桃の雫

島崎藤村






 


(岩波書店の雜誌「文學」の創刊に寄す)


 辿



 ()()()()()()()()()調
 ()()()
 



 

 便()

 
 

 
 ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

 ()()()宿使()()()()()

 

 使

 
()()
 滿

昭和六年のはじめに
(『夜明け前』第一部下卷を草する頃)


 


 
 沿

 

 西西

 

寢物語
(昭和八年のはじめ、『夜明け前』第二部上卷の稿を繼ぐ頃)




 ()※(「魚+陸のつくり」、第3水準1-94-44)()()()()()()()()()竿

 

 

 ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

 麿西

 滿

人々をしぐれよ宿は寒くとも
 姿



 調
 
 辿

 滿



 調()()

 調

 調



 ()()()

 

囘顧
(『日本文學講座』に寄す)


 ()()調

 

 調使麿
 ()()
ひむがしのにかぎろひのたつ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ
 麿

 ()()麿麿滿
 滿()()

 麿

 ()()()()

 

 調
 ()

 
 ()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)鹿
 使

 

 

 

 
 使

 



 ()()()()
 

若葉して御眼の雫ぬぐはばや
 ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)鹿
()



()
宿姿

 

 

 

 



 

 宿
 西
 
 
 ()()宿宿()()()()()()宿()宿※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
 ()便()()()()()西宿
 
便()()便便便
 

 
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 ()()()()宿()()()()()()()()宿
 
 ()()()綿
 

 
 



 
 

 ()
 滿()()

 姿姿

 

 宿宿

 西退()()()

 姿
 ()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

 ()()()

 ()()宿宿

 

 ()()()()

 西




 

 
 

餞の言葉
(新潮社發行大衆雜誌『日の出』の創刊に際して)


()
()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿
 姿
 滿



夏麻引なつそび海上潟うなかみがたの沖つに船はとゞめむさ夜ふけにけり
 ()()



 
 
 西宿西宿※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)()()西()()西使宿()()()()
 
3
姿






3
  便
                      
 宿宿※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
 宿西西
便殿
     
 便

 
※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)
 
 便宿
 辿西
西西
調西西
 
 滿西



()
 
()()
 
 ()()調
 ()()
新年に一つまゐらう松の鮨
 
君が手をわがふところに夜寒かな
 この句なぞ知十君の生涯の中でいつ頃に出來たものか、その邊はよく知らないが、いかにも眞情がうち出してあつて好ましい。
青簾壁はまだ中塗りのまゝ
いつまでも簾の青き願かな
 わたしは都會詩人としての知十君の特色をその夏の句に見つけることが多いと思ひ、殊に句の姿も涼しいと思ふものであるが、こゝには盡しがたい。



 ()()姿※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)調()()()姿滿()



 

 
 姿

 ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
 ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

 
 

小半日
(戸川秋骨君に誘はれて喜多氏方例會の席に小半日を送る)


 ()()()()

 調調()()調

 

 滿

 

 

 

 姿

 ()()姿

 

 

 

 

 辿



 

 調調

 ()()
年寄に留守をあづけて秋の旅
唐黍たうきびは採りてたうべよ留守のほど
朝顏の垣根に寄るや暇乞
 ()()
 便

 

 
 

 ()

 宿調調調

 滿宿滿使()()()滿()
 宿




九日。
十日。
京都蛸藥師通り富小路西入る、千切屋に投宿。
十一日。

西
十二日。

()()
使
西
十三日。
滿西滿西()()
十四日。

※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)西

十五日。
歸京。
十六日。





 ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)西

 滿

 姿

 宿
 

 使西
 

 西宿

 

 ()



 使姿西※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)()()
 西使
 西※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)()()()()
 ()西使
 



 

破屋
散文にて譯し試みたる楊岐の詩


 滿



 ()



 

 

 退
 ()()

 
 



 



 



玉露凋傷楓樹林
巫山巫峽氣蕭森
江間波浪兼天涌
塞上風雲接地陰
叢菊兩開他日涙
孤舟一繋故園心
寒衣處々催刀尺
白帝城高急暮砧
 
 
 滿



 
 

月の鏡小春に見るや目正月
あちこちや面々さばき柳髮
うかれけり人や初瀬の山ざくら
糸櫻こやかへるさの足もつれ
 芭蕉二十一歳から二十四歳頃へかけての青年期の句である。
 若主人藤堂良忠は貞徳の流れを酌み、貞室と季吟とに師事し、談林派の宗因とも交り、自ら蝉吟と號したといふほどの人である。この人の伊賀上野の家中に與へた感化は大きいものであつたらう。當時の人の句を編んだものには、伊賀の作者三十六人を數へるといふ。芭蕉は二十三歳の頃に、この好い若主人を失つてゐる。この人の死が年若な芭蕉に取つて深い打撃であつたことは爭はれまい――假令、その遺骨を高野山に納めたなどの説はよく分らないまでも。

降る音や耳もすうなる梅の雨
夕顏にみとるゝや身もうかりひよん
荻の聲こや秋風の口うつし
女夫鹿めをしかや毛に毛がそろふて毛むつかし
雲とへだつ友かやかりの生わかれ
 
 姿

波の花と雪もや水のかへり花
この梅に牛も初音と鳴きつべし
富士の風や扇にのせて江戸土産
近江蚊屋汗やさゞ波夜の床
庭訓ていきんの往來誰が文庫より今朝の春
雨の日や世間の秋を堺町
 これは芭蕉が三十一歳より三十六歳の頃へかけての句である。
 芭蕉がどうして江戸へ出るやうになつたかは明かでないが、これは伊賀上野の藤堂家を辭し、江戸に生活を送つた頃の作である。俳諧作者として漸く一家を成さうとする芭蕉が、いろ/\の意味で修業を重ねたのも、この頃であるらしい。
 芭蕉とても伊賀時代から、いきなり野ざらしの境地に飛び込んだではない。いろ/\な人の世話になり、いろ/\な仕事にも關係して、江戸の市中に流寓してゐたらしいのもこの時代である。伊賀に歸省し、京都に赴き、歌道の奧儀について季吟から教へらるゝところの多かつたといふもまたこの時代である。

夜ルひそかニ蟲は月下の栗を穿つ
いづくしぐれ傘を手にさげて歸る僧
盛りじや花にそゞろ浮法師ぬめり妻
夕顏の白ク夜ルの後架に紙燭とりて
櫓の聲波ヲ打て腸氷る夜やなみだ
髭風を吹て暮秋歎ズルハ誰ガ子ゾ
 ()()調
 姿調

 
雪の朝獨り干鮭ほしかを噛み得たり
芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉
枯枝に烏のとまりたるや秋の暮
 更にまた次のやうな句もある。
はせを植てまづにくむ荻の二葉哉
あさがほに我はめしくふをとこ哉
世にふるはさらに宗祇のやどり哉
 こんな風に芭蕉はまことの詩人らしい眼を開いて行つた。新しく興つた元祿の俳諧と、すでに先蹤のあつた天明の俳諧との相違も、そこにあると思ふ。わたしは芭蕉の青年期を振り返つて見て、この人にもこんな彷徨の時代があつたかと考へる。それほど周圍は暗かつたのだ。談林風の輕い滑稽はあつても、生氣の充實した好いユウモアに達し得たものはなかつたのだ。さういふ中で、芭蕉がいろ/\なものを振ひ捨てゝ、『猿蓑』の深さにまで詩の境地を進めて行つたあの不斷の努力と精進とを想ひ見ると、あれほど動搖の多かつたその青年時代もまたなつかしい。おそらく年若い頃の芭蕉が才氣にまかせて歩いた路はわたしたちの想像以上ではなかつたらうか。何程の精神の革新がそこに持ち來されたことだらう。さう想つて見ると、あの『一つぬいでうしろに負ひぬ』の更衣の吟も、たゞの旅路の口ずさみとは思はれない。

本居宣長


 明治維新に對する本居宣長の位置は、あたかも佛蘭西革命に對するルウソオの位置に似てゐる。彼に『ヌウ※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ル・エロイズ』があれば、是に物のあはれの説があり、戀愛の説があるのも似てゐる。わたしは儒教風な男女關係の教に對して大膽に戀愛を肯定して見せた最初の人は明治年代の北村透谷だとばかり思つてゐたが、本居宣長の戀愛觀に接した時に、この自分の考へ方を改めなければならなかつた。この人の戀愛生活を探つて行つて見たら、どんな思ひがけないものが、出て來まいものでもあるまいといふ氣もする。兎もあれ、あのルウソオと殆んど時代を同じくして、東西符節を合せたやうに『自然に歸れ』と教へた人が吾國にも生れたといふことは、不思議なくらゐに思はれる。假令、その『自然』の内容に關しては、東西おのづから異なるところがあり、さう概括的には言つてしまへないまでも。
 本居宣長は新しい時代を感知しそれに呼びかけ、又その道をあけたといふべき人で、徳川時代を見渡したところ近代人の父とも呼ばるべきはおそらくこの人かと私は心ひそかにさう思つて來た。

トルストイ
(原久一郎君よりその譯書『トルストイの聖書』のために、何か書きつけることを求められて。)


 これを書いた頃のトルストイが部屋の外には、すでに薄暮が迫つてゐたやうな氣がする。彼は部屋を明るくしようとして燈火をつけた。それがこの基督傳だ。トルストイの長い生涯の中でも、『アンナ・カレニナ』製作後は別人の觀があるが、今度わたしはこの書を手にして見て、それほど彼を變へたものは彼の内部よりも、むしろ外部にあつたらうといふことを感知した。さすがに、これが簡淨な筆で書かれてあることは譯文によつてもよく窺はれて、かの釋迦の言行を録した阿含の精神にも近いかと思はれる。

チエホフ
(中村白葉君がチエホフの全著作を邦語に移すときゝて)


 姿
 

バルザック
(バルザック全集の刊行をよろこびて)


 バルザックに就いては今更多言を費すまでもない。問題は今日に於いていかにバルザックを讀むべきかにあらうと思ふ。バルザックに歸れとは世界大戰以前の當時に本國の佛蘭西に起つた一つの聲でもあつた。從來、吾國にはバルザックを知らうとするものはあつても、その著作の英譯せられたものはすくなく、比較的早く彼の作品に接した人達の中でも數種の英譯を手にし得たに過ぎなかつた。他の佛蘭西近代の作家にくらべて、彼の著作が吾國に傳へらるゝことのすくなかつた理由の一つは斯うした事情によるのであり、今一つは彼の大きさと深さとに入るためには相應の年月を要するからであつた。今囘、佛蘭西文學に精進する諸君の手によつてバルザック全集邦譯のごとき困難な仕事が企てられ、その著作の全貌を窺ひ知る機會の與へらるゝことは、何と言つてもよろこばしい。バルザックを讀む準備はわれひとの間に、すでに十分出來てゐると信ずるからである。

ゾラ
(ルゴン・マカアル叢書の編輯者より言葉を求められて)






 西滿271-11



 ()()沿
 調

 西

 

シェークスピア
(坪内逍遙博士が修訂完譯のシェークスピア全集成る)


 西西西西
 西
 祿祿西
 西西便西辿西西



 ()



 使



 

文壇出世作全集
(中央公論社創立五十周年の記念に)


 
 
 西便
 西稿
 
 



 ()()()


 滿()()

 



使
 稿
 
 
 ()
 
 
 
 
 





 
 ()()()()()



 

 姿()()調()()
 ()()()()使()()


TERRE



稿

 Le v※(アキュートアクセント付きE小文字)ritable cultivateur, dit-on, ne s'amuse pas avec la terre. Ceux qui ne sont pas agriculteurs peuvent s'imaginer q※(アキュートアクセント付きU小文字)ils travaillent la terre, mais, en r※(アキュートアクセント付きE小文字)alit※(アキュートアクセント付きE小文字), touchant inutilement le sol, ce ne sont pas des cultivateurs. Le vrai paysan ※(アキュートアクセント付きE小文字)vite de toucher la terre, car on s'ab※(サーカムフレックスアクセント付きI小文字)me la main, on ne peut supporter des travaux de longue haleine. Ceux qui ne sont pas cultivateurs se pr※(アキュートアクセント付きE小文字)cipitent pour toucher la terre de leurs mains d※(グレーブアクセント付きE小文字)s q※(アキュートアクセント付きU小文字)ils la voient. Les vrais cultivateurs soignent leurs mains et se servent de la b※(サーカムフレックスアクセント付きE小文字)che et de la houe. Eux seuls connaissent la vraie terreur de la terre.
 Il en est de la soci※(アキュートアクセント付きE小文字)t※(アキュートアクセント付きE小文字) humaine comme du sol. En Orient comme en Occident, le monde entier est dans une grande ※(アキュートアクセント付きE小文字)poque de transition. Autour de moi, je vois de nombreuses personnes qui sont pr※(サーカムフレックスアクセント付きE小文字)tes ※(グレーブアクセント付きA小文字)toucher la terre d※(グレーブアクセント付きE小文字)s q※(アキュートアクセント付きU小文字)elles la voient. Comme ces cultivateurs qui travaillent malgr※(アキュートアクセント付きE小文字) le vent et la pluie, nous ne devons pas oublier d'utiliser la houe et la b※(サーカムフレックスアクセント付きE小文字)che. Je crois que les Hindours et les Hell※(グレーブアクセント付きE小文字)nes anciens savaient comment se servir de ces instrurments, et q※(アキュートアクセント付きU小文字)ils avaient le c※(リガチャOE小文字)ur※(グレーブアクセント付きA小文字) la t※(サーカムフレックスアクセント付きA小文字)che.



 
 
 ()()
 讀『黎明前』序章賦呈
想起曾縢馬籠驛
萬山雲湧卷還舒
大溪幽壑藍青淀
仄屋斜簷深奧岨
盛列諸侯騎前蹕
亂槍敗將釜中魚
[#「月+童」、U+81A7、291-3]朧日出襯今代
君作一篇足
 

 宿宿宿()()()辿辿

 
宿

 
 宿宿使宿簿宿宿

 

  

 ()()宿使※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)宿宿宿宿宿宿

 宿()()宿宿

 宿宿
    覺
一 御水帳        四册
一 御割附       十三通
一 御年貢皆濟目録   十三通
一 御林御繪圖面      一
一 御年貢取立帳    十三册
一 宗門人別帳      三册
一 五人組帳       一册
一 村差出明細帳     一册
一 御用留控       一册
一 諸運上取立帳     五册
一 鐵砲水車運上取立帳  三册
一 御林下草永小前割賦帳 一册
一 口訴状寫       一通
一 博奕御觸流町内受書  五通
一 田畑裏印控      一册
一 小前より取置き候書付 二袋
一 御役所御※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)状留書   五册
 調宿宿

 宿

 宿宿

 稿稿

 ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

 使稿宿宿

 使使使()()使

 稿祿

()

 

 稿

めづらしき友とあひ見て語らへばくやしくも我は耳しひてあり
耳しひてあれども何かくやむべきあひ見るだにも難しと思へば
有明
 西便()便

 西※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)西
 ()()西()()()椿

 

 ()稿()()


便

使()()※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)





 ()()()

 調調()()

 ()()

 姿

 ※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)()姿

 便姿

 

酒飮めばいとゞ寢られぬ夜の雪
 



 




 ()
 ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)
 ※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)


 ()※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)



 
 
 



 
 姿便
 西※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)西※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)()
 ()()




 
 宿祿
 ()()()
 
 ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)



 牧野信一君の『文學的自敍傳』はおもに少年時代を敍したもので、これから大人の世界に入つて見たことを書きはじめようといふところで筆が止めてある。止めてあるといふよりは、むしろそこで筆が進まなくなつて、自然に止まつてしまつたといふ趣のものだ。文學的な自敍傳としてはそんな端緒に過ぎないやうなものであるが、自然と文學へ赴くより他に結局道もなかつたかの感を抱かせ、一作家の生ひ立を思はせるには十分なほどに出來るだけの壓縮もその筆に加へてあつて、少年時代のどの一片をとりあげても、いづれも意味深く語つてある。その中に、君は小學でも中學でも凡ゆる學科のうちで綴り方と作文が何より不得手で、幾度も零點を取り、旅先などから母親に宛てる手紙も書きにくかつたといふ一節がある。君はそれに續けて次のやうに書いてゐる。
()()調()()()()

 宿()()()()
使
 ()
 姿()()
 

好き距離
(岡崎義惠君が新著『日本文藝學』の出版をよろこびて)


 



 ()貿西()()

 ()()()()()()()姿()()使

 ()西西









   196742310
   197853830
5-86
Nana ohbe

2008514
2012426

http://www.aozora.gr.jp/







 W3C  XHTML1.1 



JIS X 0213



JIS X 0213-


小書き片仮名ヰ    271-11
「月+童」、U+81A7    291-3


●図書カード