大正女流俳句の近代的特色

杉田久女




     前期雑詠時代

 大正初期のホトトギス雑詠に於ける婦人俳句は、女らしい情緒の句が大部分であったが、大正七年頃より俄然、純客観写生にめざめ来り、幾多の女流を輩出して近代的特色ある写生句をうむに到った。実に大正初期雑詠時代は元禄以来の婦人俳句が伝統から一歩、写生へ突出した転換期である。

     一 近代生活思想をよめる句

 (1)[#「(1)」は縦中横] 近代生活をよめる句
 凡そ現代人ほど生活を愛し、生活に興味をもつ者は無い。昔の俳句にも接木とか麦蒔とか人事句は沢山あるが、夫等それらは人間を配合した季題の面白味を主としたもので、之に反し近代的な日常生活を中心におき、其真を把握する事に努力して、季感は副の感がある。


   
   


 宿


   
   


 調


   
   
   


 
 22 


   
   
   


 
 


   
   


 西


   
   





   





   


 


   


 姿姿


   


麿


   



 33 
 


   


 


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 ()


   


  
 


   
   
   
   ※(「王+爰」、第3水準1-88-18)



 44 
 


   


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 使


   


 


   


 


   
   




      

 11 
 


麿   
   
   


 麿()
 22 


宿   
   
   


 ()姿


便宿   
   


 


   
湿   


 33 
 


   
   
   
   
   
   


 姿


   
   
   
   


 


   
   
   


 
 44 
 


   
   
   


 


   
   


 


   
   
   


 
 55 
 
 


   
   
   


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 66 姿
 姿


   
   
   
   
   


 姿姿


   
   


 77 
 


   


 


   
   
   


 


   
   
   
   
   


 


   
椿   
   


 


   
   


 88 
 


   
   
   
   





   





   


 99 


   
   
   
   


 


   
   
   


 
 1010 


   
   
   


 


   


 


   


 
 1111 
 


   
   
   


 


   
   
   
   
   
   
   
   
   


 
 1212 
 


   
   
   
尿   
   
   
   
   


      

 宿


   
   
   
調   


 


   
   


 


   
   


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等、一生を父母の慈愛に生き、すなおな落付をもて、女らしいしとやかな佳句をのこしている。
 より江氏は後期雑詠時代に一人舞台で、活躍していられる故、のちにゆずり、ただ

枯菊に尚愛憎や紅と黄と   より江
秋風にやりし子猫のたよりきく   同
の二句に氏のデリケートな性格、あくどい悩や執着のないさらりとした明るさを見る。


   
   


 


   
   


 


   
   


 


   
   


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(昭和二年十月稿)

(「ホトトギス」昭和三年二月)







   2003156101
 
   19898

   192832


20041124

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JIS X 0213

調