編輯室より(一九一五年一月号)

伊藤野枝




□編輯室も随分賑やかでしたけれ共とう/\私一人にされてしまひました。ひとりでコツコツ校正をやるつまらなさはあの文祥堂の二階の時分を思ひ出させます。
□大正三年はもう暮れましたがかなり青鞜にとつてはいろ/\な変化のあつた年でした。来年はいゝ年であつて欲しいと思ひます。
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□今年のお正月は屹度きっとさびしいお正月でせう。平塚さんは七草頃でなければ帰らないと云ふことですし、哥津ちやんも平塚で年を迎へるさうですし集まることも出来ません。
□平塚さんは十二月号の安田皐月さつきさんの『生きることゝ貞操と』を読んで考へついたことがあるし生田花世いくたはなよさんについて何時も考へてゐたこともあるから、二月号に『貞操に就いて』お書き下さる筈です。尚花世さんはあの返事を「私と私の良人おっとの為めに真剣に」反響新年号に書いたと云つてまゐりました。
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□安田皐月様は誠に止むを得ない理由での店をお止になりました。始終第一義的に情実にまげられないやうに活きやうと努力してお出になるかたとしてはそれも誠に余儀ないことだと思ひます。今は小石川第六天町だいろくてんちょう横田方にお住居です。
齋賀さいが琴子さんは矢張り宮田先生のお宅で勉強してお出になります。二月号に短歌をどつさり頂けることになつてゐます。
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□大正三年の編輯ももう終りですから古く集まつたかさばつた原稿を仕末しやうと思ひましてひろげて見まして其中から拾ひ出したのが二三編御座います。発表する時期が外れてゐて妙にお思ひになるでせうけれどそれはお許し下さいまし。
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□来年から補助団のために、パンフレツトを時々出そうと思つてゐます。出来る丈けいゝものを選んでやるつもりです。

[『青鞜』第五巻第一号、一九一五年一月号]






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