柳原※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子(白蓮)

長谷川時雨






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 ※(「火+華」、第3水準1-87-62)

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只今お手紙ありがたく拝見いたしました。実はわたくし、二、三日前からすこし気分がすぐれませんのでとこについております。急に脈がむやみと多くなって、頭がいやあな気持ちになる、なんとも名のつけられない病気が時たま起りますので。でも今日は大分だいぶよろしゅう御座いますから、早速御返事申上げて置こうと、床の中での乱筆よろしく御判読願い上げます。(中略)仰せの通り世間のとかくのうわさの中にはずい分、いやなと思う事もないでも御座いませんけど、これも致方いたしかたがないなり行きだと、今までもあまり気にかけたことも御座いません。
 私信の一部を公にしては悪いが、わたしの筆に幾万言をついやして現わそうとするよりも、この書簡の断片の方がどれだけ雄弁に語っているか知れない。はじめからそういうふうに冷淡に、うわさを噂として聞流す女性はすくない。
 いつぞや九条武子くじょうたけこさんと座談のおり、旅行のことからの話ついでに、
別府べっぷには※(「火+華」、第3水準1-87-62)あきさまの御別荘がおありですから、それはよろしう御座いますの。随分前から御一緒に行くお約束になっていて、やっと参りましたのよ。伊藤さんがお迎えながらいらっしゃるはずでしたところ、風邪かぜをおひきになったって電報が来たものですから、※(「火+華」、第3水準1-87-62)さまは急いでお帰りになりましたの。だから残念でしたわ。」
 語る人のあでやかな笑顔えがお。それよりも前に、わたしはかなり重く信用してよい人から、こういうふうにも聞いていた。
白蓮さんは伝右衛門氏のことを、此方このかたが、此方がといわれるので、何となく御主人へ対して気の毒な気がして返事がしにくかった。それに、あの人の歌は、どこまでが芸術で、どこまでが生活なのか――あの生活がいやなのだとはどうしても思われない。
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十月廿一日
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上京前に訪問したら、涙ぐんで、めいりこんでいて「伊藤が愛がないのでさびしくてしかたがない。高いがけの上からでも飛降とびおりて死んでしまいたい」といっていたが、感情がこうじてこんな事になったのか、ある意味で白蓮さんはうたを実行されたのだ。
と語っている。
 また、九条武子さんは、まあと大きな吐息をついて、
只今が初耳でございます、随分思いきった事をなさいましたねえ。あの方とは、昨年お目にかかりましたのちは、お互にちょいちょいゆきはしておりますが、唯うたのお友達というだけ、それほど深い話もありません。先日も九州でおめにかかりましたが、それほど深いお悩みのあることは、素振そぶりにもお見せになりませんでした。御主人は太っ腹な、それは気持ちのいい方です。まさか短気なことは遊ばしはしませんでしょうね。お年もとり、御思慮も深い方ですが、どうなる事でしょう。
と、さすがに友達の身を案じて、じっとしてはいられぬというおももちだったとある。
 博多中券はかたなかけんの芸妓ふな子は二十歳で、白蓮さんに受出されて、おていさんという本名になって、伊藤家にいる。そのひとのいうのには、
※(「火+華」、第3水準1-87-62)子さんは、お父さまにつかえているつもりだといって、平生へいぜいからさびしそうにしていたが、(私が)めかけになったのもうけだされたのも、奥さまからなので、いやだけれど納得したのに――
といっている。
 廿三日附朝刊には、論説も「※(「火+華」、第3水準1-87-62)子事件について」とあって、その概略をつまんでみると、
※(「火+華」、第3水準1-87-62)子の事件はあくまで慨嘆すべきものか、あるいはかえって謳歌おうかすべきものか、吾人ごじんはこれを報道した責任として、ここにいささか批評を試みたい。(略)
彼女の精神生活は甚だ同情すべきものだが、技巧と粉飾が臭気の高い歌で訴えるように事実苦しみぬいていたかどうか。(略)この行動が、はたして自動的か他動的か、これもまた批判してその価値をさだめる有力な材料でなくてはならない――
――※(「火+華」、第3水準1-87-62)子事件の真相と※(「火+華」、第3水準1-87-62)子の思想とによってわかるるものと思う。更に細論の機会をまたんとす。
といっている。
 廿五日ごろになると、帝大法科の教授連が批判回避の申合せをし、白蓮問題は、しばらく何もいうまいということになったが、牧野、穂積ほづみ両博士が興味をもっているとあり、投書の「鉄箒てつそう」欄が段々やかましくなっている。

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 ※(「火+華」、第3水準1-87-62)()()()()()()()()()()耀()()
 
筑紫のころ
われはここに神はいづこにましますや星のまたたきさびしき夜なり
和田津海わだつみの沖に火もゆる火の国にわれありそや思はれ人は
われなくばわが世もあらじ人もあらじまして身をやく思ひもあらじ
その

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底本:「新編 近代美人伝(下)」岩波文庫、岩波書店
   1985(昭和60)年12月16日第1刷発行
   1993(平成5)年8月18日第4刷発行
底本の親本:「近代美人伝」サイレン社
   1936(昭和11)年2月
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2007年8月13日作成
2014年7月27日修正
青空文庫作成ファイル:
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