃だ、
 眞夏 の 空に、
 蝉 の 聲が じい/\
 僕の あたまを ※(「睹のつくり/火」、第3水準1-87-52)えくり返す。
 廊下 の 柱と 柱とに ゆはへて
 低く 釣るした ハンモク の 中で、
 僕は たわいもない からだ を

 たわいもなく 横たへた。


 自分の からだの か、何だか 分らない 重みが、
 左右に 搖れて、
 ありも しない 風を 待つてゐる。

 と思つたら 突然 自分は 百萬年 以前 高い 木の 枝に 睡る 猿で あつた と いふ 考へが 浮んだ。


 きのふは 既に 前世界だ――
 ゆうべ 高い ところ から 落ちる 夢を 見た のは、
 夢 では なく 實際 おほ昔、
 生繁つた 深林 の
 枝 から 枝へ 渡る 時に あやまつて

 すべり落ちた 記憶で あらう。


 今 落ちない の は 不思議だ と、
 仰向いて 空を 見た。
 淺い ひさし と それに かぶさつて ゐる
 庭の 松の木 の 間 から、
 熱した おほ空 の 廣がり が 迫つて 來て、
 僕の 呼吸が 苦しく なつた。
 前世界 から 生活に 疲れて 來た からだが、
 ハンモク の 中で 搖られて ゐる 樣だ。
 自分の 身が おもた過ぎて、

 何にも する 勇氣が ない。


 このまま 死ぬる なら 死んでも いいが、
 さりとて、 又未練の ある この人生。
 いつまでも 眠つて ゐられる もの なら、
 死んで終うの とは 違つて 安心 だらうが、さう/\ 永遠 まで
 頼みの 綱は 朽ちないで ゐなからう。
 と どこ からか 羽根が 生えた やうに、
 僕の 考へは 百萬年 以前 から

 百萬年 以後へ 飛んだ。


 くだらない 空想だ と 思つた が、
 何だか 醒めて ゐて、襲はれる 氣持ちだ。
 夏の 蒸し熱い 呼吸 は、

 乃ち、僕の 呼吸 で あつた。


ああ 金が 欲しい!
 女が 戀しい!
 大事業が したい!
 いい 句を 得たい!
 さま/″\ の 考へが 一ときに 浮んで 來て、

 蝉の 聲に 不安の 和聲くわせいを 添えた。


 ハンモクは 實に 不安な 住まひだ、
 ぶら/\ 動く たんびに、

    

 
簿
()()
 ()調

 
 


 
 
 


 
 


滿

 ()()()()
()()
()()


 ()

 ()()
 

()()
()()退
 


 綿




調




調


















()()


 
鹿 







 
 使


 

 
 
 調
稿
 
 
 
使
()



 
 


 調

 
 
 

 



 
 
 


 







宿
 

 


西調










調宿調




調





鹿

()()調




鹿
 



 
 
 
















 









鹿 ()()

  
 
調 穿










()()
 
 
西
 
 
 


 
 


 
 






 
 





 
 
 




()


調






 

 
 
 
 
 



 


 禿姿
 宿



 
 
 使
 
 
()()














調


鹿

 
 
宿宿
 
 

 



禿

 

 
 
  





()()





 
 ()()
 
 
 

 
 


 
 

()()

 使


 
 
 




 


 
 


 

 
 宿
 

 


 
 
 

 
鹿







 








 





 
 


()









 稿


 






 
調
使



 
 
 
 
()

 







 

 












()()調
 









 
※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)

稿





 


 ()()
 綿()()
 便

  
 




 ()()()()

 
 
 

 
「熱き 眞砂 の 上を 撫でて
 われは 獨り し 物を 思へば、
 遠き 深み の 浪は 打ちて
 手なる 下より 響き來たる。
 おのが 小胸も 爲めに 振ひ、
 千々の 亂れは 濱の 小砂利。」
 ()()()()()
 
 


 
















 
 
宿

 宿
 

 竿

 



 




 使宿
 調宿
 













 





 ()()宿
 
使
        ×        ×        ×        ×
 
  





 宿
()()
 ()()
 
宿
 ()()

 
 


 宿

 ()()()


 
 
 
()()
 
()

使




調





調



 

 




 


調






忿








調





 ()

 



 

 鹿
 

 








 ()

 
 

 ()稿
稿
 
 西
 



使()

 



 
 
 宿
 
 禿
 ()()
 
 西宿

 ()
 稿
稿



()()()

調西調

 
 
 











調


 

宿
 
 稿
 
 

 
()()()()()

 
()()


忿
鹿    

 

 ()()
 稿
 鹿
 
 宿姿
 
 
 


 





 
宿 
 
 






  



鹿

 


鹿

稿



 使
 姿
 

宿







 ()

稿稿




















 

()()

 












































 鹿()




 

 
 
 便
 



 
 便
 
()()

 稿
 
 







宿稿便
 
 
宿

 
 宿
 ()
 
 
滿

 

宿
()宿
 姿


稿
 ()


 



 
 
 

 
鹿
 

 調稿
 ()()
 

 宿稿
 



 ()()
 滿滿 
 
 ()
「恰も 消えない 露――日輪 の 光りを 晝間 から 一身に 吸ひ込み、
 目くらの 夜を 澤市 の 妻 となる 氣 だらう。」
 
 
 滿



 
 稿
 
 

 

()
便 宿

 
 調
 使
 

   () 鹿

 ()調
宿

 ()
 
  


 
 姿忿
 

 
 
 
 ()

 宿
 

 宿姿
 
何時ゐつ また 會はれよう――もう、二三――
 千萬年 も 隔つて ゐる やうだ。」
 こんな詩句も出たし、また、
「君が ゐないと 歌は いくら でも 出來るが
 さて、僕は いつ までも 君と 離れて ゐたく ない。」
 稿宿()
「今迄 晴れてゐた 空が 午後から 曇つて、
 富士の 方面 から 段々 の 大風雨、
 雨は ちぎつて 投げる やう――おほ神鳴り も 聽える。
 急がしい あま足は 四方の 山々を とざす、
 宿の 女中 共は まだ 時でも ないのに 雨戸を 締める。
 晝間を 殆ど 眞ツ暗な 闇、
 之を 時々 破るのは おほ稻妻 の 屈折――
 ぴかり、ぴかり!
 また、ぴかり ぴかり!
 その 明滅 の 間に しか
 萬物 と僕等 との いのちは なかつた。
 然し 戀の 續く 如く この 嵐も 續いて
 本統の 夜に なつた 時は、まこと 僕等の 世界だ――
 嵐は 二人の 枕元に 響いて
 物凄い、奈落 の 眠り(これが 戀の 心だ)を 實現した。
 宇宙 萬物 を 無 にした 妖女は 鳥ちやん だ。
 影も 形も ない 肉の あツたか味、

      

鹿
 
 鹿滿
 

  稿
宿
 


 ()()
 宿
 ()()()()
 
 



 

 


 鹿

 

 

調






宿()()








 


()()
 




















鹿鹿 鹿 鹿


使稿宿
 調

 退







 
 
 
 

 ()
 







調




 
 






 

 

 使












 
()()西



 ()()

調稿



 

滿



 
 
稿
 
 
稿






 ()
 
 











 

 



 

 
 ()()




調
 



 
 
 

 
 

 
 
 
 
 
 

 
 


 西


 

()
 
 



 
 
()()

 
 
 滿

 

()





鹿
宿
宿





使
 
鹿

 ()()()
()()()
調




 
 






鹿()

()() 
鹿
 滿
 

 ()
()()()鹿 






鹿 

鹿

 滿
 調





 
  宿
 
 調
 
 





 
 

 ()

調



 


 












()








宿

()

鹿

調()




 






 
 


 
 


宿



 使



宿 

 姿






 


 
調




調







滿
調調






退
 退()
 


 








 ()()











 
鹿
 鹿

 





 








 




 調鹿 

()



西調



 
 ()()()使
 
 
 
 


 
 
 


 

 
 
 
 
 調

 
 西
 
 
 
 
 姿

 
 姿

 使
 


 
 

 
 稿
 稿
 稿鹿
 

 










 
 
 
 鹿

 
 

 
 
 
 
 鹿


 
 
 
 



 
 

 ()()
 辿
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 

 鹿


 
 
 鹿
 
 
 滿
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
()





 
 
()









 使
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 

 
 ()
 
 







 滿



 調
 
 
 鹿

 調調
 ()()()

 
 
 




 

 



 

 ()()()宿
 
 ()()()
 
 

 
 綿姿
鹿

 西
 
 宿
 
綿





 

 
 









 
 


 使貿貿

 







  
 使

()()
西()()
 
 調

鹿
 


調



 














 
   195530725
   199461153

   1911441216191245325
5-86




2016422

http://www.aozora.gr.jp/




●表記について


●図書カード