底深い群ぐん青じや色ういろの、表ほのかに燻いぶりて弓形に張り渡したる眞晝の空、其處には力の滿ち極まつた靜しじ寂まの光かが輝やきがあり、悲かな哀しみがある。
朝燒雲、空のはたてに低く細くたなびきて、かすけき色に染まりたる、野に出でて見よ、滴る露の中に瓜の花と蜂の群とが無數に喜び躍つてゐる。
向ひま日は葵りの花、磨き立てた銅かな盥だらひの輝きを持つて、によつきりと光と熱との中に咲いてゐる。歩み移る太陽の方にかすかに面を傾くるといふにもこの花のあはれさが感ぜられる。づばぬけて大きいだけになほ。
夜。空氣も濡れ、燈火も濡れ輝いてゐる。ほのかに汗ばむアイスクリームの湯氣。
晝寢。したゝかに吸ひ太りたる蚊のよちよちとまひゆける下、疊よ、氷の如く冷かなれ。