S先生に

伊藤野枝




 
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――私はどうも感情的でいけない、早い話が手紙を頂く前と後ではあなたに対する感情が違ふ、く感情の移りやすい私は時々過度に激昂したり、また俄かに気の毒の感の為めにくだらない妥協をする幼稚な癖があるのです。――
またうもお書きになりました。
――人を見て稍もすれば大掴みに値ぶみをしたり早呑込はやのみこみの侮蔑をしたりすることが多い、これは人を尊重せぬ悪癖と深く悔ひます
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――けれど感情的であることは免れません。面白いが人生々活の標準とはなれますまい、と思ひます。之を貫いては困ることが随分あることを反省して頂きたいと思ひます。幡随院がお尋ね人の平井権八をかくまふのも此の感です、芝居としては面白いが道徳の標準にはならぬ、従つて悪い場合も生じます。即ち道理理屈にも社会の秩序にも触れることがあります。――
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底本:「定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代」學藝書林
   2000(平成12)年5月31日初版発行
底本の親本:「青鞜 第四巻第六号」
   1914(大正3)年6月号
初出:「青鞜 第四巻第六号」
   1914(大正3)年6月号
※ルビは新仮名とする底本の扱いにそって、ルビの拗音、促音は小書きしました。
入力:酒井裕二
校正:Butami
2020年9月28日作成
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