寺田先生と僕

海野十三(佐野昌一)




 
 
 
 
 
 調調
西西西西西西
西

稿
 といふわけで、ここまでは僕も相當得意であつたところ、それから四五頁後のところに先生は
以上ハ災後二三ヶ月以内ニ著者ノ手許ニ集ツタ材料ノ大要デアル。此等ノ中ニハ可也信用ノ置カレルノモアリ、又可也怪シイモノモアルガ、此點ニ就テハ一切私見ヲ加ヘルコトナシニ、其儘ヲ採録シタ。談話者又報告者ノ言葉モナルベク保存シ、話ノ順序、ノ混雜シタノヤ不得要領ナノモ故意ニ其儘ニシテ置イタ、サウシタ方ガ史料トシテノ價値ヲ損ジナイト思フカラデアル。
 と書かれてあつて、僕の得意の鼻はぽきんと折れてしまつた。
 先生はなほこれらの史料を過信することを戒められ、
兎モ角モ人間ノ眼デ見タ證據程當テニナラナイモノハナイトイフ、心理學上ノ事實ハ、吾々ノ忘レテナラナイ誡デアル。
 
 
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   2000125171

   19371212
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200517

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