風は草木にささやいた

土田杏村




 山村君
 君と僕とは如何なる不思議の機縁あつてか斯くも深いまじはりに在り、君のその新しい詩集の一隅にいまは僕の言葉がつらなることとなつてゐる。おそらく君は僕を一評論家と遇して何事をか述べさせようとするのではなからう。僕もまた文壇に立つものの一人として君の詩集にむかはうとは思はない。君の生活は僕にとつてはあまりに嚴肅であり、君の詩は僕にとつてはあまりに尊貴であるが故に、僕は幾分でもかの評論家の態度に於て君に對することを恥ぢてゐる。而もかの唐土の一詩人がつねにその詩を街上の老嫗にもたらした雅量をもつて君が僕の言葉にきかれるならばそれは僕の幸福といふものだ。

 君の詩について僕がなにごとかを言ふのはこれで三度目だと思ふ。はじめは「第三帝國」で「新文藝の理想を提唱す」の一ぺんを書き、僕の所謂神祕的象徴主義の哲理を提唱した時であつて其の中で僕はまづ僕の藝術理想を斯く主張した。

1 まづ人道主義者の主張に反して文藝からは一切の道徳的倫理的の標準をとり去らなければならない。
2 個人的相對的經驗的の感覺と感情とをはなれて超個人的絶對的形而上的の感覺と感情、言はば宇宙或は自然がもつ感覺感情ともいふべきものを表現しなければならない。これに對して前者の感覺と感情とをのみ表現してその奧に後者の感覺と感情とを暗示し得ない藝術をセンチメンタリズムの藝術と呼ぶ。

3 117--18()()

 


※(二の字点、1-2-22)

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 ※(「木+眉」、第3水準1-85-86)()()

 
 滿殿西
 

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 滿
 119--22

 
 
 
京都にて

土田杏村






 54 麿
   196641819

119--22※(「土へん+巳」、第3水準1-15-36)


2009425

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JIS X 0213

調

JIS X 0213-


「走にょう+兪」    117-下-18
「土へん+已」    119-中-22、119-中-22