白河の關

大町桂月





 
 宿
 
 ※(二の字点、1-2-22)滿
 宿※(二の字点、1-2-22)
 
都をば霞と共にたちしかど
  秋風ぞ吹く白河の關

みちの國に再び下りて、後のたび、武隈の松も侍らざりければ、よみ侍りける。
との詞書ありて、
武隈の松はこのたび跡もなし
  千歳をへてや我は來つらむ
と詠める能因法師の歌もあり。能因は實際に白河の關を通りたるに相違なし。所謂『居ながらにして名所を知れる』歌人の比に非ず。その白河の關の歌、世に有名なると共に、その室内旅行の謬傳も世に知られ居るを以て、茲に聊か能因の爲に、其の妄を辯ずる也。

(大正七年)






底本:「桂月全集 第二卷 紀行一」興文社内桂月全集刊行會
   1922(大正11)年7月9日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:H.YAM
校正:雪森
2018年5月27日作成
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