少年達のため挿絵をかきながら、物語の方も自分でかいて見ようと思おも立いたって、その頃ころまだ私の手ても許とから小学校へ通っていた子供をめやすにかいたのが巻頭の数篇です。中学へ通うようになった時、﹁誰だれがいつどこで何をした?﹂をかいて見せました。これはフィリップがお手本になったのですが、﹁都の眼め﹂の留とめ吉きちにしても﹁たどんの與よ太たさん﹂の與太郎にしても、みんな私自身の少年の姿です。﹁日ひま輪わり草そう﹂の熊くまさんも私の姿に違いありません。
あとの方のお話は、雑誌の挿絵にそえたもので、少年の頃見たり聞いたりした話を思おも出いだしてかいたのです。
姉妹篇﹁凧たこ﹂に対して﹁春﹂という一字を撰えらんだのです。﹁春﹂という字は音が朗ほがらかで字画が好もしいため、本の名にしたわけです。
︵千九百二十六年十月︶