其中日記

(七)

種田山頭火










 廿




西

























 
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 廿












 便


 廿



※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)姿













 廿

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我昔所造諸悪業――
皆由無始貪瞋痴――
従身口意之所生――
一切我今皆懺悔――


 












 




カルモチンよりアルコール
ちよいと一杯やりましよか
















 


 

槿
 






 


 








   廿




 





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()()138-14()

139-3








 




 




 







 

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調








 





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便姿



 廿















 







 廿

調












 廿






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 廿









・柿の葉や実やおしみなくふる
・みごもつていそがしい虫でまさに秋風
・お彼岸花もをはりのいろのきたない雨
・ヱスもわたしも腹をへらして高い空



 廿







調



 廿









 





 


 廿






竿


 



 廿








    

   




 廿


















 九月三十日

霧雨、午後は晴。
武二君から返信、さらに返信を書く――
……失礼ながら打明けていへば、私は過去及現在の生活が続くならば、続けなければならないやうならば、私は自殺でもする外ないのです。
……行商は労働です、お言葉の通りです、そして行乞も労働です、もつと労働です、ただ筋肉労働として行乞しなければ現代の情勢では食つてゆけないのです。
すべてが生存――生活とはいへませんね――のあえぎです、私が行乞を行商にふりかへようとするのも、封建的遺習乃至資本主義社会の崩壊過程を暗示してゐますね。……




 








 




姿















 




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不眠と不昧と、そして転向。














便


 


姿



 

















 




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便


 















   

 



 





 




   

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┌──────────────────────┐
│近在散歩、                 │
│  どこへゆくか、いつもどるか、わかりません│
└──────────────────────┘
かう書き残して置いて歩く、時計をまげて一杯やる、そして自動車に乗り込んでしまつた。
大田の町へ運ばれた、そして伊東君のお客となつた、酔ふた、眠つた。

 十月十四日

曇、大田の伊東君の家庭の中にゐた。
身心がすぐれないので、早々帰庵。
衰へたるかな、山頭火!
米がない、銭もない、麦はある、それを炊いて食べる、これがホントウの麦飯だ、あまりうまくはないな。

 
 





 






 







 








 


 



 







 












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 廿





 廿




 
 



 廿







 ()廿
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 廿
       
 廿
 
 

 







 
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 十一月二日

晴、風。――
さびしけれどもしづかなり
まづしけれどもやすらかなり



 



アキゾラハルカニウレシガルサントウカ









 






 














   


   



 





調



   





 













 

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宿











 










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便
   


 
   

 




 


 

  






  






便

  




()()192-7






 


   
 


  










 姿




   

   
 










  






姿












   


   

()()姿

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便
   

 
   

   
 


  








西






 


  




※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)





















   

   





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調

使





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※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)



 廿 











  


                
                
   
               
     




          
    
    
     
     
     



 廿 


姿






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退

   
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 廿 






   




 廿 










  







調

   

   



  




宿







   

   

 



  


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宿

   




  退











  





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   「のらくら手記」素材
□一杯の濁酒、それがどんなに彼を慰めるか。
□「腹が立つ」と「腹を立てる」と。
□人生は所詮割れないものであるが、結局は一に一を加へてゆくものである。
□当為 s※(ダイエレシス付きO小文字)llen と必然 m※(ダイエレシス付きU小文字)ssen ――私の生き方。
□生存 existence と生活 living ――私のくらし。
□日本人には何よりも米がありがたい!



  







   「のらくら手記」素材
□老祖母と夏マヽ柑の種。
□したいこと、しなければならないこと、しないではゐられこマヽと。
 労働と遊戯、強制と自由。
□日本人の食慾の究極は梅干に茶漬か、炊立飯に味噌汁か、新漬に濁酒か。
□空想を実行する人、実行を空想する人。
□知ること、忘れること。
□自然観照――自己観照――人間観照。
□ランプと新聞。
味ふ心、五十にして物の味を知る、知味
□頓死――ころり徃生。
   ぐうたら手記(覚書)
 行乞[#「行乞」は枠囲み] 三輪空寂、三つの功徳
      一、腹を立てなくなつた事
      一、物を粗末にしなくなつた事
      一、何を食べてもおいしくなつた事
 年の暮[#「年の暮」は枠囲み] 年くれぬ笠きて草鞋はきながら
 冬ごもり[#「冬ごもり」は枠囲み] 冬ごもりまたよりそはむこの柱
□月と緑平と私と酒。
鼠のゐない家[#「鼠のゐない家、」は底本では「鼠のゐない家、」]油虫[#「油虫は」は底本では「油虫は」]私を神経衰弱にする。
□簑虫よ、簑虫よ。
□炬燵といふもの。
 日本家屋、日本国土、日本人。
□妙な夢のいろ/\。
□音立てずして、しん/\として燃ゆる火
小さくとも完いもの[#「小さくとも完いもの、」は底本では「小さくとも完いもの、」]大きくて完からざるものよりも。
 俳句――俳句的――俳句性



  


便


  








   「のらくら手記」素材
□忘年会とは面白い、忘の字が意味深長だ。
□世間を卒業してしまつてはかへつて面白くない、悟れば空々寂々、迷うてゐるからこそ、花も咲き鳥も啼く。……
藪柑子! 何といふつつましさ、安分知足のすがただ。
小器晩成、それが私だつた、やはり知命の五十代。
□炬燵と濁酒とうどんとカレーライス!
□思索、読書、句作、散歩。
噛みしめた味、人生五十年の味、命を知り耳順ふところの味。
□性慾はなくなつた、食慾がなくなりつつある、つぎには何がなくなるか!


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退

   「のらくら手記」素材
□鱚といふ魚は、ほんたうにキレイだ、海の鮎だ、夏から秋への魚として申分なし、焼いてよろしく、刺身にしてわるくない。
香煎をすすりつつ追憶にふける。
□辛いものから甘いものへ、酒を飲まずにゐると、菓子や餅が食べたくなる。
□生きてゐることのよろこび、生を楽しむ
□読書傾向の転移、老人の愛読書として。
雑炊といふものは。――



  


退






 




  


調



便











    




  





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宿


   「ぐうたら手記」素材
凝心と放心、求心力と遠心力、知ることと忘れること。
愚に返つて愚を守る、本来自然の生活。
享楽から感謝へ。
□私は恋といふものを知らない男である、かつて女を愛したこともなければ、女から愛されたこともない(少しも恋に似たものを感じなかつたとはいひきれないが)、私は何よりも酒が好きだ、恋の味は酒の味のやうなものではあるまいかと、時々考へては微苦笑を洩らす私である、酒は液体だが女は生き物だ、私には女よりも酒が向いてゐるのだらう!






 








   「落葉抄」
 小春なごやかな屋根をつくらふ
・小春日和の豆腐屋の笛がもうおひるどき
・おしつこさせる陽がまとも
・人も藁塚もならんであたたか
・落葉が鳴るだらう足音を待つてゐる(敬坊に)
・建ていそぐ大工の音が遠く師走の月あかり
・冬ごもりの袂ぐさのこんなにも
・あのみちのどこへゆく冬山こえて(再録)
   「ぐうたら手記」素材
□したいことはいろ/\あるけれど、しなければならないことはあまりない、さてもノンキな年の暮ではある。
□性慾がなくなると、むなしいしづけさがやつてくる、食慾がなくなると、はかないやすけさがやつてくる。
後光のさす人物、余韻余情のある生活。
□単純――率直――真実、それが私の生活でなければならない。
□私も私自身についてアケスケに話したり書いたりすることが出来るやうになつた、自他共に隠さず衒はず、佞らず飾らない私達でなければならない。
□朴念人――妙好人。
物忘れ、それは老人の特権でもあり恩寵でもある。
□一鉢千家飯(行乞心理)。
□カネとゼニ(金と銭とは同意語のものだが)。
□南国の冬。
□自殺の方法いろ/\。
   「ぐうたら手記」おぼえがき
何でもない物の美しさ
□水を大切にせよ。
□物そのものの値打、殊に食物について。
□倹約人、浪費者、命がけの遊蕩(私の過去)。
□私の鳥目と老祖母(鱧の肝のお汁)。
              ┌或る老婆
□矢足部落に於ける生死去来。│
              └盲女
          ┌霊台寺   ┌カリン
□菩提樹のおもひで。│      │
          └味取観音  └イクリ
□枯れた枇杷の木(其中庵)。
椿に目白(梅に鶯のやうに)。
現実を味解せよ
□手紙風呂、日記風呂
□私の生活はまづ私自身に真実なものでなければならない。



  














    




   


       

   

   

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稿
宿


   「ぐうたら手記」
このみちをゆく――このみちをゆくより外ないから、このみちを行かずにはゐられないから――これが私の句作道だ。
姿
□捨てて捨てて、捨てても捨てても捨てきらないものが、それが物の本質であらう(さういふ核心はほんたうには存在してゐないのだらうが)。
□雲丹を味はひつつ物のヱツセンスについて考へた。
□大蘇鉄の話(旦浦時代の父の追憶)古鉄、考へやう一つ、吉凶禍福は物のうらおもて。



  


便
稿






   

   

       
          




 廿 




退
   「ぐうたら手記」素材
□下手くそで間のぬけたもの、好きだね、気がきいて出来すぎたもの、いやだね。
□妹がくれたチヤンチヤンコの話。
 冬ごもりには炬燵と共にふさわしい。
 シヱーターきては冬ごもりらしくない(ネンネコ、サル、胴着、追憶ばかり)。
□したいことしかしない私である!
□なくて困る歯、あつて困る脱肛肉、世の中は思ふやうにはならない、ほんとにきたない老の繰言。



 廿 

※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)

 


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宿









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※(「火+主」、第3水準1-87-40)
       











   



   




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※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)








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   宿


宿


便

   



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250-2

便辿宿
   「ぐうたら手記」素材
大根の煮たの、あの香、あの味、あの団欒、あの雰囲気!
□創作の苦楽――遊戯、表現、苦即楽。
□味噌汁と漬物と梅干。
□牡蠣と雲丹。
五十才にして五十年の非を知る
[#二重四角、205-13]食慾があつて食物がないのと、食物はあるのに食慾がないのと、さてどちらがよいか、いづれを択ぶか!
酒中酒尽――空の世界、有無超脱。
非有、非無、非非有、非非無。……



 廿 








 



 便
 



  











  





Slowly and Steadily. 


穿











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底本:「山頭火全集 第六巻」春陽堂書店
   1987(昭和62)年1月25日第1刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※複数行にかかる中括弧には、けい線素片をあてました。
入力:小林繁雄
校正:仙酔ゑびす
2009年7月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。







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JIS X 0213



調

JIS X 0213-


「飲のへん+乍」    138-14、139-3
「滅」の「さんずい」に代えて「火」    192-7
二重四角    250-2、205-13